| 以前確かここで、農業より太陽光発電を行った方が
土地面積当りの売上は確保できる、という投稿を行ったことがある。
その時は「太陽光発電設備建設費」というイニシャルコスト部分を
計算から外して、表面的な売上で比較した。
イニシャルコストの償却を見込んでの比較じゃないと、フェアじゃない。
ということで、イニシャルコストまで突っ込んで試算。
【命題】
「耕作放棄地1haで以って太陽光発電をした場合と、
高収益農業(東京都内の野菜並みの収益性)と比較した場合、どちらがトクか?」
【大前提】
★農地転用が認められる。(実はここが一番ハードル高い)
★電線が放棄地まで来ている。
★施工できるだけの道路が放棄地まで来ている。
【小前提】
★総工費=2.5億円(シャープ堺メガソーラーの20分の1サイズ)
★出力= 500Kw ( 〃 )
★総出力量=55万Kwh/年 ( 〃 )
★稼働率=12.55% (シャープ堺と同稼働率)
※大阪府は瀬戸内性気候なので、全国平均よりは稼働率はいい。
日本海側とか東京とかは、多少稼働率は落ちます。
★補助金=3分の1補助
※資エネ庁が50Kw超発電に3分の1補助しています。
もっと増額する、という新聞報道もありますが。
★土地取得費=147万円/10㌃
※全国農業会議所が発表した「田」の19年度平均農地価格
【売電単価25円の計算】
現在の余剰発電分の買取価格です。
★売電単価 想定25.00円/Kwh
★売上 想定13,750千円/年
★ランニングコスト 想定1,375千円/年(原価率を1割と想定)
★利益 想定12,375千円/年
★利回り(補助金なし) 想定4.68%
★投資回収(補助金なし) 想定21.39年
★利回り(補助金あり) 想定6.82%
★投資回収(補助金あり) 想定14.66年
これだとちょっと民間企業は手を出さないかなあ?
但し、メガソーラーへの補助金が増額(例:半額補助)されれば、
利回りが10%を超えるので、事業化の余地はあります。
【売電単価50円の計算】
経産省は、一般家庭の電気料金にシワ寄せしてまで、
売電単価の倍増を電力会社に強要する予定です。
なので一般家庭は来年から50円程度になるでしょうが、
「太陽光発電事業会社」の生産電力まで50円で引き取ってくれるかどうか不明です。
シャープは堺で作った電力をいくらで関電に引き取ってもらうつもりなのか、気になる。
★売電単価 想定50.00円/Kwh
★売上 想定27,500千円/年
★ランニングコスト 想定2,750千円/年(原価率を1割と想定)
★利益 想定24,750千円/年
★利回り(補助金なし) 想定9.35%
★投資回収(補助金なし) 想定10.69年
★利回り(補助金あり) 想定13.65%
★投資回収(補助金あり) 想定7.33年
これだと、現行補助金制度でも、充分採算に合います。
【高収益農業】
東京都内で、総農地面積=8,090haです。
そこで29,745百万円の生産額なので、1ha当り3,680千円の農業生産高です。
この数字は実はべらぼうに高い。
大規模コメ農家で、10㌃収量=523Kgです。
コメ60キロが15,075円で売れたとして(平成19年平均米価)、
1haで1,314千円の売上にしかならない。
鹿児島の某農業生産法人(大規模篤農家)でも、1haで1,800千円程度です。
★売上 想定3,680千円/年
★ランニングコスト 想定1,840千円/年(原価率を5割と想定)
★利益 想定1,840千円/年
★利回り(農地買収代に対して) 想定12.52%
★投資回収(農地買収代に対して)想定7.99年
→利回り・投資回収は売電単価50円の太陽光発電事業に負けています。
【結論】
「東京近郊並みの高収益農業を行う自信があり」
かつ
「売電単価が50円にならないだろう」と予想している企業は農業へ参入した方が合理的ですが、
「東京近郊並みの高収益農業を行う自信はない」
あるいは
「売電単価は50円見込めるだろう」と予想している企業は、
農業「なんか」に参入するより、耕作放棄地を買い漁って太陽光発電始めた方が合理的、という
農水省涙目の結論が導き出せました。
さてどうする、崖っぷちの日本農業!?
というか、売電単価50円という数値が異常値であり、
大盤振る舞いし過ぎなんだなあ。 | |