このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
マンガ逍遙
5.「君だけをみつめてる」 七瀬あゆむ
集英社・刊 全7巻
初出 集英社 週刊ヤングジャンプ H7・47号〜H9・27号
七瀬あゆむというマンガ家さんは、心情描写、とくに静かな闘志と揺れる心情を表現することにとても長けたマンガ家ではないでしょうか。いわゆるスタティックな情景を書くことに非常に向いている作家さんといえるでしょう。言葉に飾りを感じさせるのですが、それ自体が質の良い劇のような感触を見せています。
そんな氏の代表作がこの作品です。演劇を舞台としたこの作品は、人の心の強さともろさ、そしてそれがある故に私たちは人を愛することが出来るのだ、ということを改めて教えてくれます。
全7巻で、全体としては6部構成になっています。後半の話数の短い一区切り展開に関しては、少々の物足りなさがあるものの、第1巻の出会いと映画に対する情熱に関する描写、第3巻から5巻のいわゆる「英樹編」の揺れる主人公とヒロインの心情描写は、青年誌史上の中でも特筆すべき(いや、本当にもっと褒めて下さいよ)展開だと確信します。もっと続いて欲しかったマンガのひとつでしたが(もう何巻か続けると、主人公とヒロインの成長部分がはっきりと描写できたのでは、と思うのです)、、、多分、作者さんがこれ以上の展開を生み出せなかったのではないかと思います。それくらい、この作品は同じマンガ家さんの作品群の中でも群を抜いて素晴らしいものです。
最初にまず絵の方からファンになる人も多いのではないでしょうか。初期の作品には弓月光テイストの画風も見受けられます。少女マンガ風タッチの雰囲気が残っているため、一部これに嫌悪感を抱く人もいるかもしれません。が、描写するテーマは年を追う毎に、対象年齢を上げながら「夢と恋」の深い描写に力を入れていきます。
作者のある種ピークの時期にこの作品を描いた、とも言えるのかもしれません。とはいえ、たとえマンガ家のピークがあったとしても、その時期に琴線に触れるような作品を作れる方は少ないでしょうし、技量に見合えるような題材を選べるかどうかも難しいと思います。この作品はそのような数少ない偶然の中から生み出された傑作と言えるでしょう。
で、、、ここからは愚痴ですが、最近の作品(原作ものの奴)、何なのでしょう?
「天国に一番近いフィールド」に関しては原作者のロマンが感じられるので、あれはあれでよい作品だとは思うのですが、、、もうひとつの連載。オールマンでの連載ということもあってか、ずいぶんな男性ご都合主義に絵だけを利用されたという印象がありました。これからの作者の活躍を期待しますが、、どうなってしまうのでしょうか?
追加:パチンコマンガに進出ですか、そうですか。敢えて読んでみるのも手かもしれません。私は怖くて出来ません(そもそもパチンコ興味0)。
当コーナーではこれから順次(気が向いたら)マンガ作品を紹介していきたいと思います。
基本姿勢としては、
・好きな作品しか紹介しない
・何度も読んだものしか紹介しない
・自分が所有している(つまり、それだけの価値があると自分で思っている)ものしか紹介しない
という三点を挙げます。
ま、紹介の九割九分は作品リスペクトになると思いますので、かるーい気持ちで読んで下さい。
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