このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

マンガ逍遙

11.「MIND ASSASSIN」 かずはじめ
 集英社・刊 全5巻?(2005.1月現在)
 初出 集英社 週刊少年ジャンプH6・52号〜H7 その他月刊少年ジャンプにて掲載

 皆さんは連載終了後にそのマンガの存在を知りもう少し連載して欲しかったと感じたことはあるでしょうか。私はそんなマンガの筆頭にこれをあげたいと思います。
 ちょうどこのマンガが連載されていた頃、私は高校生でした。なぜ、といわれると何も云いようがなかったのですが、ちょうど生徒会活動に打ち込んでいた時期と重なったためでしょうか、マンガを殆ど読まなかった時期でした。
 で、この作品、どこかで読んでいてもちっとも不思議でないはずなのに、大学生にはいるまでその存在を知りませんでした。
 あのとき読んでおけば、まだジャンプ離れしなかったものを、、、ぶつぶつ。

 この作品に出てくるレギュラーキャラクターは2人のみです。記憶を消す能力を生まれながらに持った、ドイツ系3世のクォーターである「奥森かずい」、そして彼に育てられている、同居人「虎弥太」。彼ら二人の、その背負った宿命に翻弄される物語展開と、日常のほほえましさ。そこから感じ取れる優しさ。失ってならない日常の美しさを感じさせる、現代の日本人に欠けた何かを取り戻すことのできる、人情に厚い物語です。
 週刊誌によく見られる話の、展開の派手さでその週間をごまかしていく展開が、ここでは見られません。そもそも読み切りタイプの展開で話は進められ、読後に勧善懲悪の痛快感を感じることのできる。ちょうど少年誌における水戸黄門のような物語といえましょう(そう聞こえないかもしれませんが、私の中では最大級の賛辞です)。
 ヒーローに完全無欠を望んだ時代に、私たちは生まれていません。そこに生きるべきは人間味を持った、悩み続けるヒーロー像であり、それでもより優しい結末に導こうとする努力するヒーローです。この基準に「かずい」は実に当てはまります。私の中での“生きる”先達の一人になっています。この物語をもっと読みたかった、と心からこの21世紀に悔やみます。

 さて、少し調べたところによりますと、作者の中ではいずれ続きを書きたいという気持ちもあるようですが、はてさてどうなることか。こればかりは天のみぞ知る、というほか無いでしょう。願わくばジャンプ編集者にこの作者を青年誌に誘導して頂けたら、と願わずにいられません。青年誌のフィールドの中で、十分堪えることのできるハードボイルドな作品であり、作品のスタンスにすがすがしさと青年の輝きを感じます。ジャンプ系の中で隠れた名作のひとつです。


 当コーナーでは順次(気が向いたら)マンガ作品を紹介していきたいと思います。
 基本姿勢としては、
 ・好きな作品しか紹介しない
 ・何度も読んだものしか紹介しない
 ・自分が所有している(つまり、それだけの価値があると自分で思っている)ものしか紹介しない
 という三点を挙げます。
 ま、紹介の九割九分は作品リスペクトになると思いますので、かるーい気持ちで読んで下さい。


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