滝口純平さんやゲストの旅人は毎回、「あなたもこんな途中下車の旅を楽しんではいかがですか」というのだが、実際行動に移せる人はそうはいないと思う。僕みたいな相当な物好き且つ暇人でない限り。

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 三鷹━吉祥寺・西荻窪━荻窪━阿佐ヶ谷━高円寺━中野━東中野━大久保━新宿━代々木・千駄ヶ谷━信濃町━四ッ谷━市ヶ谷━飯田橋・水道橋━お茶の水━秋葉原

三鷹を出発したのが十時半過ぎ。乗車した電車は中央線各駅停車。総武線各駅停車ともいう。正式名称は「中央総武緩行電車」だと、かつてテレビで実際に旅人になった見栄晴が威張って言っていた。そう、旅人は奇しくもあの見栄晴だったのである。これもきっと何かの縁であろう。（あまり好ましい縁ではないが）

とにかく出発である。次の駅は吉祥寺で、この街はなにかというとテレビで取り上げられるし、旅人見栄晴もきっと下車したことであろうが、僕はこの吉祥寺にはしょっちゅう立寄っているので今回は通過することにした。西荻も通過。荻窪で下車。駅前の「BOOK OFF」に立寄り掘出し物を物色する。そう、今回は古本屋・書店めぐりの旅でもあるのである。荻窪店には何度か立寄ったことがあるが、今回はいいものが見つからず手ぶらで店を出る。

阿佐ヶ谷通過。高円寺。ねじめ正一の御蔭で言わずと知れた商店街の街である。北口と南口の両方に長い長い商店街が伸びている。特に南口の方はものすごく長くかつ風情がある。家具屋の親父。豚まん屋。豆腐屋のおからと湯葉の空揚。薩摩揚げ屋。乾物屋は見つからなかった。十一時半過ぎで少し昼食には早かったが、朝何も食べて来なかったので、最初に商店街を通った時に目をつけていたラーメン屋に入る。「大番ラーメン」。北口商店街にも同じ店を見つけたがチェーン店だろうか。ラーメンが三百五十円。安い。スープは豚骨でとても濃厚である。大蒜も少々利かせているようなこの濃厚なスープがとても気に入った。満足して店を出る。お勧めである。

中野で下車。北口の商店街は最初のうちはふつうのアーケード街だが、途中から屋内アーケードの商店街になっている。途中のゲームセンターで噂の伊勢海老キャッチャー発見。勿論やらない。しかしゲームセンターに出入りしたのは何年ぶりだっただろう。激安衣料品店「キクマツヤ」でネクタイとベージュの長袖シャツを購入する。続いて東中野でも下車。都営地下鉄大江戸線には乗らない。確かここにも「BOOK OFF」があったのを思い出し、地図で確認して発見入店する。寺山二冊購入。

大久保通過。新宿。埼京線ホームを抜け、新南口から高島屋に入る。東急ハンズをぶらぶらしてから紀ノ国屋書店南店に入る。前からお目当ての本がここにもなし。しかし寺山を一冊購入して店を出る。ここまで来てしまうともう新宿駅に戻るよりも代々木から電車に乗った方が早い。線路沿いの「空頭高」なる意味不明の看板を横目に見て五分程で代々木駅に到着。

千駄ヶ谷を過ぎて信濃町で下車。明治神宮外苑東通りを歩く。このあたりの、都心なのに緑があふれている奇妙さが僕にとっての魅力である。権田原の明治記念館の角を左折してもなお緑の木々は続く。通りの反対側は赤坂御所である。安鎮坂を下ると児童公園があった。寝不足だったので缶コーヒーを買って少し休息する。公園は子ども連れの家族であふれていた。この辺りに住んでいる人達なのだろうか。少しうらやましく思った。

公園を出て少し歩くと右手に迎賓館が現れ、四谷見附から橋を渡りその中間が四ツ谷駅である。電車には乗らずそのまま次の市ヶ谷駅まで歩くことにした。四谷見附橋を渡りきり、線路と雙葉女子の間に挟まれた遊歩道に入る。虫が多かったが綺麗な桜並木の歩道である。もう少し早ければきっと桜が満開だったに違いない。しかし葉桜もまた美しいものである。しばらく歩くと遊歩道は行き止まりになり、下の通りに下りて少し歩くともう市ヶ谷駅である。

飯田橋、水道橋と神田川を平行して電車は走り、御茶ノ水駅に滑り込む。頭上は聖橋である。以前駿河台から三省堂書店へ行った時には休業していた丸善に入る。しかしすぐに店を出る。

秋葉原に着けばここで僕自身の旅は終了である。総武線各駅停車はまだ小岩、市川、船橋、津田沼、千葉、と続くが、さすがに疲れた。終点秋葉原で電気街に立寄り、日頃から目をつけているiBook&iMacに触ってくる。最近「AirMac」なる無線通信秘密兵器が登場した御蔭で、今や電気店の展示品でもインターネットにつなぎ放題である。自分のホームページとか掲示板とか、ハッチポッチ関連ページを閲覧して帰途に着いた。結局なんだかんだで今回もhotchpotch in internetの世界から抜け出すことはできないのね？　自分。