このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

書評(平成19年08月22日)

『光で語る現代物理学—高速Cの謎を追う—』
(小山慶太著・講談社ブルーバックス)

  もう18年ほど前の本になる。買って読まないまま本の棚の隅に隠れて忘れられていた本である。私は別に科学者ではないし、20年前と最新の科学の成果の違いに拘るほど勉強もしていない。古いことなど気にせずに読んでみた。
 ・・・・ものすごく分かり易い、いい本であった。

 ニュートンの処女論文は、力学ではなく光学の論文だったらしい。あのプリズムを使ったスペクトルの方が先だったようだ。
 光速についてはガリレオが光速を測ろうとして失敗。その後、レーマーが木星の衛星イオの観測からはじき出した約22万㎞と計測、さらにフィゾーが鏡と高速回転する歯車を用いた道具で約31万㎞と現在の光速の数値にかなり近い数字を出す。

 光の正体に関しても、ニュートンの考えに基づく粒子説が有力になったり、波動説が出てきたり論争となった。このあたりに関しては3つ前の本(「物理学はいかに創られたか」(アインシュタイン&インフェルト/岩波新書))の紹介記事でも述べた。一旦は光の波動説が決定的勝利したかのように思われた時期もあった。特にその論争とは別の動きではじまった電磁気学の方の研究から、光は電磁波であることがわかると、光は波であることが間違いないとされる。

 その後にアインシュタインが登場するわけだ。彼は光速を世の中の色々なものの速度とは別な特別なものと考えていた。そしてその特異性より、光速度不変の原理をとなえる、つまり「光速度は、光源や観測者の運動状態によらず常に一定である。」とし光速を超える速さで動くものはないないとした。それを軸に相対性理論を築き上げる。そしてアインシュタインは、光は粒子と波の二重の性格を持つ」とした。

 まあこういった光に関する話が色々出てくるわけだ。そして光速Cがいかに現代物理学の基軸となっているかを説明する。
 それと関連して出てくるプランク定数及びそれが関係する話も非常に分り易い。反物質やディラックの話、ドゥ・ブローイがアインシュタインの相対性理論の光の本性の把えかたを逆にたどり物質波の概念を提唱した話、現代物理学の基本粒子の分類(フェルミオン、クオーク、レプトン、ボソン、ゲージ粒子)やそれらと4つの力(強い力、弱い力、電磁気力、重力)の話なども、今まで私が読んだ本の中では、1、2番目くらいのわかり易さではなかろうか。勿論分かりやすいから面白く読める。
 
 そして8章では、光速がその相対的不変性から、メートルという長さの単位や、時間の定義の中に利用されている話も紹介され、いかに光速というものが現代物理学の基軸となっているか駄目押しする。
 とにかく光速の性質という側面からみた現代物理学の本であるが、寝転がって気楽に読めるくらい、理解し易い面白い本である。お薦めの1冊です。

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