このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

書評(平成19年08月23日)

『オーロラの本』
(田中達也撮影・文/上出洋介監修/学習研究社)

  カメラマン田中氏のオーロラの写真も満載だが、結構文章も多い。とは言っても2時間弱ほどあれば読める本である。各章のタイトルと簡単な紹介をまず記そう。
1、オーロラの知識
  オーロラの形、色、見え方
2、オーロラの民話
   災いをもたらすという話もあれば幸いをもたらすという話もある。
   オーロラを精霊、老女、少女、竜、火、敵などとみる話。
   口笛とオーロラに関わる色々な言い伝えなど。
3、オーロラの記録
   アリストテレスや、キャプテン・クックなど色々な人々が書き残したオーロラの話を紹介
4、オーロラの探求
   オーロラの謎に挑戦した人々の話
   (たとえばガリレオ、デカルト、フランクリン、フンボルトなど)
5、オーロラの科学
   オーロラが発生する仕組みや、オーロラが発生する際起きている科学現象などの話

 また、本を読んだ上で学んだオーロラの発生の仕組みを、私なりに簡単に説明しておこう。ただし実際には、図があった方がわかりやすいので、詳しく知りたい人は本を読んでもらいたい。
 オーロラは、太陽面爆発のフレア(11年周期で黒点が多く発生する年が巡ってくるが、フレアは黒点付近で発生するので、これも11年周期でよくみられる)や、太陽表面上のコロナホールから地球に向けて吹き付けてくる太陽風によって起こされます。太陽風は荷電粒子を放射したもので、地球には太陽から3日ほどで届きます。この荷電粒子(電子と陽子)が、地球上空の酸素原子や窒素分子に衝突することによって発生します。

 太陽風は猛烈なスピードで地球にやってきますが、地球磁場にブロックされ、地球を取り巻くように吹き抜けていきます。地球磁場がなければ、私たち地球の大気は吹き飛ばされ、放射線などを直接受けることによって生物は生きていくことが出来ません。地球は、大気と磁気圏によってシールドされ、この防御されているのです。
 太陽風が弱いときは、オーロラは発生しませんが、地磁気に変化をもよおさせるような強い時には、オーロラが頻繁に発生します。

 地球磁場のシールドは、太陽に面しているほうでは、ボールを押しつぶしたような形になっていますが、太陽と反対側には、彗星の尾っぽのように長い尾を引いています。太陽風の荷電粒子が地球磁気圏に侵入してくるのは、太陽と反対側の長く伸びた尾の方からです。つまり地球の夜側です。磁気圏に侵入した荷電粒子は、磁場の弱いこの尾の中心部に薄い板状になって溜まります(プラズマシートといわれる)。この溜まった荷電粒子が、磁力線に沿って、極地上空100〜500km付近まで突入し、オーロラが発生します。

 極地といいましたが、地球の磁気の極(地球磁気気極)は地球の自転軸とは異なり、磁北極の方はグリーンランドの北西部(北緯79度、西経71度)、磁南極の方は南極大陸の中(南緯79度、東経109度)にあります。オーロラがよく見えるのは、その磁極ではなく、そこから2、3000km離れたドーナツ状の地帯、オーロラゾーンが一番よく発生します。

 つまりオーロラ見学の観光というと普通、アラスカや北欧など北半球の高緯度地域へ出かけるが、南極でも勿論発生する。
 また地球だけでなく、大気が存在する惑星の、大きな磁場がある星でもオーロラは発見されているようだ。木星、土星、海王星など。

 まあオーロラの説明は、だいたいこのようなところだろうか。詳しくは、この本やオーロラに関する本を実際に読んでもらいたい。
 (この本に出てくるオーロラの写真は、ほとんどカナダ北西部のイエローナイフという場所で撮ったもののようだ。)

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