このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

 思い出のスポーツ観戦(その2)
 バレーボール・アトランタ五輪アジア・オセアニア地区予選
(2003年5月16日執筆)  
   
 前回は、オリンピックを観に行ったぞ!という思い出を書いてみたのですが、 オリンピックは本番だけではなく、団体競技の場合は、数少ない参加枠を 巡って、世界中で参加チームを決める「予選」が開かれています。

 今回は、そういったオリンピック出場権をかけた「予選」を観に行った時の 思い出です。

 僕は、いろんなスポーツを良く観るのですが、中でもバレーボールは、相撲、 競馬と並んで「ビッグ3」と呼んでるくらい、特に好きなスポーツです。

 初めて会場に行ったのが、高校生の時に東京で行われた、世界選手権の 最終予選でした。以来、国際試合から国内の試合まで、年間で平均して10試合 くらいは毎年観に行ってるのですが、中でも今までで1番印象に残ってる試合が、 ’96年の4月に行われたアトランタオリンピックの男子のアジア・オセアニア地区予選でした。

 まず、バレーボールを知らない人のために、オリンピックに出るにはどうしたら いいのかっていうのを説明しておきますと、アトランタオリンピックの時は、 オリンピックに出られるのは12ヶ国でした。

 それで、その12ヶ国がどういう風にして決められるのかというと、最初に 出場権を得れるのが開催国です。ということで、この場合はアメリカ合衆国が まず1ヶ国目。

 続いて、オリンピック前年に日本で開かれる世界一決定戦の「ワールドカップ」 の上位3ヶ国に出場権が与えられます。つまり、オリンピック前年の世界上位 3ヶ国が、ここでオリンピックの出場権をゲットできるわけで、この時は、 イタリア、オランダ、ブラジルが出場権をゲットしました。

 その次に決まるのが、アジア・オセアニア、北・中アメリカ、南アメリカ、 ヨーロッパ、アフリカの5大陸毎に行われる大陸予選のチャンピオンで、 ここでそれぞれ優勝した国、計5ヶ国が出場権をゲット。

 最後に、残った3つの枠を巡って、その時点でまだ出場権を持ってない 国の中から、世界ランクの上位の国が12ヶ国集まり、それを3つのグループに分けて、 各グループ4ヶ国で最終予選を行い、そこでそれぞれ優勝した3ヶ国が 最後の最後に本番の出場権をゲットできるという方式でした。

 わかりやすくまとめてみると、

 1.開催国(アメリカ合衆国)
 2.ワールドカップの上位3ヶ国(イタリア、オランダ、ブラジル)
 3.各大陸予選のチャンピオン(計5ヶ国)
 4.最終予選(計3ヶ国)

 という感じでした。

 それで、ワールドカップで3位に入れなかった日本が、オリンピックに出るには どうしたらいいのかというと、まずはアジア予選で優勝すること。で、そこで 負けてしまったら、最終予選に参加してそこで優勝できればオリンピックに出場が できるという状況だったのですが、バレーボールの場合、「最終予選」と いっても、各大陸毎の出場枠が「1」しかないわけで、オリンピックの優勝候補 といわれる国が4つも5つも存在するようなヨーロッパでさえ、大陸予選を 勝ち上がってくるのはたったの1チームなので、そこで負けてしまった強豪国 が出てくる最終予選で勝つよりかは、アジアのチーム相手の アジア予選の方が比較的出場権をゲットしやすいのでは、という状況でした。
(現に、アトランタオリンピックで銅メダルを取ったユーゴスラビアは、この最終予選 を勝ち上がっての本戦出場でした。)

 それで、日本にしてみれば勝負の掛かったこのアジア予選がどういう方式で 行われたのかというと、この年は参加したのが当時のアジア・オセアニア地区 4強の日本、韓国、中国、オーストラリアでした。

 で、この4チームが、韓国のソウルと、日本の東京で2回戦の総当たりの リーグを行い、そこで優勝した1チームにオリンピックの出場権が与えられる というものでした。

 この年の日本チームはというと、前年に行われたワールドカップでは、世界の 強豪国を次々と破り、5位に入るという大健闘を見せ、僕が見てきた中では、 今までで最強の全日本だったと思うようなチーム力がありました。

 ただ、オリンピック直前になって、バレー協会内のごたごたが起き、監督だった 大古氏が監督を辞任するというハプニングが起きてしまい、このオリンピック 予選の時は、急遽コーチだった辻合氏が監督に就任してということで、チーム内に 少なからずの動揺があったかもしれないです。

 それでも、最強だった日本チームは、最初の韓国ラウンドではまさに絶好調で、 初戦の中国戦を3-0のストレートで勝つと、続くオーストラリア戦も順当に ストレート勝ちし、さらには最大のライバルと見られていた韓国もあっさりとストレートで 下すという、まさにこれ以上はない滑り出しを見せ、後半の日本ラウンドに 駒を進めてきました。

1回戦を終わった時点での経過

 勝敗セット率
日本 3-03-03-03-09-0
韓国0-3 3-03-12-16-4
中国0-30-3 3-01-23-6
オーストラリア0-31-30-3 0-31-9


 ちなみに、当時の日本チームのメンバーをここで書き出してみますと、
(所属・ポジションは当時)

 セッター:真鍋(新日鐵)、松田(日新製鋼)
 エース:青山(富士フィルム)、荻野(サントリー)、泉川(東レ)、竹内(NEC)
 センター:大竹(NEC)、南克之(旭化成)、南由紀夫(富士フィルム)、佐々木(サントリー)
 スーパーエース:中垣内(新日鐵)、宮崎(松下電器)

 というメンバーで、今から思い出してみても、そうそうたるメンバーだったと 思います。

 それで、日本は3つ全部勝てばもちろん、セット率でも大きく有利にたったため、 最悪でも2つ勝てば本戦に進めるというアジア・オセアニア地区予選の 日本ラウンドがいよいよスタート。会場は、東京・原宿の代々木体育館でした。

 で、僕は全部を見届けようと、毎日会場に行っての生観戦でした。

 初日の対戦相手は中国。
 だったんですけど、実はこの日本-中国戦の前に行われた、韓国-オーストラリア 戦で、2位に付けていた韓国が、勝ちはしたんですけど、格下の オーストラリア相手に1セット落として しまったために、日本はこの中国戦で、もしストレートで勝てば、翌日の オーストラリア戦の結果次第では、最終日を待たずに、優勝が決まるかも、 というような、断然有利な状況での試合でした。が・・・。

 いざ試合が始まってみると、日本はソウルでの3試合が嘘かのようなリズムの 悪さで、いつまで経っても流れを呼び込めないような状況に。

 逆に、ソウルで日本、韓国相手にそれぞれストレート負けを喫してしまい、 オリンピックに出るにはもう1セットも落とせない状況だった中国は、開き直ったのか、 ものすごいいいプレーを連発。

 そんなわけで、ストレートで勝って、最終日を待たずにオリンピックを決めて しまおうどころか、いきなり2セットを落としてこの試合も危ないって状況に。

 で、3セット目に入っても、中国のエースの張翔を全く止めることができずに、 まさかまさかのストレート負け。

 この時点で、韓国ラウンドでのアドバンデージは全て消え、日本と韓国、 そして首の皮1枚で中国にもチャンスが、という3つ巴の混戦モードになっちゃいました。


 そして、2日目。

 この日は、まず韓国と中国が対戦。
 中国は、1セットでも落とすとオリンピックが無くなるってことで、第1セット が大きな鍵を握るとこだったのですが、予想以上に中国の選手の動きが悪く、 このセットを韓国があっさりと取ってしまう展開に。

 こうなると、試合の方はモチベーションの差が出るもんで、2セット目も 韓国があっさりと取るという一方的な展開に。

 しかし、3セット目に入ると、中国も本来の動きを取り戻して、このセットを 取り返すと、もしここで中国が勝てば、最終日に韓国と対戦する日本に 取っては有利な展開に持ち込めるぞ、ってこともあり、中国を応援するぞモード に入ったのですが、4セット目は韓国が取って、結局3-1で韓国の勝利。

 なもんで、この時点で中国は3敗目を喫し、完全に優勝はなくなり、あとは 1敗の日本と韓国の一騎打ちな状況に。

 そんなわけで、この日のオーストラリア戦は、セット率とか全く関係なしに、 とにかく勝たなければならない状況での試合になりました。

 ただ、相手のオーストラリアは、この時はまだはっきりと「格下」と言える くらい力の差があったこともあって、試合の方は終始日本がリードする展開 で進み、余裕のストレート勝ち。

 ということで、最終日の日本-韓国戦は、勝った方がオリンピックに行ける、 というまさに大一番になりました。


 で、いよいよ最終日。

 実は、この時の僕は、最終日はすでに優勝が決まってるかも、と思ったことも あって、初日、2日目のチケットは前売りで購入したものの、最終日は まだチケットを買ってませんでした。

 ということで、本当なら前の日までに決めて欲しかったんだけど、仕方なしに・・・、 って感じでやって来て、当日券で見たこの日の試合が、僕のバレーファン人生における中で、 最もといっていいほど印象に残る試合になるとは・・・。

 とにかく、まず客入りが凄かったです。
 前年のワールドカップの時は、アイドルユニット「V6」の登場もあって、 今回と同じ会場の代々木第1体育館はいつも立ち見の出る超満員状態だったのですが、 このオリンピック予選は、宣伝が今ひとつだったせいか、初日、2日目は以外と 客席は埋まりきっておらず、割とゆったりとした気分で観戦できたのですが、 さすがにこの日は、まさに立錐の余地もないような超満員。一番後ろの 通路も立ち見客で埋まってるような中で、試合が始まりました。

 試合の方は、1セット目は韓国が終始リードする形でまず先取。

 続く2セット目は、逆に日本が終始リードする形で、14-7(当時は15点先取の サイドアウト制だったので、この時点であと1点取ればセットを取れる状況) まで行ったのですが、ここから韓国がしつこく粘ってるうちに、とうとう 追いつかれてしまい、ちょっとハラハラする展開に。

 それでも、最後は韓国の選手のスパイクがアウトになって、 日本がなんとか振り切ってこのセットゲット!・・・かと 思ったのですが・・・、なんと主審がセット終了の合図をした後に、 副審が日本にネットタッチ(選手がプレー中にネットに触るという反則)があったとアピールすると、主審が それを認めたため、すでに セットが終わったと思って、ベンチに引き上げかけていた選手を引き戻す ような形で、このセットを続行。

 さらに続いて、日本の中垣内選手のスパイクが、韓国の選手のブロックに 当たってコートの外に出たように見えたスパイクが、主審の判定では ブロックには当たらず、ネットに当たってコートの外に出たという判定で、 これでまた判定を巡ってもめた末に、最後は韓国に逆転されてしまい、 まさかまさかの大逆転負けでこのセットを落としてしまいました。 (しかも、かなり後味悪く・・・。)

 そんなわけで、いきなり後のなくなった日本。もし次の第3セットを 落としたら、アジア予選は敗退ってことだったのですが・・・。

 第3セットも、第2セット終盤の勢いをかってか、韓国が終始リードする 展開に。しかし、後のない日本も粘ったすえ、13点を過ぎたところで逆転。

 すると、最後はそのまま押し切って、このセットは日本が奪い返し、 なんとか次のセットへ夢を持ち越しました。

 それにしても、このセットを日本が取った時の歓声はまさにすさまじく、 僕も心の底から大声をあげて叫んだんですけど、たぶん会場のほとんどの人が そういう状況だったんじゃないかなって思いました。なもんで、マジで 鼓膜が破れるかと思ったです。(大袈裟じゃなくって、本気で書いてます。 念のため・・・。)
 今まで、いろんなスポーツのシーンを見てきたけど、あれだけ凄い歓声を 体験したのは、あの時だけですね。

 で、第4セット。

 このセットは、序盤は一進一退だったんですけど、中盤から韓国がリード する展開で、ついに14-11でマッチポイントに。

 しかし、こっから日本が粘りに粘って、14-13まで追い上げ、会場は大盛り上がり。

 で、あと1点返せばデュースに持ち込めるってとこまで行ったんですけど・・・、 最後は青山選手のスパイクが韓国のブロックに捕まってしまい、無念のゲームセット・・・。

 結局、このアジア・オセアニア地区予選は、韓国が優勝して、オリンピックの 出場権を獲得しました。

 最後の、青山選手のスパイクがブロックされた瞬間は、本当に会場が それまでの大歓声が嘘かのように静まり返ってしまい、わずかに、韓国の選手と、 韓国の応援団の人だけが歓喜を挙げているという光景は、本当に印象に 残ってます。日本を応援してた人にしてみると、一気に脱力感っていうか、 気力が無くなったような・・・、なんかそんな気分でした。

 それにしても、オリンピックの出場権が懸かってるにふさわしい大熱戦で、 単純にゲームとして見た場合、まさにいい試合だったんじゃないかなって、 今でも思っています。


最終結果

 勝敗セット率
韓国 0-3
3-1
3-0
3-1
3-1
3-1
5-115-7
日本3-0
1-3
 3-0
0-3
3-0
3-0
4-213-6
中国0-3
1-3
0-3
3-0
 3-0
3-1
3-310-10
オーストラリア1-3
1-3
0-3
0-3
0-3
1-3
 0-63-18



 結局、この大陸予選で負けてしまった日本は、そのわずか1ヶ月後に ギリシャのアテネで行われた最終予選に臨みました。

 この時は、対戦相手がギリシャ、スペイン、ポーランドってことで、 他の最終予選に比べればかなり楽な相手だったのですが、さすがにアジア予選から 1ヶ月しか経ってないということ(他のヨーロッパの国は、1月に大陸予選が あった)もあって、準備不足は否めず、初戦のスペイン戦にフルセットの末に 敗れると、2戦目のギリシャ戦はフルセットの末に勝ったのですが、最後の ポーランド戦を1-3で落としてしまい、結局オリンピックには進めませんでした。


 来年は、また日本でオリンピックの予選が開かれます。  今度は、アジア・オセアニア予選と、最終予選を同時に行うということで、 ワールドカップで出場権を取れなかった場合は、この大会が全ての懸かった 試合になるということで、僕は今から観に行く気満々なんですけど、あの アトランタの時の悔しさを晴らして欲しいなって思っています。

 ただ、バレーボール界には、オリンピック予選をやった国は、 本戦に出場できないってジンクスがあるので、その辺が不安ですが・・・、 そこんとこは何とか振り切って欲しいです。

 ということで、「思い出に残るスポーツ観戦」の第2弾は、’96年の バレーボール男子・アトランタ五輪アジア・オセアニア地区予選でした。

戻る

   



このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください