このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
『脳 小宇宙への旅』 (信濃毎日新聞社編・紀伊国屋書店) |
信濃毎日新聞の科学担当の記者たちが、脳について、全国の多数の脳研究者から取材してまとめた内容の本です。1991年に紀伊国屋書店から発行された本であるが、私が読んだ限りでは今もそんなに古い感じはしない本である。 尤も専門家からいわせると、最近の脳科学の進歩は目覚しいというから、ちょっと内容的に古いものもあるかもしれないが・・・ 信濃毎日新聞の記者が書いた本というと、以前「黒部の太陽」を読んだ。この新聞社は明治6年創刊で地方新聞の中でも非常に古い歴史を持つ老舗である。いい記者が多いのだろう。 本の裏表紙の言葉及び帯紙の宣伝文を転記しておく。 ◆本の裏表紙の言葉 「私たちの精神の働きと行動をつかさどる脳。神秘のベールにつつまれていた脳。その脳の謎解きが、いま、科学者によって急ピッチで進められている。 この本は、日本各地の脳研究者多数を一人の科学記者が直接取材してまとめた、脳科学最前線の記録である。脳研究者の最新の成果を紹介するのみならず、今後の脳研究の見通しと考え方を聞き出すことに成功している。 さらに、この旅を通して人間とは何かを問い、私たちの身近な生活との関わりを探って行く。示唆に富む<脳探検の旅>であり、脳科学の現在をやさしく解説した入門書といえよう。」 ◆帯紙の言葉 「たった千数百グラムの司令塔が、私達の精神や行動のすべてを支配している。脳は人にとって内なる宇宙であり。神秘のブラックボックスだ。ここ数年の脳科学の進歩は目覚しく、ベールはひとつひとつはがされつつある。脳の正体を追うことは、自然科学と人文科学・哲学の接点を探ることであり、人間とは何かを問うことでもある。脳の宇宙の中に、人間が透けて見えないか。脳の探検の旅を始める。」(本書より) 上の2つの文章の引用だけでかなり本のある程度の内容がおわかりいただけると思う。付け加えるとすれば、この本は脳科学者が書いた本ではなく、新聞記者が取材して書いた文なので、かなり読みやすくなっている。どうしても専門家が書くと、難しい用語を(あまり用語の解説も加えずに)用いがちになるが、この本はいわば記者が理解した上での内容で書かれているので、非常にすんなりと読める。 また前書きにも書いてあるように「脳の入門書、テキストを脳の専門家が書くと、まず脳とは、神経細胞とは、シナプスとは、といった脳を理解するための基本述語や基本構造から始めるのが普通である。そうなると読んでいて面白くなく、興味が半減する。本書は「気分を変える物質」の話をまずして、次に脳変化の根本である発達や老化や進化の話題に移り、脳と心の関係、脳の病気へと進めている。分裂病、うつ病、パーキンソン病、アルツハイマー病など、脳の病気の原因究明が進んでおり、大いに興味のあるところである。本書は、内容の取り上げ方で、脳研究の成果を分かりやすく語ることに成功している。」(京都大学霊長類研究所長・久保田競) 私も全くの同感である。 上の「気分を変える物質」とは、コーヒー、たばこ、酒(アルコール)、覚せい剤、シンナー、咳止め薬、幻覚薬、体内麻薬である。この各物質による脳への影響なども知っておくと、色々な中毒に陥らないために役に立つと思う。 多くの人にお薦めしたい一冊です。 (この本は中能登町鹿西図書館から借りてきた本です) |
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