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線路の幅いろいろ


 鉄道は(モノレール、案内軌条、浮上式リニア等を除き)二本のレールの上を走るが、そのレールの幅は世界共通ではない。日本国内でも、場合によっては同じ会社内でさえ、例えばJRの在来線は1067mm、新幹線は1435mmといったように違いがあり、近鉄や都営地下鉄に至っては三種類のレール幅の線路を持っている。が、世界中で最も標準的に使われているのは1435mmのレール幅で、「標準軌」と呼ばれており、それよりも広いものを「広軌」、それよりも狭いものを「狭軌」と呼んでいる。一般に、線路が広いほど大型・高速で列車を運転でき、線路が狭いほど小型・低速となるが、狭軌と標準軌についてはその法則が成り立つ場合が少なくないものの、広軌の輸送力については、現実には標準軌とそんなに違っていないものと思われる。

 レール幅は、中途半端な値が多いようにも思えるが、これはほとんどのレール幅がヤード・ポンド法によるものだからであり、ヤード・ポンド法にするとたいていキリが良くなる。なお、ヤード・ポンド法では1フィート=12インチ=30.48m、1インチ=2.54cmである。また、一部にはメートル法によるレール幅(1000mmのいわゆるメーターゲージ等)、両者のあいの子的なもの(旧ソ連圏の1520mm等)も存在する。

 日本では、当初は1067mmの狭軌が採用されたが、後に一部の私鉄で1435mmの標準軌が、軽便鉄道でいわゆる「ナロー」の762mmが使われ、以上の三つが日本の標準的なレール幅となった(但し、軽便鉄道は後に激減)。その他に、一部の馬車鉄道とそれに関連する鉄道で1372mmが使われ、更に一部で特殊なレール幅が採用された。また、日本を代表する列車である新幹線は、1435mmの標準軌で建設されている。

 なお、レール幅は「軌間」「ゲージ」といった言葉でも表わされる。また、レール幅を(例えば1067mmから1435mmに)変更することを「改軌」と言う。

 同じ線路の上を異なるレール幅の列車が通れるようにするには、本来の二本のレールにもう一本レールを加えるという手法が主にとられており、そのような線路の区間を「三線区間」という。国内では箱根登山鉄道等に三線区間がある。

 異なるレール幅の線路を直通する列車は、通常はレール幅の変わる区間で台車(車輪)を交換する。これは日本では通常行なわれていないが、スペイン・フランス間、旧ソ連・旧東欧間、モンゴル・中国間等では台車交換が行なわれている。また、同じ台車が複数のレール幅に対応している「フリーゲージトレイン」もあり、スペインでは既に実用化、日本でもJR西日本が実用化に向けて試運転をしている。



いろいろなレール幅
(広軌は主に海外、狭軌は主に国内。ここに挙げてるの以外にも多分ある。)

1676mm 5フィート6インチ(=5+1/2フィート)。インド・パキスタン等で使われている。恐らく最も代表的な広軌だと思われる。
1668mm スペインのレール幅。ナポレオンの侵略を受けた経験から、国防上の理由で広軌を採用したと言われているが、どこからこのレール幅が来たのだろうか?
1665mm ポルトガルはこの幅らしい。スペインとは直通運転可能らしい。
1600mm 5フィート3インチ(=5+1/4フィート)。アイルランド等で使用されているレール幅。
1524mm 5フィート。帝政ロシアが採用したレール幅。広軌にしたのは、同じくナポレオンの侵略を受けたスペインと同様、国防上の理由からだというのが通説だが、ロシアに鉄道を導入した技師が広軌論者だったからとも言われている。旧ソ連国内はソ連時代に1520mmに名目上変えられたが、帝政ロシアの崩壊と共に独立したフィンランドでは、現在でも1524mmかもしれない。なお、フィンランドとロシアとの直通運転は可能。
1520mm 旧ソ連・モンゴルでのレール幅。本来1524mmであったものを1520mmに変更した。変更の理由としては、アメリカンなヤード・ポンド法を嫌ったからとも、ロシア人の性格が大雑把で10mm未満の端数を嫌ったからだとも言われているが、正確なところは不明らしい。但し、実際に測ってみるとどこも1524mm以上あるらしい。
1435mm 4フィート8+1/2インチ。ヨーロッパをはじめ、世界中で最も広く採用されているレール幅で、「標準軌」と言われており、日本でも新幹線と一部私鉄・一部路面電車で使われている。なお、1067mmが標準的な日本では、「広軌」という言葉でこのレール幅をさす事がしばしばある。それにしても、世界標準の割にはやけに中途半端なレール幅のような気がする……が、それにはちゃんとした理由があるっぽい。
1372mm 4フィート6インチ(=4+1/2フィート)。キリのいいレール幅のような気もするのだが、世界的にもかなり特殊なレール幅らしい。日本では当初は馬車鉄道のレール幅として導入され、現在でも都電荒川線、京王電鉄等で使われている。なお、鉄道模型の"Nゲージ"は、150分の1のサイズでレール幅は9mm、つまりこのレール幅を150倍したら1350mmとなり、1372mmに極めて近くなる。レール幅10mmにすれば1500mmで、僅かではあるが1435mmにより近いし、こっちの方がキリがいい気もするのだが(大部分が本来1067mmの日本の鉄道模型はより忠実ではなくなってしまうが)。いずれにせよ、京王のNゲージ模型はレール幅的にかなりリアルなものだろう。
1067mm 3フィート6インチ(=3+1/2フィート)。恐らく最も標準的な狭軌と思われる。日本ではJRの在来線をはじめ、ほとんどの鉄道でこのレール幅を使用しており、ニュージーランド・フィリピン等でも使われている。このレール幅が主流だった日本では、標準軌の1435mmを「広軌」と呼んでいたが、だからといって1067mmを「標準軌」と呼ぶということはなかったようである。
1065mm 同じ3フィート6インチでも、南アフリカではレール幅は1065mmとされているらしい。ロシアの1520mmと似ている気も何となくする。
1000mm 要するに1メートル。「メーターゲージ」とも呼ばれ、インドシナ半島等で使われている。これらの地域でメーターゲージが採用されたのは、ひょっとしたらフランスの影響かもしれないと思ったが、イギリス領だったミャンマーも1000mmらしい。イマイチ謎である。
914mm 3フィート。日本では、北九州の軌道と、それを流用して作った岡山の西大寺鉄道が唯一の存在だったらしいが、いずれも既に廃止されている。日本では極めて珍しいレール幅だが、アメリカのどこかでは標準的な狭軌として使われているらしい。
838mm 2フィート9インチ(=2+3/4フィート)。岩手県釜石の鉱山で使われていたらしい。
762mm 2フィート6インチ(=2+1/2フィート)。日本では軽便鉄道・森林鉄道・鉱山鉄道等のレール幅として多用され、かつては全国津々浦々で見られた。しかし、輸送量の多い軽便鉄道は1067mmもしくは1435mmに改軌され、また輸送量の少ないものは廃止され、また森林鉄道や鉱山鉄道もほとんど廃止されたため、現在では非常に珍しくなってしまった。現在旅客営業を行なっている762mmの鉄道は、黒部渓谷鉄道と近鉄の特殊狭軌線(内部線、八王子線、三岐鉄道に転換された北勢線)のみである。なお、日本では762mmの鉄道のことを「ナロー」と言うが、ナローは英語で「狭軌」の意で、日本で主流の1067mmのレール幅も本来「ナロー」のハズなのだが、1067mmのレール幅は「狭軌」と言うことはあってもどういうわけか「ナロー」とは言わず、同様に762mmのレール幅を単純に「狭軌」と言うことも少ない。「ナロー」という発音が762の76に通じるからだろうか?
610mm 2フィート。主に鉱山鉄道で使われていたレール幅だが、鉱山鉄道自体が衰退してしまい、ほとんど見られなくなってしまった。現在このレール幅の鉄道は、富山県立山の防砂軌道くらいしかない。
508mm 1フィート9インチ(=1+3/4フィート)。一部の鉱山鉄道で使われていたようである。
500mm 兵庫県の明延付近の鉱山鉄道で使われていた模様。純粋にメートル法によるレール幅なのだろうか? それとも508mmを500mmにしてしまったのだろうか?
381mm 15インチ(=1フィート3インチ=1+1/4フィート)。イギリスにある、公共の鉄道としては最もレール幅の狭いロムニー・ハイス&ディムチャーチ鉄道で使用されている。もはやこれ以上狭くなると、遊戯用の鉄道になってしまうだろう。というか、15インチの遊戯用鉄道は存在しており、伊豆の修善寺の某公園に、ロムニー・ハイス&ディムチャーチ鉄道をモデルにした園内鉄道(?)がある。

参考資料
宮脇俊三編「鉄道廃線跡を歩く」(JTB)
宮脇俊三「シベリア鉄道9400キロ」
「鉄道ピクトリアル」
その他いろいろ。

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