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 「いぬのおまわりさん」考 (2000.04.10)
かつて、「いぬのおまわりさん」という雑文を書いた。
悔しいんである。
何が悔しいか。
この雑文が、図らずして私の手を離れ、勝手に諷刺の雑文になってしまったということである。
警察が悪い。

この雑文、GUEENの「いぬのおまわりさん」を題材にした雑文で、出来上がりは全くの閃きで、しかも私の大好きなブラックモノときた。同じブラック雑文「無限ループ」と並んでぼくの自信作である。
「ハッチポッチステーション」という子ども番組にこれらのブラックな雑文という取合せ、きっと吃驚された方も多いはずであるし、そしてかなり退かれたはずである。こども番組にブラックはそぐわない、という方もおられるかもしれない。
しかしぼくに言わせればハッチポッチとブラック、大いに結構ではないかなどと思う。ぼくにだってちゃんとした考えはあるのだ。そのこともいずれ話したいが長くなるし脱線するので今日は止めておく。

何はともあれ「いぬのおまわりさん」である。
そうだ。警察が悪い。
たしかに「グリコ・森永事件」のことは書き加えた。しかしあれはあれが閃いた時にたまたまあの事件の時効直前だったからついでに書いた、というだけのことで全くの偶然の一致なのだ。
つまりあの雑文はあれこれ書いてあるにしても、ぼくの単なる閃きと悪戯心、遊び心たっぷりの雑文であり、諷刺でない純粋なブラック作品なのだ。
 

2000年3月1日付・朝日新聞(朝刊)

しかし結果としてあれは諷刺になってしまった。
御存じ、警察不祥事のせいである。温泉で図書券麻雀なんである。
それよりもショッキングだったのは、朝日新聞3月1日付朝刊、総合欄のイラストであった。ぼくはこの日、朝起きて新聞をめくるなり「あっ」っと思わず声が出てしまった。
おまわりさんの恰好をした犬がうつむいて涙をこぼし、「トップも公安委までも判断力が迷子かよ…」と吹き出し。手には「警察庁、公安委なあなあ処分」と書かれた新聞を持っている。
この「犬のおまわりさん 困ってしまって」というイラスト、ひょっとしてぼくの雑文を読んで閃いたのではないですか、イラストレーターの山田紳さん。……な、わけないか。(←アイデア料下さい。←だからちがうって。)

そんなわけで、結果的に「いぬのおまわりさん」は諷刺雑文となってしまったが、これはぼくの陰謀ではなくむしろ警察の陰謀であるということを、ぼくは声を大にして言いたいのである。
にしても、今回の警察不祥事のせいでもうひとりぼくと同じように悔しい思いをした人がいたのではないか、とぼくは勝手に思っている。これはまさにぼくの臆測の域を出ないのだが、それはかの「踊る大捜査線」の脚本を書いた君塚先生である。
あの作品は今までの刑事ドラマの勧善懲悪的観念から離れ、現代の価値相対主義を反映した意味での新しい「警察ドラマ」であるとぼくは思っている。
だからあのドラマ必ずしも今までの刑事ドラマのように、警察=善、犯人=悪の図式では描かれておらず、今まで善だと思われていたものの中にも悪は潜んでいるし、逆もまた真なり、ということなのである。
特に面白いのが国家1種公務員試験をパスして警察庁に入庁したいわゆる「キャリア組」が腰の重い、部下の室井やノンキャリアをいたぶるイジメ役として、見事に観るものをしてキャリア組を憎ましめるように描かれている。
そして警察不祥事。ドラマだけでなく現実世界においても「キャリア組」はまさしく憎まれる存在となってしまったのである。「踊る大諷刺線」。ちゃんちゃん。

君塚先生、悔しかったろうなあ。(←そんなわけ、ないか?)

先生、これにめげずにお互い、もの書きをがんばりましょっ(はぁと)


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