このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
マンガ逍遙
6.「人形師の夜」 橘裕
白泉社・刊 1〜6(2003.9月現在)
初出 白泉社 ララDX H6・1月号 ララ・ララDXにて不定期連載
さて、皆さんは何をもってそのマンガを好きになりますか?
私はだいたいその絵柄からはいることが多いです。逆に言うと、内容に目の見張るものがあるマンガでも、絵が気に入らないと、受け付けるまでかなり時間がかかります。
ただ、これには当然例外がありまして、あまりにもテカテカした派手な絵でも、もしくは劇画調の色合いが強すぎるくどい絵でも「ストーリーがいいよ」なんて事を人から言われて薦められるとほいほいとつられて何でも読んでしまい、気に入れば買いあさってしまいます。この本もそうやって見つけたマンガのひとつです。
そんな余計なマクラを入れて、今回は少女マンガを紹介するわけです。
「人の生死をテーマに入れると泣ける作品となりうる」という最近のはやりがあります。人から薦められるドラマ、マンガ、ゲームに至ってまでもが最近はとみにそればかりで覆われています。そして、かくいう私もついついはまってしまうわけですが(笑)。
この作品は早くからそのような「重い」テーマを中心にオムニバスで綴る作品群です。作品の中には軽めのものもありますが、だいたい死者が出てしまう展開となっているため、最後には涙腺が潤みます。卑怯です。
だいたいの流れは死者、ないしそれに近い存在が「人形師」に仮の体を借り、思い残しを伝えるため行動する、といった内容です。もっとも少女マンガの限界といいますか、恋愛が絡むものが多く、その作品中の主人公年齢層が低ければ低い程、う〜ん、と首をひねるものもあります。なに、気に入らない作品は読み飛ばせばいいんです。ひとつ気に入れば、他のものもはまります。そんな作風です。光るセンスをもつ作品が他の存在を忘れさせてくれます(6巻の「君の名は」は、、ちょっとなぁ)。
この作者さんの傾向でしょうか、社会的なテーマになればなる程面白くなり、また泣けます。かなり良質な涙と読後感を味あわせます。とくにおすすめは4巻「朝のうた」でしょうか。4〜5巻は作者のピークではないかと思うくらい、佳いです。そう言った点では「渡辺さんちの一家言」(1巻刊行)などはもっとも作者の感覚にあった名作ホームドラマとなりうると思うのですが、、、どこか雑誌代えてでも連載しませんか、いや本当に。
話を元に戻します。少女マンガで人生を語ったり世界の矛盾を解くという手法は、非常に難しいものですが、その作者さんの技量と嗜好によっては十分に可能であり、他のジャンルと比べても十分に名作となり得ます。そう言う事実を教えてくれるお約束的作品と言えるのではないでしょうか。
当コーナーではこれから順次(気が向いたら)マンガ作品を紹介していきたいと思います。
基本姿勢としては、
・好きな作品しか紹介しない
・何度も読んだものしか紹介しない
・自分が所有している(つまり、それだけの価値があると自分で思っている)ものしか紹介しない
という三点を挙げます。
ま、紹介の九割九分は作品リスペクトになると思いますので、かるーい気持ちで読んで下さい。
このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |