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 希代(けったい)電話(1999/12/24)
 ついに携帯を購入した。ドコモなのだ。
 大学4年の今頃になってやっと持つなどというのは、周りから見れば相当遅いことになるのだろうが、今までは掛ける相手もいなければ電話してくれる相手もいなかったし、要は持つ必要性がなかったわけだ。
 かといって、今になって掛けるくれる相手ができたのかというと、必ずしもそういうわけではないが、最近携帯を持っていないことに多少不便を感じるようになったのと、就職してしまえば否が応にも持つ羽目になるので、どうせなら今のうちから慣れておこうという寸法である。
 しかし今のうちから持っておいてよかった。まだ購入してから数日しかたっていないのにもかかわらず、そう思う。なぜか。
 「ハッチポッチファミリー」を着メロにできるからなのだ。
 何を馬鹿なことを、とお思いになる方もいるだろうが、これは大変重要なことである。何故なら、これは「ハッチポッチファミリー」の着メロに限ったことではないが、着メロで電話を受けることができるのは、学生の自分だけのことである。つまり着メロは、学生の特権なのだ。就職してしまってからではこうはいかない。
 
 ばりっとしたスーツで決め、髪型も清潔、コンパクトかつ機能的な鞄を下げ、颯爽と都会の人込みをすり抜けていくスーパー・ビジネスマン。その顔は自信とやる気に満ちあふれ、キリッとした表情で足早に歩く。周囲の人々も、彼から眩いほどのオーラを感じ取る。
 そんな時。
「♪(ハッチポッチステーショ〜ン、ハッチポッチステーショ〜ン……)」
 彼の胸元から、全身の筋肉を一気に弛緩いたらしめるような単音のしまりのないメロディが奏でられる。
 慌てて胸元を探る僕。周囲の尊敬の眼差しが一気に軽蔑のそれへ。
 街中を歩いているだけならまだいい。それが社運を賭けた重大な商談の最中に起こったらどうなるか。想像するだけでも恐ろしい。
 まあ、例外もある。御存じ「ボス・セヴン」である。
 しかし、あれは課長・部長級クラスの管理職だけに与えられた特権着メロであり、新入社員の僕はおろか、万年平社員という憂き目にでも遭ってしまったら、一生聴かされる側にまわることになる。そして聴かされたが最後、リストラは免れない。
「君がいなくなると淋しいよ」

 そんな訳で、僕は携帯購入後家に帰り、すぐに「ハッチポッチファミリー」着メロの打込みにとりかかった。メモリー登録? そんなもの糞喰らえである。
 メロディは、某ホームページにおいて公開されていたものを参考にした。僕の購入した機種は、そのページで対象になっていた機種とほぼ同一だったので、打込みに苦労することはなかった。
 ひととおり打込みが終了し、試しに聴いてみる。
 感動だ。
 現在携帯を持っていない学生諸君。君も今すぐ携帯を買うのだ。そして「ハッチポッチファミリー」を打込むのだ。もう一度いっておくが、着メロが楽しめるのは学生のうちだけである。
 着メロ打込みとメモリー登録が終わると、次に携帯の外側をデコレーションする作業にうつる。どうするか。時々本体を妙なシールやら塗料やらで衣替えする輩がいるが、あんなものは僕に言わせれば邪道である。オリジナル性を強調するという意味ではそれもまたよいが、そのままの色だって今はかなりバリエーションがあるではないか。それにシールや塗料で飾るとなると、もしその色や模様に飽きてしまったら、元に戻すのが困難である。まあ最近は本体自体が安いからそっくりそのまま買い替えてしまうという荒技もあるにはあるのだが。
 僕はもっと派手でなく、正統派的にシンプルにいきたい。しかし、派手でなく如何様にしてオリジナル性を出すか、という問題になると、これはけっこう難題である。流行りとはいえ、所詮電話は電話。正面は液晶画面と数個のボタン。背面はのっぺらぼうである。
 液晶画面はいじりようがない。ボタンはいじり甲斐がありそうだが、あまりいじくり過ぎると今度はどれが何のボタンだかわからなくなる。アンテナは時々店で受発信中にピカピカ光るのを見かけるが、あんなのは見るだけでも嫌だし、背面にべたべたシールを張りまくるのも何だか幼い。
 あ。ひとつだけあるじゃないか。一見シンプルだが、そのワンポイントで他人に強いインパクトを与えることができ、なおかつ飽きてもすぐに替えることができる箇所が。
 そう。ストラップである。
 うん。その手があったか。なかなか冴えてるぞ、自分。これでいこう。さてどういうストラップにしよう。
 携帯購入時におまけとしてついてくるストラップははっきり言って何の面白味もない。携帯会社もサービスとしてもう少しデザインのいいものを付けてくれるといいのだが、ドコモは何にもないグレーの紐である。他社もせいぜいロゴ入りがいいところらしい。
 店に行けば何種類ものストラップが売っている。「PostPet」は多少興味を引かれたが、ポストマンファンの僕にとって、モモと一緒のポストマンストラップは折角の購買意欲も萎えてしまう。
 いやいや。やっぱりどこの店でも置いてあるようなのじゃ駄目だ。「これがおれの携帯だ!」っていう感じのものでないと、やっぱり。
 そんな訳で結局、またしても「ハッチポッチステーション」に結論が落ち着いてしまう僕なのである。
 
 キャラクターは何がいいか。言うまでもなくジャーニーである。ハッチポッチステーションの顔だ。最近人気が出てきているな。ハッチポッチステーション。本とCDとビデオが発売されているくらいだ。あとハンカチとかも。ジャーニー携帯ストラップくらい既に売り出しているのではないか。そこでNHK関連の版権管理会社に問い合わせてみた。しかし結果は残念。携帯ストラップはないとのことである。
 しかしここまで自他ともに認める狂信的なハッチポッチ教信者でありながら、そうやすやすと引き下がる訳にはいかない。既製品携帯ストラップが存在しないことを知らされた僕の頭に浮かんだことはこうだ。
「よし。自分で創ろう」
 普段は他人の半分も頭を回転させていない癖に、こういう時だけは常人の数十倍は頭の回転が速くなる。僕の頭の中にはたちまち「オリジナルジャーニー携帯ストラップ」の設計図が出来上がった。しかしまだ実行には移せない。理由は製作する時間がないことと、やはり身体が気力に追いつかないことが主である。
 ええい、忌ま忌ましい。こうなったら不本意だが「ジャーニー携帯ストラップ」製作行程をWeb上に公表してしまおう。どっかの会社がこれを見て製品化してくれるかも知れない。誰かが見様見真似で創ってくれるかも知れない。そんな訳で公表します。あ。そうそう。これを見て創ってみようと思った製作会社の方、あるいは個人の方、創るのはいっこうに構わないのですが、もしそれを製品化、あるいは公表する時は、もちろん当然のことながら特許料を請求いたします。(笑)
 それでは、

本邦初公開! 「オリジナル木製ジャーニー携帯ストラップ」のつくり方

 材料:直径1cm〜1.5cmの丸材(円柱材)1本
    薄いベニヤ板(切れ端程度でよい)
    塗料(緑、黒、赤、白、できれば黄)
    テグス(釣り糸で代用可)
    ビーズ(緑色)数十個
    ニス(見栄えがよくなるのでできれば欲しいが無くても可)
    硬質のプラスチックパイプ(細いもの内径はテグスが一本通る大きさ)1本
    その他接着剤、工具等。

 タイトルにもある通り、材質は木製とする。加工がしやすいからである。本来ならプラスチックが一般的なのだろうが、手製では加工が困難であるし、金属などは論外である。やりたい人はやっても構いませんが、いいものができるという保証はいたしません。

1. 首、胴体部分をつくる
 とはいっても、首と胴体は一本の木材をそのまま使う。これは体形が円筒形のジャーニーだからこそなせる技である。頭の丸いダイヤさんやグッチさんではこうはいかないし、エチケットじいさんでもいいのだが、そうすると今度は帽子のツバや眼鏡、ステッキなどの細かい部品の製作に苦労する。丸材の長さは3cm〜5cmくらいが適当だが、特に決めない。足長すっきりジャーニーをつくりたければ短くすればいいし、胴長ジャーニーをお望みなら極端に長くすればいい。ただ、丸材の先端からここまでは帽子の位置、顔の位置、そしてここから末端までは胴の位置というのはあらかじめ鉛筆等で下書きしておくのがよい。それから色づけをする。顔の部分は木材の地色を肌の色にするので、その部分だけテープ等で目貼りする。塗料は木材用がベスト。サインペン等でもよいが、木目に滲んで汚くなる可能性があるので注意する。

2. 帽子のツバを付ける
 ここがまあ細かい作業といえば細かい作業の部分である。まずベニヤ板で帽子のツバの部分をつくる。こう書くと簡単なようだが、ツバのカーブの部分が割と高度なテクニックを要しそうだ。巧みなヤスリ使いが大切である。あと緑色に色づけしておくのも忘れないように。胴体の帽子と顔の境界部分にはあらかじめツバ差し込み用の切り込みを入れておく。ツバは接着剤で取り付ける。

3. 腕・脚を付ける
 腕と脚は緑色のビーズを使う。テグスはビーズといっしょに手芸店に置いてあると思うが、釣り糸でも良さそうな気がする。ここで問題なのは、如何にして底面の中心から反対側の底面の中心へ、円柱材に平行な貫通穴を開けるかという問題である。しかもテグス2本が通る穴を。錐では不可能だし、ドリルでも相当細いものでない限り難しい。もしよい方法・工具を知っている人がいたら教えてもらいたい。とにかくここに書く分には机上の空論なので、穴が貫通したと仮定して話を進める。一本の長めのテグスをちょうど真ん中で2本に束ね、束ねた先端部分を頭から胴まで貫通穴に通す。ちょうど頭の部分には輪っかができるかたちになる。この部分が携帯に取り付ける部分になる。胴の末端部分から出てきたのはそれぞれ2本の脚の骨組みになる。よって頭の方は携帯に取り付けやすい長さに、胴体側はそこにビーズが脚の長さ分通せるように、それぞれテグスの長さを調節する必要がある。テグスを通したら、いよいよプラスチックパイプの出番である。これはパイプの中央側面部にこれもテグス2本が通る穴を開けておく。これは貫通しない。その穴に2本のテグスを通して、一本はパイプの一方の出口から、もう一本を反対側の出口から抜き出す。なんか細かい作業そうで実際やったら発狂しそうだ。このパイプはこれがないと一箇所から脚が生えてくるみたいになるため見栄えが悪いと思って一応用意したのだが、無くてもいいかも知れない。もし必要だとしても長さは円柱材の半径を超えてはならないわけである。脚が空中から生えているみたいになるからだ。半径より少し長めくらいがちょうどよいかも知れない。材質は硬質がいい。細めのストローで代用が利くかも知れないが、使っているうちに両先端からさきいかみたいに裂けてくるのではないかと心配である。後はパイプから出した部分にビーズを通し先端を止める。腕の方も同様に脚用の穴とは直交する貫通穴を開け、こちらはテグスを一本だけそのまま通してビーズを両先端から通す。

 あとはニスを塗って乾かせば出来上がり。

 ………。
 はああ。やっぱりどっかのメーカーが創ってくれないかな。


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