このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

ホタルはおるか

ホタルはいる。ときどき、うちの庭を通り過ぎて、山に向かって飛んでいくのを見かける。 しかし、乱舞と呼べるほどのホタルは見たことはない。 近所でホタルが乱舞しているようなところはあるのか?

それならば、いそうな場所に行って確かめるほかはないと、家の近くの 洞(ほら:谷間の田圃。一般には谷地田とか言われる。)へと向かった。

家族から注意されることは、「マムシがおるで気をつけろ。」 そう、これから向かうところには、ヘビがわりとたくさんいる。 昼間もなんとなしにヘビを見かけたところだ。

「マムシは、夜さりになると、舗装の上がぬくたいもんで、よう道の上に寝そべっとる。」

と理由付きで解説されると、さもありなんと思えてくる。

(ほんだもんで、ホタルをわざわざ見ようとひとはおらんとこやな。ヘビにかまれにいくようなもんだでな。)と思いつつ、長靴をはく。長靴をはいた時点で、もはや「ホタル狩り」とか「夕涼み」という雰囲気ではなくなる。さらに雰囲気を壊すかのように、「腕抜きと手袋は、ええか。」別にヘビを捕まえに行くわけでもなく、藪を掻き分けて進むことになるわけでもないので、必要ないとさっさと出かける。

道に出て、家の裏に回ったところで、いきなりホタルを発見。 (こんなに簡単に見つかるんだったら、わざわざ見に行く人もいる訳ないか。理由その2。)と思いつつ、目的地に着けばホタルが乱舞しているのではないかと期待は高まる。

3分ほど歩いて目的地に到着。周囲には人家もなく、街灯などの明かりもない真っ暗闇。 田んぼは沢に沿って一列細く並んでいて、両脇には林が迫っている。

ホタルが、1,2,3匹。飛んでいる。ぱらぱらと、まばらにいることにはいるのだが、同時に視界に入るのは3匹が最多。乱舞といって人に自慢するほどはいない。幅70m長さ300m程の洞を歩いて全部で10匹いるかいないかぐらいだ。 (なるほど、家の裏で見るのとあまり変わらないのに、ヘビに気をつけながらわざわざ見に来る人もいないはずだ。)とわざわざホタルを見に行こうという人がいないのを納得。

とりあえずホタルがいた証拠の写真をと思ったけど、カメラの枠のなかに入るほどいるわけでもなく、何度か挑戦してやっと撮れたのが次の写真。
ホタルの光ホタル

一応いるみたいです。(平成15年6月22日)


蛇足

ところで、気になるのは、安易なホタルの養殖・放流。最近のニュースでも、クワガタ虫の外来種と在来種の交雑種が野外から採取されたりして、人間による生態系の擾乱が心配されている。

ホタルがたくさん飛んでいる環境は確かにいいものである。しかし、それは単純にホタルがたくさん飛んでいるから良いというのではなく、ホタルが生育できるような環境が維持されていることが良いのであり、ホタルが飛んでいるのは結果にすぎない。もしそういった環境を維持するまたは作ろうという努力をすることなく、ホタルの乱舞という結果のみを求めて、よそから持ち込んだホタルを人工の環境のもとで育て、成虫や幼虫を屋外に放つようなことをしたらどうなるだろうか?多分、元からいたホタルは、よそから持ってきたホタルにとって代わられてしまう。または遺伝的形質が大きく変化することはまのがれない。そんなたいそうな影響はないと思われる人も多いだろうが、似た様なことをして ミバエという害虫を根絶 させることに成功したことぐらいは耳にしたことはあるだろう。

放つのは同じホタルだから問題ないと思われるかもしれない。しかしながら、この東濃地域には、シデコブシをはじめこの地域にしか存在しない固有種が存在している。いまここに飛んでいるホタルがこの地域固有のものではないと断言できるだろうか?数え切れない歳月を経て形成されてきた自然の状態を、人間の気まぐれによってほんの数年で変えてしまうのだ。そしてその元の状態は決して帰ってくることはない。よそから持ち込んだホタルだけを取り除くことは実質的に不可能だ。

え、ホタルが固有種だろうとそうでなかろうとたくさん飛んでいればいいって?そういう人の説得は難しいかも。もし、ホタルが飛んでいることによって地域の暮らしが良くなるというのなら、固有種がどうのこうのなどと言うのは、本当に些細な話だ。でも、子供の教育のためとでも言うであれば、これほど愚かなことはない。科学的に誤ったこと、つまり、地域の固有種を絶滅させようとしているのに、自分たちはホタルを殖やして保護に貢献しているという勘違いによって教育される子供は可哀想だし、それに満足している大人は格好悪い。

ほんなら、地元で採集したホタルを養殖して放つ分には問題はなかろうということになりそうだが、ことはそう簡単ではない。もっとこういった問題について詳しく知りたい人は、リンク先のページを読んでみましょう。



阿木村総合案内板 2000年3月29日設置 E-mail: agi_jin_sa@yahoo.co.jp
2003年6月28日作成

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