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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ




さて、今回はジェット・リー(リー・リンチェイ)の代表作ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナシリーズである。

え?ブルース・リーが「燃えよドラゴン」でジャッキーが「酔拳」ときたんだからリンチェイならまず「少林寺」だろうって?
まぁ、順番から行けばそうかもしれないし、実際「少林寺DVD BOX」も持ってるんだけど
こっちの方が好きなんだもん。
まぁ、いずれ「少林寺シリーズ」の方はレビューします。

しかし、このワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナシリーズは全部で3作(天地黎明、天地大乱、天地争覇)
あるため、全部を事細かに解説するときついので、全体のシリーズとしてレビューしたい。

主役のリンチェイ(どうも「ジェット」ってのはしっくりこないので、こっちで呼びます)が演じているのは、
ジャッキーが「酔拳」で演じたものと同じく、中国の英雄「黄飛鴻」です。
ジャッキーはおふざけ黄飛鴻を演じたけど、リンチェイの黄飛鴻はモロ正当派
「強く」「正義感があり」「自分に厳しい」
とお堅いヒーローを演じています。

とにかくこのシリーズを通して、まぁ、リンチェイ黄飛鴻が強いこと強いこと。
負けることはおろか、まともに殴られることすら殆どありません
おそらくこれは「黄飛鴻は武術の超達人で、彼にかなう者などいなかった」という前提が
こういうヒーロー像を生み出してしまったのではないだろうか。
しかし、実はこの大前提は映画を見る側からすれば非常にマイナスに働いてしまうのである。
だってそうでしょう?始めっから勝つと思って見ていたら緊張感も何もあったもんじゃない。
ヒーローが悪者に負けそうになってこそ、観客は「がんばれ!負けるな!」と感情移入をしてくるのだ。
スーパーマンやウルトラマンだって、一旦は負けそうになるもんです
そして最後にヒーローが逆転して「やったー!!」となるのが普通であろう。

しかし、このリンチェイ黄飛鴻は殆ど負けそうになることがない。
ではどうやって、観客に緊張感を持たせていたのか。
それはズバリ「バランス」である。

この3作において非常に共通するのが「不安定な場所での戦い」である。
1作目では、ラストにイム師範と穀物工場のはしごの上で戦い
2作目では白蓮教祖と机をくみ上げた台座の上で戦い
3作目では中盤油のまかれた床で戦うし、ラストもやぐらの上で戦う
まともに地面の上で戦っている場面が非常に少ないのが分かると思う。
つまり、武術の実力で黄飛鴻を越えるキャラが出ることはなく、それだと黄飛鴻が楽勝で敵に勝ってしまうので、
黄飛鴻を不安定な場所に置き、観客の「ヒーローが危ない!」という気持ちを煽っているのだ。
でも、敵も足場が不安定なので結局黄飛鴻が勝つんだけどね。



さて、簡単に3作を紹介しておこう。
1作目「天地黎明」
中国には徐々に西洋化の波が押し寄せ、中国人を奴隷として使おうと企むアメリカ人や中国を統治しようとする
イギリス、また地元のチンピラ等も絡んで来る中、黄飛鴻が悪人を次々に倒していくというもの。
道場破りよろしく、黄飛鴻に戦いを挑むイム師範も現れ、黄飛鴻はどう戦うのか!?
と言った内容。
クンフーシーンが一番多いのはこの作品だと思う。
クンフーがみたいならこれを見ましょう

2作目「天地大乱」
世は外国人排斥運動のまっただ中。
1作目とは反対に今度は外国人が中国人に攻められている。
その中心となっているのがカルト教団の「白蓮教」
そして、そんな世の中をまっとうにしようとする中国の雄「孫文」率いる「革命派」
革命派を捉えようとしている「朝廷側」
そして何よりも人命を優先する黄飛鴻
これらが複雑に絡み合う非常に見応えのあるストーリー。
1作目よりはクンフーシーンは少ないが、アクションの切れは上がっている。
全3作の中で最も評価の高い作品
2度、3度と見ると実に念入りに作られた作品と分かる。オススメっす。

3作目「天地争覇」
父親に結婚の許しを貰いに行ったところ、獅子舞大会に巻き込まれる黄飛鴻。
(あれ?1行で済んじゃった。)
そんなわけないだろうと思うでしょう。
いや、実際に見ると細かい複線はあるにしろ、大筋はほんとにこれだけなんですよ。
2作目に比べるとどうしても見劣りしてしまいますし、ワイヤーアクションもなにか、
ひねりすぎって感じがしてしまうんですよね。
アクションを見て、「スゲー!」っていうより「んなわけないやん」っていう思いが先に来てしまうのです。
獅子舞をみるのが好きだというかたはどうぞ。(いるのか?)



中国文化における獅子舞
ちょっと書きましたが、このシリーズでは獅子舞がよく出てくるんですよね。
1作目のオープニングも獅子舞からだし、3作目では獅子舞大会がもろに話の大筋だし。
リンチェイは他の「阿羅漢」でも獅子舞やってるし、ジャッキーも「ヤングマスター」で獅子舞してます。
私はよく分からないけど、中国でこの手のシーンが上映されてる時って盛り上がってるんだろうか?
だれか知ってたら教えてほしい。

音楽
音楽が実にいいですね。
テーマソングなんて、歌詞が最高です。
「男なら自分を鍛えよ」ってとこが好きです。
BGMも良いですね。
特に2作目のラストで孫文が旗を広げるところのBGMが一番好きです。
是非聞いてみて。

☆リンチェイの体術
最後になりましたが、このシリーズの一番の魅力は間違いなくこれです。
とにかく素晴らしいの一言。
蹴り、突き、さばき、構えどれをとっても「美しい」です。
1作目の戯劇舞台の前で敵に取り囲まれ、棍を構えるリンチェイはそのたたずまいだけで、実に画になります。
ダンスで言えばジャッキーの体術は「ブレイクダンス」
リンチェイの体術は「バレエ」ってな感じでしょうか。 ついみとれてしまいます。
是非見てみて。



とまぁ、長々と解説してきましたが、このワンチャイシリーズってこれ以降いっぱい作られてるんですよ。
でもリンチェイが主役張ってるのはこの3作と外伝のワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカです。
「ワンス〜アメリカ」は見てないのでどんな作品か分かりませんが、他の香港映画サイトでの評判はあまり
よろしくないみたいなので購入する予定はいまのところないです。

ひとつくらい何か見てみようと思うなら、2作目がオススメです。
もちろん全部みても面白いですけどね!





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