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鹿児島中央駅ホームにて[04.08.14]

新八代—新水俣—出水—川内—鹿児島中央
 2004年3月13日、満を持して部分開業した九州新幹線です。6両モノクラスの800系「つばめ」が鮮烈にデビューしました。暫定開業のため、新八代駅では日本初の「在来線⇔新幹線」平面乗換が実施されています。博多〜新八代間の特急「リレーつばめ」と新幹線「つばめ」が一体のダイヤとして設定され、新八代での3分の乗り継ぎを介して有機的に博多〜鹿児島中央を結んでいます。これと同時に西鹿児島駅が鹿児島中央駅に解消され、新八代、新水俣という3つの新駅が誕生しました。八代〜川内間の在来線(鹿児島本線)は第三セクター・肥薩おれんじ鉄道に経営委譲されました。
 800系は東海道・山陽新幹線700系をベースとしながらも、山岳地帯の多い九州新幹線を260km/hで走行するため機器類の強化がなされています。車内はモノクラスながら2+2列の豪華な配列。「和」を基調とし、木目「調」どころではなく、とにかく木の素材が随所に生かされた車内となっています。八代特産のイグサを使ったすだれなど、沿線の素材が多用されています。さらに車内放送は日・英・中・韓の4か国語。急増しつつある観光客への対応もばっちりです。車体に記された「つばめ」の文字は九州旅客鉄道の社長の揮毫によるものです。
 新幹線線内の停車駅パターンは全駅停車(所要47分)・川内停車(所要39分)・ノンストップ(所要34分)の3パターンで、他に鹿児島中央〜川内間の区間運転列車もあります。博多〜新八代間の「リレーつばめ」も速達タイプと通常タイプがあるため、速達型の乗り継ぎと、通常の乗り継ぎがそれぞれ30分おきに交互にくるようなダイヤ設定になっています。
 これまでのダイヤでは博多〜西鹿児島間の特急「つばめ」が毎時1本程度の運転でしたが、「リレーつばめ+つばめ」は、臨時扱いの列車まで含めるとほぼ倍増となっています。ずいぶん大きく出たな、という気もしなくもありませんが、時間の大幅短縮による需要拡大を狙う姿勢が見えると言えるでしょう。在来線時代は所要時間で高速バスと実力が拮抗しており、料金面でやや不利に立たされていましたが、新幹線開業で所要時間の大幅短縮が実現し、ライバル競争はまた違ったステージに立ったようです。高速バスの方は停車停留所の拡大や回数券等の充実で対抗しています。さらに飛行機との競争がどうなるか…これからが楽しみです。
 2007年10月、全線開業時にJR西日本山陽新幹線と直通運転を行うことで合意したとの発表がなされました。N700系をベースにした新形式車両を投入し、新大阪〜鹿児島中央間を約4時間で運転するとのこと。西日本〜九州の交通版図が大幅に塗り替えられる日も、そう遠くはありません。
車内の様子[04.08.14]
<乗車記>
 「時刻表」の2004年3月改正号を見たとき、まずその表紙に踊る「つばめ」を見て、いよいよだな、という期待に胸が高まった。ダイヤを見るべく早速ページを繰ってみるが…あれ、九州新幹線がない。上越・長野新幹線の後にあるんやないとかいな。…!! そう、九州新幹線は東海道・山陽新幹線の後、東北・山形・秋田新幹線の前に掲載されていたのである。日頃よく見る東北新幹線のページの前に九州新幹線が君臨したことで、九州出身の仙台市民として、そこはかとなく優越感(?)をくすぐられるものがあった。
 さすがに乗る機会はなかなかないだろう、と半ばあきらめかけていたところに、どうしても鹿児島に行かなければならない用ができた。あまり楽しい用とは言えなかったが、九州新幹線に乗れる、という事実は純粋に嬉しかった。博多11時30分発の787系「リレーつばめ43号」に乗る。グレーメタリックだった787系の車体はこの「リレー」化にあわせてよりシックなグレーに塗り替えられており、渋さが増していた。駅のLED表示はもちろん、側面の方向幕も「リレーつばめ 鹿児島中央」と表示されているあたり、JR九州の意気込みを感じる。「43号」という数字も特急「リレーつばめ」と新幹線「つばめ」で共通であるし、驚くべきことに指定席特急券も1枚に2列車分が収められている。マルスのシステム変更に苦戦したという話を聞いたが、これは便利である。通しの乗客に対しては極力同じ席番を販売するようで、私の席は「3号車5番B席」であった。
 つばめレディの丁寧な挨拶を受けて車内に入る。ハットラック式の荷棚や座席の様子を目にすると、どこか古巣に帰ってきたような、懐かしい気分になった。「リレーつばめ+つばめ」は、博多〜鹿児島中央間を最速2時間10分(新八代での乗換時間を含む)で結ぶ。この「43号」は「リレー」は停車駅が多いタイプ、「つばめ」も全駅停車タイプで、所要時間は2時間31分を予定している。テープによる車内放送は声色こそ昔のまま(笑)であったが、「鹿児島中央行きです」の案内に気分を新たにする。新八代までは1時間40分。移りゆく窓外の形式を眺めているうちに電車は九州新幹線につながる急カーブのアプローチ線をのぼっていた。
 3分乗り継ぎというのはやはり少々慌しい。787系は7連、800系は6連であるので、停車位置が若干ずれる。しかも1両あたりの座席数が違うので「同じ席番」でない場合も往々にして起こり、年配の方が戸惑って乗務員に詰め寄るケースもあると聞く。とは言え、とりあえず目の前の電車に乗ってしまえばいい、というスタイルが根付けば混乱も少しはおさまるかも知れない。真新しいホームを見物する間もなく、目の前の車体に乗り込む。ここでも「つばめレディ」が丁寧に案内してくれた。車内に入ると…これはすごい。鉄道雑誌の写真では目にしていたが、やはり実物を前にすると言葉を失ってしまう。木材による座席、格調ある色合いのシート、「すだれ」のようなサンシェード。これが鉄道車両かと疑いたくなるほどの居住性である。そしてシートピッチの広いこと。2+2というだけでかなりゆったりしているのに、目の前にある木の背ずりまでが遠く感じられるほどである。…もはや、東北新幹線E4系Maxなどに新幹線特急料金を払う気がしなくなってしまう。
 列車は鋭い加速で発車した。ほとんどの区間がトンネルなので車窓はあまり望むべくもない。ならば、ということで車内の探検に出かけた。車両によってシートの色が違うのを発見したり、イグサのすだれを見て感動したり、白熱灯のような淡い光の車内とデッキのぐっと光量を落とした静かな雰囲気の差に感心したり。そうこうしているうちに列車は新水俣、出水、と停車して着々と鹿児島中央に近付いていた。通しの乗客だけでなく、区間利用も案外多いのに驚いた。聞けば、川内や出水から、鹿児島市内の学習塾に「新幹線通学」するお子様も出てきたとか。新幹線の影響は計り知れない。
 トンネルの中でぐぐっと減速のGがかかったかと思うと14時01分、定刻に鹿児島中央駅に滑り込んだ。目の前には雄大な桜島の姿が見える。かつての特急「つばめ」は「やっとにしぇきやぃが(ようやく西鹿児島駅だ)」といった感じで西鹿児島に到着したものだが、「んだ、もう中央駅け?(なに、もう(鹿児島)中央駅なの?)」という気分だった。4時間近くかかっていた行程がここまで短縮された効果はやはり、大きい。真夏の鹿児島の太陽が降り注ぐホームに、純白の「つばめ」が二羽、また飛び立つ時を待っていた。
[04.08.14乗車]
鹿児島中央駅ホームにて[04.08.14]

(駅案内)新八代—新水俣—出水—川内—鹿児島中央
(その他)全線電化複線、新幹線

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