このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

ブレーク33・「漂狐」
(なんでも掲示板 01年2月 投稿済)

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この話は、以前高校時代に自分の創作マンガを内輪で公表しあう集まりがあって、
そのマンガで、なぜか心に残っている短編があったので、投稿します。

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「キミは漂狐を信じるかね!」
と、いきなり変なオヤジが俺の前にしゃしゃり出てきた。
「なっ、なんですか、いきなり・・・」
突然のオヤジの出現に、俺は怒る、というより半ばあきれて、ぞんざいに答えた。

「漂狐、と言うのはなあ、宇宙に住んでいるキツネでな、そいつは
 病気にもならず、トシもとらず、永遠に宇宙をさまよって生活しているのじゃ」
「エサはどうしているのですか?」「喰わんのじゃ」
俺がもういい加減に相手にするのをやめようと思ったとき。

「ただな・・・」
オヤジが、ふっと寂しそうな表情になった。
「その漂狐、という奴はな、地球上の、誰でもいい、1人でいいんだ、
 漂狐の事を1日に1回は思い出してやる人間がいないと、死んでしまうんだ。
 俺はそういう漂狐のことを、毎日思い出してやっているんだ。
 こんな漂狐の話をしても、どうせキミは信じないだろうが・・・」
「いえ、信じますよ」思わず俺は答えてしまった。
「だって、この宇宙に、人間が思い出すことで生きていく生物がいるなんて、
 なんかロマンチックじゃないですか。ハハハ・・・」
と答えてやると、オヤジは嬉しそうに、うっすら涙を浮かべていた。

翌日、新聞に、「精神病の傾向のある男が、飛び降り自殺」という
記事が出ていて、その男の写真が出ていた。
その男の語っていた「漂狐」なる生物が宇宙に本当に実在するのか、
果たして俺にはわからない。
しかし、その男が自殺して漂狐を思い出す人間が地球上にいなくなってしまった今、
俺はその日から漂狐のことを毎日思い出すようにしている。
俺「お前漂狐を信じるか?」友人「アホか?」

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さて、あなたは漂狐を信じますか?

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