このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

書評(平成19年06月16日)

『伝教大師 最澄のこころと生涯』
(渡邊守順著・雄山閣)

  先日も、最澄に関する本(『(聖者物語6)比叡のあけぼの 最澄』(木内尭央著・日本教文社))を読んだ。しかし中学生向きくらいの本だったので、もっと詳しい本はないかと思っていたところ、この本が見つかったので、また読んでみた。私は、あまり仏教に対しては抵抗感もないので、結構こういう本を読む。今までにもここで何冊か紹介したはずだ。
 
 平安仏教の2大巨匠といえば、空海と最澄だが、その割には、伝記などでは空海ばかり採り上げられて、ほとんど最澄の生涯は注目を集めることがない。私自身、今まで空海に関するする本は色々読んだが、最澄の生涯に関しては、最近までほとんど知らなかった。伝教大師で、天台宗の日本における開祖、比叡山延暦寺の開山・・・・というくらいの知識だった。あとは彼が開山した比叡山で臨済宗の栄西、曹洞宗の道元、日蓮、浄土宗の法然、真宗の親鸞など巣立っていったということだろうか。

 前回読んだ本と比べると、何の説明もない仏教用語など出てきたりして、ちょっとわかりにくい箇所もあった。しかし広辞苑などの辞書で調べれば、それらの仏教用語も大体載っていたので、難解で手ごわいという感じはうけなかった。漢詩や経典の漢文なども、著者が約した意訳や訳文が載っており、どちらかというと宗教本にしてはかなりわかりやすい気がした。

 宗論は得てして僧侶以外には、読んでいて難しいものだが、この本なら、徳一との論点などもかなりわかったような気がする。理解できただけに(本当は半解程度かな?)、読んでいて、当時自分が生きていたなら、現代に生きる自分には、とても性善説に立てず、最澄ではなく、徳一の側に立ったかもしれないなあ、などとも思ったりした。・・・・・

 ああ訳のわからないことを書いてしまった。説明せずには私が何を言っているかわからないだろう。あいにく私は上手に説明する技量に欠け、簡潔には上手く書けない。
 最澄が、何を発願(志望)し、何を考え、どう行動したかを知りたい方には、絶好のガイドブックではなかろうか。ただしあいにくこの本も前回の本と同様古い。本屋を探してもおそらくないだろう。興味はが沸いた方は、古本屋か図書館で探してもらいたい。

 著者も書いているように、できれば若者に読んでもらいたい本だ。青雲の志を抱いて、挫折しそうになりながらも、初心や信念を貫き通して生きる生き方が、生きているうちにたとえ報われなくても、いかに一級の人間を生むか、いかに崇高な生き方ができるかを教えてくれる本である。
 といっても私もそのように生きているわけではない。とても足元に及ばない。でもこのような人に敬意を抱き、できるかぎり近づきたいと考え生きることは、人間を向上させてくれると思う。
 お奨めの一冊です。

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