8月6日の広島忌の日に、東京電力の葛野川発電所を見学した。
葛野川、と言っても、林道ツーリングや川釣りをしなければどこにあるのか
わからないと思うが(実際、小生も知らなかった)、
「中央東線猿橋駅」といえば、あるいはおわかりいただけるかもしれない。
最近「地下空間」を特集した番組が数多く、有名どころでは
パソナの地下農場とか埼玉の地下放水路が取り上げられている。
それに匹敵するのが「地下発電所」であり、その代表例が
群馬県の神流川発電所だろう。(例の日航ジャンボの上野村にある)
揚水式発電所の発電能力としては神流川発電所が最大であり、そのため、
神流川発電所はしばしテレビに取り上げられている。
しかし、いかんせん神流川発電所は公共交通機関で行こうとすれば不便、というより
バスもないのでマイカーで行かないと見学は不可である。
その点、葛野川発電所は、猿橋駅から徒歩でいける「葛野川発電所PR館」まで
行けば、毎日見学バスツアー(無料)が出発している。(除月曜・冬季、要予約)
※正確に言えば、1日2回、朝出発と午後出発の2コースがある。
また、発電落差では、葛野川発電所の方が神流川発電所より高低差がある(世界最大)
らしいし、恐らく「見ごたえ」としては葛野川も神流川に匹敵するのでは、と
思われるので、「足回り」を考えて葛野川発電所を見学した。
施設の概要等については、東電の公式HPとか、他に見学された方の
ブログにお任せするとして、他の方が書いていないことを中心に、感想等を書きます。
★事前予約制、ということで電話すると、住所氏名電話番号を聞かれます。
で実際到着すると、紙に住所等書かされます。
やはりモノがモノなので、セキュリティーチェックしている、ということでしょうか?
★「予約制」と書いてあったので、「ひょっとして満員で断られたら・・・」と
思って事前電話したのだが、参加者は小生と家族連れ(父+子+子)だけだった。
どうも他のブログ見ていても、小学校の団体見学でもない限りは
「2名」とか「4名」とかいう日ばっかりのようである。
資金潤沢な東電だから、別に気にしないのかもしれないが、
こんなに見学者が少ない日が続いたら、見学ツアーを中止してしまわないか、心配である。
★小生は12時30分くらいに着いたのだが、もう一組も早々に着いたので、
「皆さん来られたので、始めてしまいます」ということで、定刻前に始まってしまった。
その辺、結構臨機応変なようである。
★まずはPR館で基本的な説明を受け、下部貯水ダムを見学し、そして地下発電所を
見学する、という順路。
小生の場合はバスでの案内になったが、参加者人数によっては普通乗用車での
案内の場合もあるようだ。
★下部ダムまでの道すがらの時間、バス内で「どうやって建設したか?」を
ビデオ紹介していました。
実はこの建設の過程について言及しているブログは少ないようです。
「平成5年から平成11年までの丸6年間、延べ作業員数300万人」
ということは、1日当たりではおおよそ1,000〜1,500人の
作業員が従事していた、ということですね。
★水路は、パイロット坑を下から掘り進み、本坑は逆に上から掘り下げる
(パイロット坑を拡幅する)という工法だったようです。
一方、発電所空洞は、「上から掘り下げる」工法だったようです。
「下から堀り上げる」工法だと、掘ったところが落盤するかもしれない、
とのことで、安全性を考えて「掘り下げ工法」になったようです。
★因みにゼネコンは鹿島中心のJVだったようですね。
★下部ダムの水を「訳あって放流」する場合、下流河川の水温に応じて、
ダムの「どの高さの水を放水するか」変えるとのこと。
結構、ダム内水も、水深によって温度が違うらしく、できるだけ生態系に配慮すべく
下流水温に合わせている、ということか。
因みにこのダムは冬季結氷しないそうだ(対流があるからか?)が、すぐ近くの
山梨県営多目ダムは結氷するらしい。
上部ダムが結氷するかどうかは聞き忘れたが、そもそも結氷するような冬季は、
揚水式発電を稼動させるような電力需要は発生しないのか?
意外と暖房電力需要も多い気がするが、それは冬季の朝だから、
最ピークは形成しないのか?
★因みに「訳あって」と書いたが、そもそも揚水式発電における水は、
「夜は上部ダムに行き、昼はダムに行く」という往復が基本なので、
ダム外への放水というのは水量微調整に限られる。
(前日雨が降りすぎたので、少し減らしておこう、というように)
★もとあった河川の流れを崩さないよう、ダムの脇に元の河川水系が
流れるような小さな水路が作られていた。
要は、「ダム以外の形式で大きな貯水池を作りたかったが、
現行技術上は河川にダムを作ることで貯水池代わりとせざるをえないので、
極力環境負荷を掛けないようにしている」
という感じ。
★下部ダムには魚や両生類がいるようです。
★因みに、下部ダムも発電所も無人、遠隔管理です。
なので、発電所への出入りも、係員が都度都度トンネル入り口を開錠施錠していました。
★下部ダムには、東京ドーム9杯分の水を最大で蓄えることができるそうです。
で、揚水し切ったときは、ドーム3杯分にまで減るそうです。
(逆に言えば、3杯分は発電には用いない)
★発電所への道路は、これは発電機等の搬入路にもなった訳ですが、
発電機(水車ランナー)が搬入できるサイズで作ってあるそうです。
(高さ5.5m、幅6.8m)。
又、トレーラー等の超大型車を運転する際にトラブルにならないよう、
「500m坂道(9度勾配)の後に50mフラット道」を繰り返すように道路勾配設計
しているようです。
そうしないとブレーキが磨耗したり、エンジンが過熱するんでしょう。
細かい配慮をしているな、と感心した。
因みに発電所へのトンネル5キロのうち、最初は上り勾配、途中から下り勾配だそうです。
★トンネル内は結構湧水しているらしく、排水ルートがあるようです。
★従前の揚水発電の場合、落差は500mが上限だったようです。
そうなると、折角標高差が714mあるのに「多段式」となってしまい、
一気に発電できず、効率が悪い。
この葛野川のために、落差500m超にも耐えられる発電機等を
開発したらしい。
★水車ランナーは潜水艦と同じ強度の材質だそうです。
★発電所空洞を支えるのが、1本で100トンの力を跳ね返す
「PSアンカーボルト」
これが空洞壁面に無数にあります。
(確か数千本、と言っていた)
★また、PSアンカーボルトに似ているやつで、青いもの
(名前忘れた)も、壁に埋まっています。
これは岩盤状態を図るセンサーで、24時間岩盤状態を監視しているらしい。
★現在、4号機までの計画に対して、2号機までしか出来ていません。
1号機=日立、2号機=三菱で、3・4号機は東芝。
なので、「3・4号機用のスペース」がちゃんと用意されています。
1〜4号機まで、大手プラントメーカーが仲良く分け合っているのは、
表向きの説明では「各社の技術を向上させたいため」のようだが、
談合ではないでしょうね?
★最初は4号機側から、全景を見渡します。
といっても、巨大な床があって、その床からは赤い建物(発電のコイル)が
頭を覗かしています。
印象は「細長い体育館」という感じですね。
床から天井まで、ビル4階建て、という高さ感でしたが、実は水車等は
「巨大な床の下」に埋まっており、床下部分にもビル4階建て相当の
広がり空間があります。
但し、この「巨大な床の下」部分は、何層かの床に分割されている上、
いろんな機器が設置されていたので、見晴らしは悪いです。
(何か下手な説明だな)
★小生見学時には、2号機が発電していました。1号機は発電せず。
で2号機の発電機、さらに1号機の発電機と水車を見学しました。
発電機稼動に伴う、低周波動?と妙な騒音?がこだましていました。
長年その発電機近辺にいれば、確実に健康被害を受けるなあ、という感じ。
また、山中だからでしょう、気圧がおかしいらしく、耳には違和感があります。
気温はトンネル内は寒かったですが、発電空洞内は暖かかったです。
発電機がそれなりに熱を持っていたのでしょう。
★因みに空洞断面はたまご型をしているようで、それが最も合理的形状のようです。
★水路は実は最大径8.2mあり、これは新幹線トンネルと同口径のようです。
★パネルによっては撮影禁止のパネルがありました。
空洞断面構造解説図も撮影禁止だったと思う。
★総工費3,800億円、うち8割は建築費だったそうですが、
上部ダム・下部ダムの建築費も含んでの数字だったのかどうか?
(多分含んでいると思いますが)
★電車での来場は珍しいのか、係員が親切にも中央線の時刻表を呉れた。
★これはこれから見学を考えられている方へのアドバイスだが、
どうせ見るなら「夏の午後コース」がいいのではないか。
折角見るのだから、発電機が動いている方が迫力がある。
となると、最大消費電力が見込める「夏の午後」に行けば、発電機が動いている確率が高い。
実際、ブログ見ていると、春に見学して「動いていなかった」という
日記もあったので。 |