このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

名馬・あの瞬間

平成4年「菊花賞」
優勝馬ライスシャワー

 今年の「菊花賞」では、ディープインパクトのクラシック「三冠」が成るのか どうかで、物凄い注目を集めていますが、今回紹介する平成4年の「菊花賞」も、 今年と同じように三冠馬が誕生するのかどうかで、本当に盛り上がりました。

 その馬の名前はミホノブルボン。

 ミホノブルボンもディープインパクトも、「皐月賞」「ダービー」まで、一度も 負けることなく勝ち進み、さらに秋初戦も完勝で迎えるというところまで、 本当によく似ています。

 ただ、この2頭を比べた場合、大きく違うのは、脚質です。スタートに難が あるディープの場合は、常に後ろからの競馬になってしまいますが、ブルボンの 場合は、ずっと逃げてスピードの圧倒的な違いで押し切るという競馬をして きました。

 なので、ディープの場合が、距離が延びれば延びるほど勝つ公算が大きいだろうと 言われるのに対し、ブルボンの場合は距離延長がずっと不安視されていました。

 それが、1600mの「朝日杯」は勝てたけど、1800mの「スプリングステークス」 は無理だろう、と言われていたのが圧勝、2000mに延びる「皐月賞」は どうなのか?と言われていたけど、ここも圧勝、そしていくらなんでも2400m の「ダービー」はダメだろうと思われていたにもかかわらず、後続を全く寄せ付けずに 4馬身差の大圧勝。

 となると、もう能力が絶対的に違うから、さらに距離が延びて3000mに なる「菊花賞」でも、逃げ切ってしまうだろう、と直前になるとそういう声が 多く、昭和59年のシンボリルドルフ以来8年ぶりの3冠馬達成への期待も込めて、 単勝の人気は1.5倍と断然の1番人気でした。

 ただ、私は、元々2400mの「ダービー」までは勝つけど、3000mの「菊花賞」は 負けるんじゃないかなって何となく思ってました。

 それで、負かすとしたらどの馬なのか?と言われても全くピンと来る馬はいなかった のですが、どうしても、逃げずに2番手に控えて競馬した「朝日杯」で、上手く折り合いが 付かずに大苦戦したことや、前にいく分だけ目標にされるという展開面での 不利があったから、その辺で今までみたいな強さは見られないんじゃないかと 思い、三冠達成は五分五分かなぁって見ていました。

 ブルボンに続く2番人気にはライスシャワーが推されました。 「ダービー」で2着、直前の「京都新聞杯」でもブルボンの2着ということで、 ブルボンの次に強いのはこの馬だろうという感じだったのですが、過去の競馬を 見る限り、2400mまでならブルボンには到底敵わないだろうという感じも あって、2番人気ですが7倍以上つくオッズでした。

 以下、3番人気にマチカネタンホイザ、4番人気にスーパーソブリン、 私が密かに期待していたヤマニンミラクルは5番人気でした。

 レースの方は、ブルボンが今までと同じように好スタートを切り、スタート直後に は楽に先頭に立つ展開。

 ところが、ここからもう一頭の逃げ馬のキョウエイボーガンが無理矢理かわして いってハナを奪い返す展開に。この馬は、「中日スポーツ賞4歳ステークス」 「神戸新聞杯」を逃げて連勝してきた夏の上がり馬なのですが、ブルボンと初対戦 となった「京都新聞杯」では、控えたのが裏目に出て、4コーナーを迎える前に 失速してしまうという大惨敗。なもんで、陣営側は今回はなにがなんでも逃げてやる と逃げ宣言を出していたのですが、その通りの展開に。

 これで、3歳になってからは初めて番手の競馬になってしまったブルボン。 一応、押えは効いたのですが、それでもかなり行きたがる素振りを見せ、折り合いは 十分ではない感じ。2周目に入る頃には、舌を出す場面もあり、やっぱり自分の リズムで走っているという感じじゃない、まずい雰囲気に・・・。

 そして勝負どころの2周目の4コーナー。

 逃げたキョウエイボーガンは、坂の下りで早々と失速してしまい、まだ600m もあるうちから、早くもブルボンが先頭に立つ展開。

 4コーナーを先頭で回るのは、ブルボンのいつもの勝ちパターンではあったのですが、 いつもはそこまで逃げていて、この辺で一回引きつけてから引き離すという競馬 だったのが、今日は後ろの馬を引っ張るような感じで先頭に立ってしまう展開。

 そのせいか、最後の直線では、残り200mくらいまではいつもと一緒で 後ろを離していたのですが、残り100mで、内からマチカネタンホイザ、外から ライスシャワーの2頭に襲い掛かられ、あっという間に呑み込まれてしまうことに。

 ここから最後の100mは、3頭の激しい叩き合い。

 その中から抜け出したのはライスシャワー。 見事なまでの末脚で、真っ先にゴールイン!と同時に、クラシック最後の1冠を 手にしました。

 ブルボンは、一旦はマチカネタンホイザにもかわされそうになるのですが、 最後の最後でG1馬の意地を見せてマチカネタンホイザを振り切り2着は死守。 しかし、シンボリルドルフ以来の三冠達成はなりませんでした。

 結局、4着に入ったメイキングテシオは、この3頭からは7馬身も離された 後ろで入線しており、前を行った3頭がいかに強かったのかを物語ることに なるのですが、やっぱりブルボンは3000mだとそれまでの距離とは同じような 競馬はできなかったなぁと思い、距離に対する壁というものをつくづくと実感 することになりました。

 ちなみに、ライスシャワーの勝ち時計の3分5秒0は、ホリスキーの出した レコードを10年ぶりに更新するレコードでした。このレコードタイムは、 翌年以降3年続けて更新されることになるのですが、その翌年以降は 物凄い時計の出る馬場になっていたことを考えると、今でも「菊花賞」で一番 速い競馬をしたのはライスシャワーだと思っています。

 三冠が成らなかったミホノブルボンは、この後は故障で休養してしまい、 そのまま一度も復帰することなく引退・・・。もう一度、得意の2000m前後で、 その圧倒的なスピードを見たかったなぁと今でも残念です・・・。

 勝ったライスシャワーの方は、翌年の春の「天皇賞」、さらに2年後の春の 「天皇賞」も勝ち、3000m以上の競馬はG1ばっかで3戦3勝と負けしらず。 本当に小さな馬にもかかわらず、長距離戦で炎のように燃え尽きて勝つことから、 「根性の塊」といわれるくらいの名ステイヤーでした。

 そして、6歳の春、京都競馬場で行われた「宝塚記念」のレース中に故障して しまい、そのまま安楽死処分となってしまいました・・・。初めてG1を勝ったのが 京都、2度目のG1も京都、3度目のG1も京都で、最後のレースも京都競馬場・・・。 本当に京都競馬場に縁のある馬でしたね。

 ちなみに、この「菊花賞」では、ミホノブルボンが三冠を達成した場合に、 さらに翌年の春の「天皇賞」では、このレース3連覇のかかっていたメジロマックイーンが 3連覇を達成した場合に、京都競馬場に、「おめでとう!」のアドバルーンが 打ち上げられる予定だったらしいのですが、その2つの計画を見事にぶち壊した ことから、「クラッシャー!」なんて言われ方もしたりしました。

 でも、逆に言うと、3000m以上の距離は、俺の領域だ!とばかりに、力を 見せつけたわけで、今でも3000m以上ならブルボンやマックイーンよりも 強かったんだなぁって素直に思ってます。

 そういうわけで、ミホノブルボンは、ライスシャワーという長距離のスペシャリスト の前に三冠達成が成らなかったのですが、ディープインパクトの方は、果たして 三冠が成るのかどうか?今から本当に楽しみですね!ライスシャワーみたいな 馬は、今年はいるのか? 

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