このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
2005年2月に新たに開業した福岡市営地下鉄「3号線」です。鉄輪式リニア駆動の、いわゆる「ミニ地下鉄」が走ります。ATOによる無人運転が可能となっており、「ゆりかもめ」のように前面展望を楽しむことも可能です。もっとも、全線地下区間ですが。福岡市南西部の鉄道空白地帯を補完するために建設されましたが、積極的なバス会社の攻勢もあり、なかなか苦戦している模様です。
始発の天神南駅は、国体道路の地下、大丸エルガーラの南側です。空港線天神駅とは改札外乗り継ぎが可能で、七隈線〜空港・箱崎線との運賃は通しのキロ数で計算されます。が、天神〜天神南間は580mにわたって地下街を歩かねばならず、地下鉄同士の乗り継ぎには不便と言わざるをえません。西鉄天神大牟田線福岡(天神)駅南口、西鉄バス「天神バスセンター・博多大丸前(渡辺通南行き)」「天神南(渡辺通北行き)」「天神1丁目(国体道路)」からの乗換はまずまず利口でしょうか。
天神南のシンボルマークは「通りゃんせ」で遊ぶ子供の図。天神南を出た電車は左直角カーブを切って渡辺通の地下を南下します。電気の前あたりにあるのが渡辺通駅。もともと渡辺通というのはこの通りに路面電車を通した人物の名をとった名前ということで、この駅のシンボルマークはビューゲルのついた路面電車のイラストです。渡辺通を出ると電車は右直角カーブを気って市道城南線の地下に入ります。加速する間もなく薬院駅。かつて西鉄急行電車と西鉄市内線城南線が平面交差していた薬院駅前は、高架の西鉄駅の直下に城南線が直角に交わり、その下を七隈線が通る、という状況に変貌しています。西鉄天神大牟田線の車内放送でも、薬院駅到着前に「六本松・博多駅方面市内バス、地下鉄七隈線はお乗り換え…」と告げるようになりました。シンボルマークは、施薬院をイメージした、乳鉢と乳棒です。
再び加速する間もなく薬院大通駅。渡辺通〜薬院〜薬院大通の区間はそれぞれ、バス停1つ分の距離しかありません。シンボルマークは動植物園をイメージした花と象。城南線に沿って電車は坂を駆け上がります。この辺のトンネルは山岳トンネル工法で掘られているので、前面・後方展望を見ていると他の区間とは少しトンネルの雰囲気が異なります。だいたい桜坂駅付近がサミットでしょうか。花びら舞い散るイラストがシンボルマークのこの駅付近には、あの福山雅治も訪れたことがあるとかないとか。坂を駆け下り、左折して国道202号線地下に入ったところに六本松駅があります。九州大学の教養部が目の前にある他、近所には大きな高校もあり、学生の乗降が期待されています。西鉄バスの南西部路線が交錯する交通の要衝でもあるため、お互いがにらみ合っているようなイメージもあります。シンボルマークは松の木のイラスト。
一旦深くもぐって別府橋・別府大橋の下をくぐり抜け、別府駅に到着します。この別府大橋というのはもともと、ここを走っていた筑肥線との立体交差のためにつくられた跨線端でした。現在筑肥線跡は道路に転用されています。別府駅のマークはカタカナの「ベ」を、端をイメージしてイラスト化したもの。別府駅を出ると電車は左にカーブして茶山に向かいます。お茶のマークの茶山駅近辺は、閑静な住宅地です。そのまま道なりに南下して、金山。三角形のマークが意味深です。七隈線と同じルートを走っていた路線バスは大幅減便や経路変更など、かなり大がかりな整理が行われました。次はこの路線名の由来ともなった七隈。旧くは「七車」と言われていたらしく、車をイメージしたシンボルマークとなっています。
福大キャンパスの西側、福大病院との間に福大前駅があります。この地下鉄開業に合わせて福岡大学は正門の位置を移動したほどだそうです。地下鉄の入り口には運賃と所要時間を大書きしたステッカーが貼られており、バスとの対決姿勢を色濃くしています。シンボルマークは福大の応援歌「七隈トンビ」から、トンビと学生帽をイメージしたマークです。福大前を出た電車は大きく右にカーブを切り、外環状線の地下に入ります。2005年夏現在、外環状線はまだまだ工事中です。この付近は大土木工事が行われており、将来的には、地上が福大のグラウンド、一層下が都市高速4車線+一般道4車線のトンネル、二層下が共同溝、そのさらに下が地下鉄、という形になるそうです。福大前駅の次は梅林。地下鉄開業や外環状開通で様変わりしつつある住宅街です。マークは梅の花。次は野芥。外環状の工事に合わせて病院が移転するという、これまた大工事が行われた場所です。マークは近くにある用水にちなんで用水に浮かぶ椿の花。
外環状線の地下をひたすら進み、次が賀茂。マークは賀茂神社に伝わる伝説にちなみ、ナマズ。その次は次郎丸。マークは近所を流れる室見川をイメージしたホタル。この辺は本当に郊外の住宅地、といった感じでしたが、地下鉄の開通でこれからその様子を大きく変えていくことでしょう。次郎丸の次が終点、橋本。外環状線の少し南西側を走って駅に入ります。駅の南側に広大な車両基地があります。マークはかつてあったと言われる紅葉八幡宮にちなみ、山に紅葉を散らしたデザインとなっています。ここから外環状をさらに北に進むと、空港線の駅がある姪浜界隈にたどり着きます。
<乗車記>
薬院駅前でひとしきり、LED行き先表示に変わりつつある西鉄バスを眺めたあと、おもむろに地下鉄へと続くエスカレーターに足を乗せた。思えば、私が中央区の某私立中学校に通い始めた頃、この城南線で地下鉄工事が本格化したのであった。鉄板道路の照り返しに閉口し、大きく揺れるバスの車内で「車内揺れます、ご注意下さい」という運転士さんのアナウンスを気休めに聞き、日々変わる車線に工事の進捗を感じていたものだった。今の薬院大通駅付近では陥没事故も発生し、大混乱をきたしたこともあった。少しばかり、感傷にひたってしまう。
構内は新しいこともあり、清潔で、明るい印象だった。空港線、箱崎線、JR筑肥線、西鉄宮地岳線までが描かれた運賃表が誇らしげであった。よかネットカードで改札を抜け、ホーム階へ。ホームドアは腰までの高さの、空港線と同じ仕様のものだ。それにしても、頭上の架線までが近いこと。地下鉄大江戸線にも乗ったことがあるのでそのイメージはあったのだが、やはり、小さい。やがて橋本行きの電車が滑り込んできた。…こう言ってはなんだが、イモムシに見えるのは私だけだろうか。
車内は何やらリクルートスーツを着込んだ若者が多かった。多かったと言っても立ち客がわずかにいる程度だ。車内も狭い印象がぬぐえない。何より、天井が低いのは致し方ないこととは言え、圧迫感を感じてしまう。ディスプレイやLED表示器がそこかしこに設置してあり、これでもか、とばかりに案内が充実している印象だった。
すぐに発車。乗務員が添乗しており、その操作と前面展望を同時に見ることができた。これが、あの城南線の地下なのか…と思わずにはいられない。トンネル内は明るい照明に照らされており、線路が上下左右にくねっている様子がよくわかる。6年間通った城南線、地上の様子はばっちりわかっている。緩い左カーブを切って、電車は六本松駅に滑り込んだ。
かつて六本松駅の工事現場を見学したことを思い出した。鉄骨や鉄筋が縦横無尽に組み合わさっていたあの空間が、快適な駅になっている。「ここが留置線になるんですよ〜」と説明を受けた箇所は、ホームの橋本寄りから確認することができた。またしても、感動に浸った。そして地上へ。一体どこに出るのかと思ったら、九大の門の向かい側。昔不思議なタオル屋とかあったよな…
いろいろと懐かしさがあふれる乗車体験であった。
[05.09.05乗車]
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