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『ちんぷんかん』(畠中恵著・新潮社) |
この本は、しゃばけシリーズの第6弾である。シリーズの既刊は全て読んでいる。 今回は、巻頭の作品「鬼と子鬼」でいきなり、主人公の一太郎の家の周辺が、大火事に見舞われる。勿論、廻船問屋兼薬種問屋の長崎屋も焼けてしまうのだが、その避難の際、一太郎は火事の煙を吸って倒れてしまう。そして気が付くと三途の河原にいた。どういう訳か、妖(あやかし)である鳴家(やなり)や、印籠が百年の時を経て付喪神(つくもしん)となった妖のお獅子まで連れてきてしまう。一太郎は、三途の河原に来るのはもうこれで2度目であり、何度も何度も死にそうな大病をしているので、三途の河原を渡ってもいいが、妖は現世へ還してやりたいと考える。 同じく三途の河原にやって来た冬吉という少年とともに、一太郎は、河原の横に広がるを闇を突きぬけ、脱出口を見つけて逃げるが、鬼供が追ってくる。伊邪那岐、伊邪那美の故事を思い出し、持っている物を後ろに投げつけ何とか虎口を脱しようとする一太郎、最後に思いもかけぬ物が彼らを救う。・・・・・ちょっと詳しく書きすぎたかな? 第2話、本のタイトルと同じ「ちんぷんかん」は、前にも何度か出てきた妖退治で有名な寛朝さんのいる広徳寺が舞台。その寛朝さんの弟子である秋秀さんが、修行の一環として、はじめてお客の相談に乗り、とんでもない目に遭うという話。 第3話の「男ぶり」は、一太郎の母おたえの恋物語。おたえは、一太郎の祖父伊三郎が、齢三千年の皮衣(かわころも)という大妖に惚れて恋におち、出来た一人娘であった。つまり妖と人間の間に生まれた子で、一太郎より妖に血は濃い。そのおたえは、一太郎の父親となる藤兵衛(当時は長崎屋の手代)と一緒になる前、別の店の次男坊・辰二郎という男も一度好きになったことがあった。母親おたえが現在の父・藤兵衛と結ばれるまでの恋物語を、風邪で伏せる一太郎に語って聞かせる一話である。 第4話は「今昔」。江戸の大火の後、時々巷で妖騒ぎがあった。長崎屋でも、兄・松の助の縁談先が、米屋の大店・玉乃屋の次女・お咲と決まり、なりかけた頃、陰陽師が操るとみられる式神が一太郎の寝ている離れに現れて、鳴家や一太郎の口を塞いだ。式神の後を追ったりして、どうやら縁談先の玉乃屋に雇われた陰陽師が操っているらしいとわかる。さらに奇妙な事には、そこの長女で体が弱い・おくらが、その妖怪に襲われたらしい。陰陽師の狙いは、いったい狙いは?・・・ 第5話は「はるがいくよ」。ある日、一太郎が妖たちと離れの部屋で、兄の縁談のお祝いの贈り物の話で盛り上がっていたところ、見かけぬ籠が部屋の隅に。気になって籠の布をめくると、中には何と女の赤ちゃんが。しかしこの赤ちゃん、不思議hな事に短い時間でどんどん成長する。どうやら妖のようだ。そして赤子の素性を探るうちに、桜の花びらの妖だとわかる。桜がほころぶ頃に現れ、散る頃に消えてしまうらしい。一太郎は彼女を小紅と名付けるが、そんな儚(はかな)い小紅を愛しみ、何とか長く生きさせることはできないかと、手を尽くすが・・・・・ もののあわれを描いた作品だが、しゃばけシリーズのキャラクターたちの明るい性格が、この話を哀歓が漂い過ぎぬよう、さらっとサポートし、とっても素敵な一品に仕上がった、巻末にふさわしい好品となっています。 とにかく今回収められた5つのどの話も、とっても面白いです。一度ハマったら、抜け出られそうにない妖ファンタジー。あなたもいかがですか? |
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