このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

 

酔拳




さて、今回はジャッキーチェンの代表作「酔拳」である。

色々言いたいことはあるのだが、なにから書いて良いものか。
まず言えるのはこの作品があらゆる意味でカンフー映画の(ひいてはジャッキーの)転機になったということである。
第1回で書いた「燃えよドラゴン」が世に発表され、世界がブルースを認めだした時、ブルースは帰らぬ人となった。


このブルースの死後、香港映画界は落ち込み、ブルースのコピー作品やバッタモンがそれこそ星の数ほど上映
されたのだが殆どの作品が失敗に終わったのだ。
実はジャッキーもこの時期にブルースのコピー作品を何作か発表している。
しかし、多分に漏れず殆どヒットしなかった。


ジャッキーは「ブルースと同じ事をやったってだめだ」と思い直し、自分なりのカンフー映画を考える。
足を高く揚げず、相手を殴ったらブルースのように睨みつけるのではなく、大げさに痛がったりして
戦いの中に「笑い」の要素を足していくようにしたのだ。
こうしてできあがった映画がスマッシュヒットとなった「蛇拳(スネーキーモンキー)」である。
蛇拳のヒットによって確固たる地位を築き始めたジャッキーは次の作品で最初のスーパーヒットを飛ばすのだ。
それこそが、よりコメディーの要素を強く、しかし最後には修行の成果で殺し屋を倒すという痛快なストーリーとして
完成した「酔拳(ドランクモンキー)」である。


この作品がどれほどコメディーの要素を強くしたかというと、おそらく日本人には分かりづらいだろう。
アクションを単純に笑えるものにしたということもあるが、最も変化をつけているのは主人公の人物像なのだ。
酔拳の主人公は黄飛鴻(ウォン・フェイフォン)という人物なのだが、この黄飛鴻という人は中国においては
超が10個ついても足りないくらいの「超」有名人なのである。
黄飛鴻は実在の歴史上の人物で「強気をくじき、弱気を助けた正義の人」として今なお尊敬されている。
従って、ドラマ・映画等でも幾度と無く描かれている。
まぁ、分かり易く日本歴史上の人物に当てはめるなら
「水戸光圀並の人の良さと宮本武蔵ばりの強さを併せ持つ人物」と表すればイメージできるだろうか。
したがって酔拳以前に黄飛鴻を描いたものは皆黄飛鴻を高尚な人として描いている。(これが普通)


しかしジャッキーは、黄飛鴻の若かりし頃の物語だとして、ナンパはするは、食い逃げするは、修行はサボるは、
しまいには師匠を水瓶に沈めたりしているのである。(下手すりゃ殺人未遂じゃねーのか?)
これをさっきの日本の歴史に当てはめれば、
「水戸光圀が若い頃、女中のお尻を触りまくったり、勉強しないで昼寝ばっかりしてたり、
老中を池に落とすようなイタズラをして喜んでいた」

と言うことを映画の中で描いた。と言うことなのだ。
そんなバカな!と思うでしょう?でもそうやって描かれても面白いかもな、とも思いませんか?
つまり、それぐらい革新的なことをやったのです。


また本作は一つ一つのアクションが素晴らしくなっています。
この作品の監督はユエン・ウー・ピンという人ですが、この人最近はアクションの振り付け師として活躍しています。
つい最近でも「マトリックス」でアクション振り付けを担当してると言えば分かる人もいるでしょう。
本作品でジャッキーはアジアNO,1スターにのし上がり、次々とヒット作をとばすことになりますが、その事はいずれまた…。

さて、映画としての見所は
・一度やられた相手に酔拳と言う秘技を身につけて勝つ(一度負けるとこが良い)
・師匠とジャッキーの師弟愛(二人で酒を酌み交わすシーンによく表れている)
・敵役の殺し屋ホアンチョンリーの足技(とにかくスゴイ!華麗の一言!)
等です。
この頃のジャッキー映画では修行のシーンがよく描かれており(そして最後に勝つ)、
「がんばれば夢はかなうんだよ」
というジャッキーのメッセージが込められているように思えてなりません。
演出面でも今改めて見直すと、ホアンチョンリーの肩に乗っかって喉を攻める時にクルミ割りの映像を差し込む等、
監督の細かな演出が感じることができます。


クンフー映画を毛嫌いしてた人、昔好きだったけどもう卒業したよと言う人。
どちらにも今一度見て欲しい映画です。
きっと純粋に「俺も明日からがんばろう!」と前向きな気持ちになれること請け合いです!


※ 別のサイトの情報で見たのだが、敵役のホアンチョンリーはテコンドーやってたそうです。
   道理で足技すげーよなー( ・_・;)



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