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書評(平成19年01月25日)

『第5の力 〜物理探求の最前線〜』
(大槻義彦著・NHKブックス)

  宇宙物理で話題になっているダーク・エネルギーとか宇宙斥力などと呼ばれる力については、私自身かなり興味がある。「第5の力」と言うタイトルをみて、そのあたりのことが書かれているのかと思って、読んでみた。しかし読んでみたら、この本は昭和63年という今から20年近く前に書かれた本であり、まだ第5の力があるようだ、といわれだした頃の本であり、少し主旨が違っていた。

 今明確にわかっているのは、力には大きく分けて4つの力が少なくともある。重力、弱い相互作用力、電磁気力、強い相互作用力である。これらの力をの理論を統一しようという試みが行われ、重力以外のものを統一したある程度の形になった理論は出てきたが、重力までとなると、かなり性質が異なるのでいまだ統一理論が出ていないのが現状である。そうした中で、さらに第5の力(さらには第6の力)なるものがあるという学説が出てきた。

 この本では1987年に朝日新聞で第5の力が騒がれ、その後も色々と第5の力、第6の力が唱えられた状況を受けて書かれた本のようだ。

 (うる覚えで書くと確か)ダーク・エネルギーと呼ばれるものは、真空に存在するエネルギーで、例えば宇宙が膨張し真空状態が2倍になっても、元の体積あたりのダークエネルギーは1/2とはならずに1のままで、つまり真空状態が2倍に膨張すれば、ダークエネルギーも2倍になるというちょっと不思議な力である。これは常識的に真空は何もない状態だと考えると、理解できない現象である。このダーク・エネルギーが反重力のように働き、宇宙が収束せずに膨張する傾向を示している原因ではないかと言われている力である。(ただしこれもまだ仮説かもしれないが)

 この本でいう第5の力とは、(書かれた当時)どうやらまだそのような性質までわかっていなかったようだ。この本では、そういった記事を紹介した後に、力とは何かということを説明し。その後で、重力、第2の力(電気力:電磁気力)、弱い相互作用力・強い相互作用力を述べて、その上で4つの力の統一理論について説明している。

 そしてそれらを踏まえて、この本が書かれた当時の第5の力について、その力の(性質などの)可能性について、色々行われている研究を紹介しながら、説明している。

 この本は、物理学の一般向けの本とはいえ、かなり数式が多い。しかし私が読んだこの関係の本ではかなり分かりやすかったと思う。高校程度の物理の基礎があれば充分に読める本である。知らない数式を見ても、(馬鹿の壁ではないが)嫌がらずに、その意味を理解しようとする人には、たとえ物理の知識がなくても読めると思います。

 私としては、中間子(パイ中間子など)と重粒子(陽子、中性子など)が、ゲージ粒子(光子、W粒子、Zボソン、グルーオン、グラビトン(重力子)など)、クオーク、レプトン(ニュートリノ、電子、ミュウー粒子)から構成されている説明や、素粒子の2つの種類、フェルミ素粒子(フェルミオン)とボーズ素粒子(ボソン)の関係の説明など、非常にわかりやすかった。また4つの力の強さを、結合定数を用いて、1m離れた物体間の力で比較した部分など、今まで読んだ本の中で一番わかりやすかったように思う。
 できればまた読んで復習してみたい本である。

 少し注文をつければ、専門用語など語句の索引があれば、もっと分かりやすくて便利な本になったように思う。最初に述べたように、少し古い内容の本ではあるが、物理学の手引き書・参考書として充分今でも役に立つ本である。物理の参考書の問題を解くほど難しくないから、理系
の高校生などに、できれば読んでもらいたい本である。

(参考)
インターネットのAmazon.co.jp(「ブック」データーベース)に紹介されている文章を転記
「自然界探究を主目的とする物理学界に久々に訪れた大きな話題として「第5の力」発見のニュースがある。本書は、日常的なものであるのになかなか認識されにくい「力」の話を、第1の力から、いま話題の第5の力まで、物理学の全体構造や発展の歴史から解説しようとする。 」

(この本は、中能登町鹿西図書館から借りてきた本です)

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