このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

マンガ逍遙

3.「鎌倉ものがたり」 西岸良平
 双葉社・刊 1〜21(2004.7月現在)
 初出 双葉社 週刊アクション S60〜 まんがタウンにて現在連載中
    
 西岸良平氏は光村図書の国語の教科書にも採用される程、なんと言いますか、「よい子とその親のための」マンガ家だと思います。その代表例が「三丁目の夕日」であり、ほのぼのとしていることがマンガのどこかに求められているような、そんな気がします。
 よって氏の作品のどれを読んでもほのぼの感を感じられないものはありません(断言)、、、あー、でもそれって絵の影響が大きいよなあ。ほのぼの感+何が加えられるかといったところが氏の作品のおもしろみになります。
 絵のぶれはここ20年くらいの作品で見られません(これはある意味驚異的なことですね。かの「こち亀」でさえ、数年スパンで違いが見られやすいのに)。よってかなり昔の作品が文庫で登場してもいつの作品だか(笑)。比較的時代背景を感じさせない舞台(だいたい昭和30〜40年代)を氏の作品内で完成させている向きが見られます。
 さて、本題に入りましょう。この作品は氏の得意とするオムニバス調を維持しつつも、鎌倉という土地を舞台に関係人物と妖怪、または非日常的な事件を絡ませて摩訶不思議な世界を作り上げています。最大の魅力は鎌倉を舞台とした世界観です。話の殆どに出てくる人ならぬ者−魔物や妖怪、幽霊はその殆どがユーモラスであり、また人間の写し鏡となって私たちに深く考えさせます。この方針は「赤い雲」や「可愛い悪魔」のようないわゆる青春奇譚シリーズ(鎌倉ものがたりの前の連載作品)を源流に考えることが出来ますが、青春奇譚シリーズにおける人ならぬ者の扱いは、主人公達が飼っている猫又・ワニ丸を除いては、人間に敵対する者ばかりです(時に人間の方がおかしい場合もありますが、まあこれは鎌倉ものがたりにおいても同じです)。そのてんで鎌倉ものがたりは人間と人ならぬ者との協会を限りなく縮めたと言え、それは大きな魅力となっています。
  主人公・一色正和は妻である亜紀子と暮らす推理小説家です。時々事件が起これば警察の方々の手助けをすることがあり、ここにはこのマンガの推理小説的一面も備えています(そのうちの多くは人ならぬ者の仕業であるので、いささか変化球の要素がありますが)。そんな要素も孕みつつ、一番褒め称えるべきは鎌倉という地域に暮らす人たちへの暖かい視線です。このマンガには鎌倉の名所もそうでないところも数多く出てきます。読んでいくうちにこの鎌倉の魅力をマンガが余すことなく紹介していることに気がつくでしょう。こういった点が当代きってのほのぼのマンガ家の真骨頂を見せているのではないでしょうか。

 巻は進んでいますが、評価に一点の訂正もありません。作者の作風が安定している事を表しています。ここあたりでアニメ化とか、、、ないだろうな、やっぱり。

 当コーナーではこれから順次(気が向いたら)マンガ作品を紹介していきたいと思います。
 基本姿勢としては、
 ・好きな作品しか紹介しない
 ・何度も読んだものしか紹介しない
 ・自分が所有している(つまり、それだけの価値があると自分で思っている)ものしか紹介しない
 という三点を挙げます。
 ま、紹介の九割九分は作品リスペクトになると思いますので、かるーい気持ちで読んで下さい。


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