| 「日本の食料自給率は40%台で危機的である。」
「だから意欲ある農家に農地を集約して、大規模農業を展開すべきだ」
なぜここで使われる接続詞が「だから」なのか?
「人手を集約することによって、農業生産力が増える」ということは 「ありえない」
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なるほど。では、御説明しましょう。
まず、農地の集約化により、粗放的農業を行うつもりはありませんし、日本の現在の大規模農家が粗放的かというとそんなことはありません。
(これで話の大部分が終わってしまうのですが。
でも、スルットkanto氏のような知識人が、誤解されているとは正直がっかりしたなあ。まあ、農業事情は都市住民には判らなくなっているのでしょう。)
まず基礎知識(本題と外れてしまうが)として、食料自給率ですが、昭和40年度にカロリーベースで73%でしたが、現在は約40%です。
その原因は、耕地の減少、利用率の減少(=裏作をしなくなった)、人口の増大もありますが、これらの要因は、おおむね単収の増大でカバーされています。
では、下がった最大の理由は何かというと、日本人が畜産物を食べるようになり、そのための飼料を輸入したことに起因します。
したがって、食料自給率の急激な上昇は、畜産物の消費量を下げない限り、困難です。
あとは、飼料を国内で生産する余地があるので、その面で努力すること。
また、下げないようにすることとしては、耕作放棄地が生じないようにすることです。
そのためには、農地の集約化と共に、農業技術の向上による単収向上や高付加価値農産物の生産による輸入農産物との競争力強化という方策もあります。
なお、余り知られていませんが、過去30年、世界の農業は、農地面積は余り増加せず、単収増加で生産量を増大してきたのです。
>農地を集約化することによって、農産物が効率的に生産されて、
>国内農産物の価格が安くなって、輸入品との価格競争力が増す。
結局これに尽きます。
小規模農家は、営農を長く行うことが期待できない高齢者や農業外所得の多い兼業農家が多く、大規模農家と一緒に保護しようとすると、結果として、農地が大規模農家に集約できず、恒久的に農業を行う大規模農家の経営に悪影響があるのです。飛び飛びの農地では機械化が極めて困難です。
例えば、稲刈りは秋の一定期間内に終わらせないといけませんが、稲刈機で稲刈りをしている時間よりも、移動にかかる時間が遥かに長いのです。
そして、小規模農家が農業を止め、大規模農家の経営が苦しくなると、いよいよ耕作放棄地が生じてしまいます。
では、財政的なことを考えず、小規模農家と大規模農家を補助金と国境措置(=関税や輸入数量割り当て)で保護すればいいのではという意見もあるでしょうが、財政的な問題は別として、WTOやFTAで、生産刺激的な補助金(生産量に応じて支払われる補助金等)については規制と削減が求められており、また、関税率の削減も求められており、今後の農業政策は、WTOやFTA上認められる制度でなければならず、結局大規模農家に集約せざるを得ないのです(これを話し出すと、本が出来てしまうので、これくらいで)
なお、日経がこのような農地集約化の記事を書くのも、今後のWTOやFTA交渉で、農業保護のため、工業品の輸出交渉が不利になることを警戒しているのでは、ないでしょうか。
これに対し、最近選挙で勝ったある政党は、小規模農家と大規模農家を共に保護することを公約に掲げています。
財政的な問題と今後の貿易交渉という要因がなければ、これが一番簡単、確実で、農家の支持も得られます(得られた?)が・・・・。
本当に政権を取ったらどうするのだろうか?
大臣の金の流れやバンソウコウを批判するのはかまいませんが、本気で政権をとるつもりなら、やっていいことと悪いことがあると思いますよ。
長文御免 |
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