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名馬・あの瞬間平成13年「天皇賞」 |
かつて「天皇賞」は、内国産馬限定のG1競走でした。 (しかも、セン馬は出走不可)それが、平成13年から外国産馬にも開放ることに なりました。(それ以前にも、大昔は外国産馬の出走ができる時代も あったのですが・・・) 記念すべき、外国産馬開放元年の秋の「天皇賞」。ただ、この時は 出走できる外国産馬は出走頭数に関わらず2頭だけでした。 そして、その2頭を決めるのは、 過去1年間の獲得賞金順ということで、この「2頭」という 枠を巡って物凄いドラマがあった年でした。 レースの2週間前。「天皇賞」に出走を希望して登録した外国産馬は 4頭いました。アグネスデジタル、エイシンプレストン、クロフネ、 メイショウドトウです。 4頭ともG1ホース。クロフネ以外の3頭は、この秋に重賞を勝っている 馬で、クロフネも春にG1を勝ったばかりの期待の3歳馬ということで、 気持ち的にはどの馬も出走させたいし、出てくれば皆当然の如く 有力馬でした。 この4頭の登録馬発表時の賞金獲得順はというと、1.メイショウドトウ、 2.クロフネ、3.アグネスデジタル、4.エイシンプレストンという 順番でした。 ということで、この時点では、メイショウドトウとクロフネの2頭が 出走枠に入っていたのですが、登録発表の翌日、盛岡で行われたG1 「マイルチャンピオンシップ南部杯」でアグネスデジタルが見事に優勝。 これで、2番目と3番目が入れ替わり、アグネスデジタルが逆転で 出走枠に滑り込みました。 そしてレースの週。メイショウドトウ、アグネスデジタルの2頭は 共にいたって順調だったため、クロフネ、エイシンプレストンの2頭は 結局除外されることに。 ここで、「天皇賞」に出走できなかったクロフネは、「天皇賞」の 前日に行われたダートの重賞「武蔵野ステークス」に出走。これが、まさに日本競馬史上 に残る圧勝劇となり、ファンはビックリしたのです。 となると、このクロフネが、もし「天皇賞」に出ていたら、芝とダートの 違いはあるとはいえ、芝でも「NHKマイルカップ」を勝ってるG1ホース だしいい競馬をするんだろうな・・・という確信めいた期待が出てきます。 そうなると、クロフネを差し置いて出走にこぎつけた2頭には、是非とも 何でクロフネが出られないのにお前らが出ていたんだ?と言われないためにも 説得力のあるレースを期待したいところでした。 この2頭は、共にこの年にG1を勝ってるし、前走は共に強い競馬で 完勝。普通に走ればまず勝ち負けは堅いところなのですが・・・。 人気になったのは王者テイエムオペラオーでした。 この前年は、春に「天皇賞」「宝塚記念」、秋にも「天皇賞」 「ジャパンカップ」「有馬記念」と、1年間に5回G1を走って、その 全てに完勝という圧倒的な強さ。そして、この年も春の「天皇賞」を 制しており、この「天皇賞」には、史上初の「天皇賞4連覇」がかかって いました。 加えて、雨が降る天候。オペラオーは、ただでさえ強いのに、道悪は 超のつくほどの鬼なので、まさに「鬼に金棒」状態。唯一の死角といえば、 前走の「京都大賞典」で、休み明けだったとはいえ、ステイゴールドに 先着されているということくらい。それでも、その競馬も道中で不利があっての ものだっただけに、まともに走れば今度も勝つだろうといわれてました。 続く2番人気に推されたのがメイショウドトウ。 ずっと、オペラオーと同じレースに出続け、常に2着と敗戦続きの 名脇役だったのですが、この年の「宝塚記念」では、6度目の対決に して初めてオペラオーを倒して悲願のG1タイトルを奪取。この 「天皇賞」では、G1レース2連勝がかかっていました。 そして3番人気には、前走でオペラオーに先着(結果は1位入線も失格) したステイゴールドが続き、アグネスデジタルは、久々の芝が嫌われたのか、 4番人気でしたが、意外な低人気でした。 レースの方は、このレースを最後に引退を表明している逃げ馬の サイレントハンターが逃げ宣言をしていたのですが・・・、痛恨の出遅れ。 なもんで、行く予定の馬が行かずに、他の馬が完全に戸惑う展開に・・・。 一体何が行くんだ?という状況の中から、逃げたのは何とメイショウドトウ。 他に行く馬がいないので、仕方無しにという感じではあったのですが、 できればオペラオーをマークするような形で競馬のしたかったドトウと しては完全に想定外の展開に・・・。 結局、出遅れたサイレントハンターは、そのまま後方からの追走と なり、レースは完全に淡々と進むことに。 そして4コーナー。逃げるドトウが一旦後続を引きつけてから、もう一度 スパートすると、直線では「宝塚記念」を再現するような積極的な 先行策でリード。 しかし、同じ手は2度は食わないとばかりに、オペラオーが満を持して スパートすると、直線の坂上ではあっさりとドトウを捕らえ、そのまま 完全に抜け出して独走態勢に入ったかにみえました。 しかししかし、ドラマはここから起こります。 何と、一頭だけ大外にいったアグネスデジタルが、物凄い脚で追い込んで 来たのです! ゴール前、一旦は完全に先頭に立ってソラを使っていたオペラオーは、 大きく離れた外から追い込んできたアグネスデジタルの強襲に対応できず、 結局アグネスが差し切りG1・3勝目のゴールイン! 王者オペラオーは、強い競馬をしたものの、展開の差で2着と惜敗・・・。 予定外の逃げとなってしまったメイショウドトウは、それでも3着には 踏ん張り、強いところを見せてくれました。 終わってみたら、外国産馬2頭は1着と3着。特に、クロフネを 差し置いて出走したアグネスデジタルが、王者オペラオーを倒して 優勝したということで、本当にホッとしたという気持ちで一杯に なりました。これなら、クロフネ陣営も納得かなと。 それにしても、芝からダートに行ったクロフネが圧勝して、 逆にダートから芝に来たアグネスデジタルも快勝ということで、 この「天皇賞」での「2枠」を巡る争いは、予想外ではありましたが、 予想以上の結果を出すことになりました。そういった意味で、本当に 印象に残る「天皇賞」ですね。 その後、ルールが変わり、外国産馬の出走枠は、フルゲートに満たない 場合には最大4頭まで出走できるようになり、今では外国産馬だけでなく、 外国調教馬にも開放されることになりました。 もし、この時にクロフネとエイシンプレストンが出走していれば、 もっと楽しい「天皇賞」になっていたんだろうな・・・。 という気持ちは今でも持っているのですが、「災い転じて福となる」 じゃないですけど、「天皇賞」に出られなかったためにクロフネの 「武蔵野ステークス」の大圧勝があったわけで、自分的には今まで 競馬を見てきた中でも特に印象に残るレースの1つがこのクロフネの 勝った「武蔵野ステークス」なので、そういった面でクロフネを ダートで走らせるきっかけになったこの「天皇賞」への出走を巡る ドラマも印象に残ってますね。 アグネスデジタルは、この後「香港カップ」「フェブラリーステークス」 とG1を連勝して、とうとう4戦連続G1出走で4連勝という史上初の 快挙をやってのけました。しかも、そのG1レースというのが、芝で あったりダートであったり、海外であったり地方であったりと、 馬場・主催者、国を問わずに勝ちまくったもんで、本当に凄い馬でしたね。 さらに、3歳時に「マイルチャンピオンシップ」、4歳時に 「マイルチャンピオンシップ南部杯」「天皇賞」「香港カップ」、 5歳時には「フェブラリーステークス」、そして6歳になって「安田記念」と 4年連続でG1レースを勝つという大記録も達成。この記録は、 この原稿を書いてる平成17年10月末現在では、他にはメジロマックイーン とアドマイヤドンしか達成していない記録なので、本当に息の長い 活躍をしたんだなということを素直に表していますね。 そういうわけで、外国産馬がその少ない出走枠を巡ってドラマを繰り広げた、 平成13年の秋の「天皇賞」の紹介でした。 |
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