このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

名馬・あの瞬間

平成6年「エリザベス女王杯」
優勝馬ヒシアマゾン

 強烈に印象に残っているレースというのは、応援している馬が勝って嬉しかったレース、 勝った馬があまりにも強かったのでビックリしたレース、応援していた馬が力を発揮できずに負けて しまって悔しかったレースといったところがほとんどだと思いますが、中には、 レースの展開があまりにも凄すぎて印象に残っているレースというのもあります。  今回は、そんな展開が強烈で印象に残っているレースということで、平成6年の 「エリザベス女王杯」を紹介します。

 この頃は、「エリザベス女王杯」は、3歳牝馬限定のG1レースでした。春の 「桜花賞」「オークス」とならぶ3冠レースの1つだったのですが、春の2つの G1と違って、このレースには外国産馬の出走も認められていました。 (今では、「桜花賞」「オークス」にも、外国産馬の出走が認められていますが。)

 注目は、ヒシアマゾン。圧倒的な強さで2歳王者になったあと、3歳の春は 外国産馬ゆえにクラシック競走に出られず、裏街道で牡馬相手に重賞を勝ちまくり。 その勝ち方から、同世代の牝馬相手ならまず負けないだろうといわれ、3冠最後の 「エリザベス女王杯」で、真の3歳女王となるべく出走してきました。

 対する、国産馬組は、桜花賞馬のオグリローマン、オークス馬のチョウカイキャロル を筆頭に、ゴールデンジャック、アグネスパレード、メモリージャスパーといった G1級の脚を持っている伏兵陣も揃い、「女王」を決めるのにふさわしい好メンバー が揃いました。

 人気の方は、もちろんヒシアマゾンが断然で1番人気。以下、チョウカイキャロル、 ゴールデンジャック、アグネスパレード、オグリローマンと続きました。

 さて、展開予想です。

 このレース、逃げ馬が2頭いました。1頭は、トライアルの「サファイヤステークス」で 鮮やかに逃げ切ったテンザンユタカ。この馬は、抑えて逃げるタイプではなく、とにかく 行くだけいって押し切るタイプなので、できれば逃げて主導権を握りたいところ。

 そしてもう1頭、バースルートも参戦。前走の条件戦では、物凄い大逃げを打ちながらも、 そのまんま逃げ切ってしまったという快速ぶりで、こちらも前走の再現を狙って 大逃げを打ちたいところでした。

 となると、テンザンユタカとバースルート、どちらが逃げるのか?まずは、 そこに注目が集まりました。

 注目のスタート。逃げ馬2頭は共に好スタート。そして、共に行くのは自分だと ばかりに、逃げの体勢に入りますが、バースルートの方が何が何でも行くんだ!と ばかりに、強引に先頭に立つ展開。

 そして、道中はほとんど抑えることなく逃げたもんだから、物凄いハイペースの 大逃げになりました。

 ハナを譲ってしまった感じのテンザンユタカですが、スタートで逃げる体勢に 入ったせいか、こちらもかなり気合の入った感じで、2番手ではありますが、 後続に10馬身近く差をつける大逃げみたいな形。しかし、それでも、前を行く バースルートは遥か前方にいるという競馬で、先頭のバースルートから7馬身後ろに テンザンユタカがいて、さらにそこから10馬身離れた後ろに後続馬群がいると いう感じの超縦長の競馬となりました。

 この前2頭の大逃げに場内は騒然。テレビ中継の画面では、全体馬群を映している 上段の画面の方は、あまりにも展開が長すぎるため、各馬の姿がめちゃめちゃ 小さくなってしまい、どこにどの馬がいるのかが全くわからない状態。(前の2頭以外)

 そんな究極のハイペースの中、有力馬のほとんどは後方待機策。

 そして、4コーナー過ぎ。後続馬群が一気に差を詰めてきますが、それでも、 バースルートがまだ後ろを離した感じで先頭。2番手もテンザンユタカで、 最終コーナーを回りますが・・・、

 しかし、さすがにハイペースが応えて、直線を向くと前を行っていた2頭は完全に 脚が上がってしまい後続馬群に一気に呑み込まれてしまいます。

 変わって先頭に立ったのがアグネスパレード。

 実は、この馬が私の本命馬でした。春は「チューリップ賞」を勝ったものの、 「桜花賞」は外枠に泣いて8着、「オークス」は外からよく伸びたものの3着と、 後ちょっとのところでG1タイトルに手が届かなかったのですが、3冠最後のチャンスに ここぞとばかりに、上手いタイミングで先頭に立ち、これは行ったんじゃないか! って、正直、ちょっと夢を見ました。

 しかし、ここから、さらに凄い展開が待っていました。

 なんと、大外からヒシアマゾンとチョウカイキャロルの女王2頭が併せ馬で飛んで 来たのです!

 アグネスパレードは、内をすくって先頭に立ったこともあって、抜け出したときには、 一頭だけでした。そこへ、大外から凄い勢いで強い2頭が飛んできたものだから、 外に併せに行ったときには完全に脚色が違って、並ぶ間もなくかわされてしまい 3位転落・・・。

 しかし、アグネスもここから踏ん張ってもう一度差し返すという根性を見せ、 ゴール前では、3頭が火の出るような叩き合い。

 結果、アグネスパレードは、クビ差だけ遅れてしまい、3着も、ヒシアマゾンと チョウカイキャロルは全く並んだ体勢でゴールイン。

 ゴール100m前では、ハナだけヒシアマゾンの方が前に出ている感じだったのですが、 ゴールした瞬間は、ヒシアマゾンの頭が上がったときに、チョウカイキャロルの 頭が下がった体勢だったから、ちょうど両馬の鼻の先端がゴール線上という、 ぱっと見ただけでは、全くわからない展開に・・・。

 長い写真判定の結果、勝ったのはヒシアマゾン。チョウカイキャロルとの差は、 判定写真の目盛り1つ分だけだったそうで、推定3cmの差だったそうです。

 ま、結果はともかく、逃げ馬2頭が見せた超大逃げに、ゴール前での3頭の激しい 叩き合いと、まさに見ていて凄い楽しいレース。展開がおもしろかった、という ことでは、今まで見てきた中でも最高のレースの1つだと思っています。 そういった意味で、本当に印象に残る「エリザベス女王杯」でした。

 ちなみに、この時の勝ち時計の2分24秒3は、2400mで行われたときの 「エリザベス女王杯」のレースレコードでした。

 勝ったヒシアマゾンは、2歳時に「阪神3歳牝馬ステークス」(当時)を 圧勝して2歳王者になり、3歳になってからも、クラシックに出れない無念を 晴らすべく重賞を勝ちまくり、この「エリザベス女王杯」で重賞6連勝を達成しました。

 ただ、古馬になってからは、気性難が災いしたのか、意外に振るわず、 後に古馬にも開放された「エリザベス女王杯」にも出走したのですが、ゲートで 暴れて外枠発走になったうえに、他馬の進路を妨害して2位入線も降着に なるといった失態も演じてしまい、実力の割にG1勝ちの少ない馬となってしまった 感じはしました。

 それでも、4歳秋には、「ジャパンカップ」で、見事な追い込みを決めて2着と 大健闘。日本の歴代牝馬の中でも、間違いなくトップクラスの1頭だと思います。

戻る

このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください