このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

名馬・あの瞬間

平成9年「帝王賞」
優勝馬コンサートボーイ

 今までたくさんの競馬のレースを見てきましたが、その中で 「特に思い出に残るベストレースを1つ選べ」と言われたら、迷わず答えるのが 今回紹介する平成9年の「帝王賞」です。

 とにかく、応援している馬と騎手が優勝した!というだけでも印象的なの ですが、それ以上に地方競馬ファンとしては初めての「統一G1」で、 中央の強豪馬を相手に地元南関東の馬がワンツーフィニッシュを決めたというのも 強烈なインパクトでした。

 平成9年という年は、完全に本格派したダートの中央と地方の交流重賞競走に、 統一したグレードを導入しようということで、「統一グレード」が導入されました。

 その中で、初めて「統一G1」として行われたのが、春のダート王決定戦 として定着していた「帝王賞」でした。

 毎年、ダートの交流重賞では、中央の馬が圧倒的に強いのですが、この年は 特に中央勢が優勢で、この「帝王賞」も、バトルライン、シンコウウィンディ の中央勢が人気になりました。正直、私もここも中央に持っていかれるなぁ・・・ という気持ちが大きかったです。それくらい地方勢は劣勢なムードでした。

 しかし、密かに地元の馬に期待していました。期待したのは、コンサートボーイ とアブクマポーロの2頭です。コンサートボーイは、交流重賞こそ勝ってませんが、 地元の重賞戦線で常に上位争いをしていた馬で、得意の2000m戦、 さらに相手なりに走る馬ということで、何とか上位食い込みをと、 アブクマポーロは、若い頃は体に弱いところがあって出世が遅れたのですが、 ここに来て完全に本格派し、前走の「大井記念」では、初めての重賞挑戦にも 関わらずワンサイドの圧勝劇を演じ、これならG1でも通用するかもしれないぞ、 と思い、上手く行けばどっちかが中央勢に一泡吹かせるかなぁって思っていました。

 しかも、この2頭に乗っていたのが的場文男(コンサートボーイ)、 石崎隆之(アブクマポーロ)という南関東を代表する名騎手の2人。 対する中央の2強のバトルライン、シンコウウィンディの2頭にも、 中央を代表する武豊、岡部幸雄の両名手が騎乗ということで、この4人で 叩き合ったら凄いことになるなぁ・・・なんて、そんな想像もしちゃいました。

 人気は、結局バトルラインが1番人気で、以下シンコウウインディ、 アブクマポーロ、コンサートボーイと続きました。ただ、前走の「かしわ記念」 の圧勝劇からバトルラインが断然な感じになり、南関東の2騎はあくまで 穴って感じでした。

 レースの方は、これといった逃げ馬がいないということで、バトルライン がスローで逃げる展開。これまで、武騎手は大井では一度も重賞の勝利は なく、「大井で勝てない武豊」などと言われているくらい、名手としては 不思議と相性の悪いコースだったのですが、このバトルラインならば、 それまでの悪いイメージを払拭して勝てるのではと思われました。しかも、 一番不利を受けないという絶好のマイペースでの逃げ。

 2番手に一昨年の覇者のライブリマウントがつけましたが、この馬は 海外遠征後絶不調に陥り今回は完全に伏兵な存在。そのライブリマウントの 後ろにコンサートボーイがつけました。逃げ馬のすぐ後ろのインは、 大井ではベストポジションと言われるポジションで、ここに上手くつけるのが さすが的場騎手といった感じ。その後ろに、中央の強豪のキョウトシチー、 キソジゴールド、シンコウウィンディといったところがつけ、アブクマポーロ はさらにその後ろ。まだG1では荷が重いのかなって感じでした。

 レースは3コーナー過ぎから、バトルラインが気持ちよく逃げるのに対し、 追ってくる中央勢がどんどん下がっていく展開に・・・。しかし、そんな中でバトルラインを 追いあげたのが、コンサートボーイとアブクマポーロでした。

 勝負は最後の直線に。ここでバトルラインがもう一度スパートして 後続を引き離しにかかりますが、ずっとインの2番手で待機していた コンサートボーイがスパートすると、もういつでもバトルラインは捕らえられる ような手応えに。

 こうなると、コンサートボーイの敵は、外から来るアブクマポーロ。 こちらも上手くインで脚を貯めていたこともあり、石崎騎手が外に出して追うと、 物凄い反応で伸び、コンサートボーイに襲い掛かります。

 そして残り100m。こっからは、バトルライン、コンサートボーイ、 アブクマポーロの3頭が叩きあいますが、元々距離に不安のあるバトルライン は、お釣りがなくあっさりと脱落。最後は新鋭アブクマポーロの猛追を 振り切って、コンサートボーイが優勝!見事なG1初優勝でした。

 アブクマポーロは、初めてのG1でも全然関係無しの内容で、その後の 大活躍を感じさせる内容でした。

 逆に、バトルラインは、G1になると足りない馬なんだってことが はっきりとわかってしまったような内容で、実際最後までG1には縁が ないままでした。

 それにしても、最後の的場、石崎、武の名手3人による追い比べは、 本当に見応えのある場面で、大井競馬史上に残る名勝負だったと今でも 思います。

 とにかく、中央馬相手に地方馬がG1を勝った!それだけでも大興奮 だったのに、ずっと応援してきたコンサートボーイが優勝したってことで、 余計嬉しかったです。あまりに嬉しかったもんで、このレースの写真が 載った普段は買わない地方競馬の機関紙「ハロン」を迷わずに買ってしまい ました。もちろん今でも保存してあります。それから、MXテレビでの 競馬中継はもちろんですが、このレースの結果を伝えたグリーンチャンネル の「全国競馬便り」も今でもビデオに保存してあります。それくらい嬉しかった 瞬間でしたね。とにかく、当時地方馬が中央馬相手にG1を勝つなんて ことはほとんど考えられなかった時代なので、余計思い入れが強かったん ですね。

 コンサートボーイは、北海道でデビューした後、3歳時に南関東に転厩。 3歳クラシック3冠戦では、全部2着という惜しい競馬。しかも、その 全部の勝ち馬が違うというのもおもしろく、惜しいところで勝てない馬 という印象を残してくれました。

 そんなコンサートボーイに訪れた転機は、石崎騎手との出会いでした。 古馬になっても相変わらず勝ち切れない競馬が続いたのですが、石崎騎手と コンビを組むようになると、それまで先行してゴール前で一息足りない競馬 だったのが、思い切った後方待機策からの一気の追い込みへと脚質変換。 すると、それまでのジリ脚が嘘かのような物凄い決め手を見せて重賞3連勝。 これは完全に軌道に乗ったな!ということで、期待された「帝王賞」では、 後方のまま全く伸びてこずに惨敗・・・。(この時は佐藤隆騎手が鞍上)

 その後、石崎騎手の神通力も消えたのか、再び勝ちきれないレースが続く コンサートボーイ。そんな馬に2度目の転機となったのが的場騎手との 出会いでした。ホクトベガが最後に勝ったレースとしても思い出深い 平成9年の「川崎記念」。この時初めて的場騎手と組んだコンサートボーイ は、今までの追い込み戦法から一転して好位追走型へと脚質変換。 結果ホクトベガには敵わなかったものの、2着のキョウトシチーとは差の無い 3着に入り、的場が乗れば前に行っても勝てるんじゃないか、って思わせる ような好走でした。

 しかし、的場騎手とのコンビは1回限りで、再び石崎騎手が乗った次走は 敗退。内田博幸騎手に乗り替わった「マイルグランプリ」では、久々に 追い込みが決まって勝利も、その次の「かしわ記念」では後方から追い上げた だけの3着どまりで、正直物足りない競馬でした。

 そして「帝王賞」。枠順が発表されたとき、コンサートボーイに的場騎手が 乗るというので、「川崎記念」の好内容からひょっとしたら!と思いました。 的場なら前に行っても勝てるんじゃないか、その予想は見事に的中! 元来、3歳時には先行していた馬なので、先行力はあるはずなのですが、 ゴール前でのもう一伸びが無かったのを的場騎手が見事に踏ん張らせての 勝利でした。

 ただ、その後もそこそこの活躍はしてくれましたが、中央との交流重賞 での勝利は無し。翌年の「東京大賞典」では、3着に入る健闘を見せましたが、 この頃になると時代は完全にアブクマポーロの時代で、「帝王賞」の再現は ならずに完敗な内容でした。

 それでも、初めての「統一G1」での勝利は決して褪せることはないです。 それぐらい強烈なインパクトを残したレースですし、内容的にも3頭の ゴール前での叩き合いは非常に見応えのある一戦でした。

 ちなみに、この時のコンサートボーイは3枠3番での出走でした。 赤い勝負服が印象的な的場騎手が、赤い帽子の3枠に入ったときは、 何か不思議と勝ちそうな予感がするのですが、このときは見事に当たり ましたね!

 そんなわけで、今回は「私のベストレース」でもある平成9年の「帝王賞」 の紹介でした。

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