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『狸の恋 お鳥見女房』 (諸田玲子著・新潮社) |
この「狐狸の恋」は、このシリーズのもう第4弾にあたるそうだ。このシリーズの他の作品は、何回か既にこのコーナーで紹介しているので、今回は登場人物のことなどは、もうあまり詳しくは述べない。 前巻までに、主人公の珠代の次女の君江も、久之助の友人で相思相愛の仲だった菅沼隼人のもとに嫁ぎ、残るは長男の久太郎と次男の久之助。長男は以前、老中水野忠邦の鷹匠和知家の娘・鷹姫と懇談の話が持ち上がるが、久太郎は断る、しかし鷹姫は諦めない。久太郎も、断ってから気になりだし、水野が失墜するとさらに彼女のことが心配になりなおさら気になる。 また久之助は、祖父が甲府で密命を受けて隠密活動していたとき、一緒に過ごした母子のうち、娘に方にあたる綾という女と恋仲になる。実は、祖父の久右衛門は、綾の父親を上からの密命で殺したのであり、その妻を思いやるあまり面倒をみて一緒に暮らすことになったのだった。祖父や父(伴之助は沼津で以前隠密活動)はおそらく水野忠邦の命令で隠密で働いていたので、綾にとっては敵にあたる。 このような状況の中、第1話「この母にして」、第2話「悪たれ矢之吉」、第3話「狐狸の恋」、第4話「日盛りの道」、第5話「今ひとたび」、第6話「別の顔」、第7話「末黒(すぐろ)の薄(すすき)」の話が展開する。 久太郎と久之助はそれぞれ、覚悟を決めてそれぞれ行動に出ようとするが、もし久太郎と鷹姫が、久之助と綾が結婚するとなると、兄弟同士対立することになるのは明白であった。 巻末の第8話「菖蒲刀」では、ある日とうとう二人が取っ組み合いの喧嘩に。父親の伴之助は、そんな二人を諭し、喧嘩している暇があったら、今の状況を打開するいい策を考えろと言う。どうやって?と問う息子に、母(珠代)に相談せよ、と言う。 しかし珠代は、自分とてなかなか妙案が浮かばずに、夫の買いかぶりだと思う。とにかくいつものように鬼子母神に一心不乱にお願いするが、そんな時、もう梅雨近くとなって、シャボン玉売りの藤助が現れる。・・・・ 今回も、どんな状況でも、家族に心配をかけまいと気遣いをしつつ、暖かい情と機転で乗り切る珠代の生き方に惚れ惚れとしたものを感じました。常に前向きに考え、背反・相克するような容易ならぬ難問も、最後には目出度し目出度しで解決。帯紙の言葉通り「家族の絆に心打たれ」る佳品となっています。お薦めの一冊です。 (この本は七尾市立中央図書館(ミナクル3F)から借りてきた本です) |
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