このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

名馬・あの瞬間

平成10年「東京大賞典」
優勝馬アブクマポーロ

 1年間に渡って書き続けてきた「名馬あの瞬間」も、今回がいよいよ最終回です。

 このコーナーは、毎週、その週に行われる重賞競走の中から、特に思い出に残る レースを1つ取り上げて紹介するという形式でやってきたのですが、同じ週に重賞が 幾つかある場合は、G1レースを優先に、さらに紹介するレースの勝ち馬が、既に引退 した馬なレースだけ取り上げて書いてきましたので、本当はまだまだ紹介したい レースがいっぱいあるのですが、その辺は、後日、別企画の中で紹介していこうと 思っています。

 さあ、最後です。最後は、当然「東京大賞典」から、アブクマポーロが勝った 平成10年のレースを振り返ってみたいと思います。

 地方競馬史上、最も強かった馬は?と聞かれたら、私は即答でアブクマポーロ!って 答えます。それくらい、この馬は強かったと思うし、その中でも特に強さを見せて くれたのが、この「東京大賞典」だったと思います。

 そして、この「東京大賞典」では、アブクマポーロの圧勝の引き立て役になって しまいましたが、2着に岩手のメイセイオペラ、3着に大井のコンサートボーイと、 地方競馬に所属していながら、交流G1を勝った地方の名馬が続いて入り、中央の 強豪を全く寄せ付けずに上位独占したのも印象に残っています。この年のダート路線は、 本当に地方馬が優勢な年でしたね。

 さて、レースの方も振り返ってみます。

 1番人気は、当然、王者アブクマポーロ。この年の初めの「川崎記念」を勝って、 G1ホースの仲間入りを果たすと、その後、「帝王賞」も圧勝。盛岡に遠征した 「マイルCS南部杯」こそ、3着に負けてしまいましたが、それ以外のレースは 全て圧勝という成績で、まともに走れば、この馬に勝てる馬はいないだろうと 見られていました。

 続く2番人気は、メイセイオペラ。「川崎記念」「帝王賞」は、アブクマポーロに 全く歯が立たなかったものの、「南部杯」では、上手いペースの逃げで、初めて アブクマポーロに先着しての優勝。ポーロさえいなければ、この馬が1番強いだろうと いうのが大方の見解で、順当な2番人気でした。

 以下、「フェブラリーステークス」の勝ち馬のグルメフロンティアが3番人気で続き、 エムアイブラン、コンサートボーイ、キャニオンロマンと人気が続きました。

 レースは、スタートでグルメフロンティアが大きく出遅れるアクシデント。そんな 中で、先手を奪ったのは人気薄のサントス。この馬が、玉砕戦法とばかりに、とにかく 大逃げを打つ展開に。

 そんな中、王者アブクマポーロは、悠々と自分のポジションの中段のインで待機。

 サントスが大逃げを打ってはいるものの、全体のペースとしては、そうも速くはない 流れの中、レースが動いたのは3コーナー過ぎ。

 ここで、メイセイオペラが満を持して動くと、コンサートボーイ、アブクマポーロ といった地方の有力どころも揃って動き、いよいよ最後の直線に。

 直線に入ると、早めに先頭に立ったのはメイセイオペラ。これは、早め先頭から 押し切るというこの馬の勝ちパターン。

 その外から、馬体を併せてきたのがコンサートボーイ。この馬は、叩き合いになると 強い馬なので、これも願ってもない展開に。

 そんな2頭の激しい叩き合いの中、内から一気に2頭をまとめてかわしていく馬がいました。 アブクマポーロです!

 アブクマポーロは、直線に入るまで、終始インで我慢するという戦法で、直線に 入ると、上手く内側の空いたスペースに突っ込んで先頭に立ち、後は、他の馬とは 力が違うよとばかりに完全に独走態勢に。

 結局、終わってみたら、激しい2着争いを尻目に、2着に2馬身半の差をつけての 圧勝でゴールイン。まともに走れば、一番強いのは自分だということを、見事に証明 してくれました。

 激しかった2着争いは、メイセイオペラがコンサートボーイを振り切って2着を 死守。No.2の座はしっかりと守りました。

 中央勢の最先着は、エムアイブランの4着。この馬的には、十分に力を出し切っての 内容だっただけに、余計、上位を独占した地方馬3頭の強さを引き立たせてくれましたね。

 さて、この後の話です。アブクマポーロは、地方馬初のドバイ遠征という計画もあり、 実際、「ドバイワールドカップ」に登録を済ませ、選出もされたのですが、残念ながら 辞退してしまい、出走はなりませんでした。

 そして、さらなる王者を目指した矢先に、故障で突然の引退。ラストランとなった 「ダイオライト記念」でも、他馬との圧倒的な差を見せつけての優勝だっただけに、 本当に残念でしたね・・・。

 ちょうどこの頃、「東京大賞典」で2着だったメイセイオペラが、中央の 「フェブラリーステークス」に優勝して、一躍「地方の星」として、 人気者になったのですが、地方競馬を見続けてる人から見れば、メイセイオペラよりも、 アブクマポーロの方が断然強かっただろうというのが今でもあるので、 本当は、この馬がもっともっと注目されても良かったよなぁ・・・って思います。

 それでも、獲得賞金額は、地方競馬に所属し続けた馬の中ではNo.1となる8億2千 9万円で、この記録は、地方競馬の賞金が安い現状では、たぶん抜く馬は出てこない だろうと思います。

 それだけに、できればドバイで走らせて見たかったなぁ・・・。

 ということで、このコーナーの最終回は、アブクマポーロの勝った「東京大賞典」で、 締めさせてもらいます。

 1年間、本当にありがとうございました。

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