このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
子ども番組が昔からちっとも変わっていない。
そうは思いませんか。
それはおかしいと、私は思うのです。
時が流れ、世の中が社会が変化することによって、子どもも変わってきています。
当然、私の父母が子どものころの子どもと、我々が子どものころの子どもは違いますし、我々が子どものころと今の子どもも違っています。それぞれ生きてきた時代も社会情勢も異なるからです。
それなのになぜか「子ども番組」は我々の子どものころと今とでは大した違いがみられません。
これはおかしいことだと思うのです。時代とともに子どもが変わるなら、子ども番組だって当然変わらなければならないからです。
私は今にかぎらず、子ども番組はなにか、オトナの勝手な都合で創られてはしないか、と不安に感じています。
しかし、子ども番組といえども、創るのはほとんどの場合オトナなのですから、オトナの都合が入り込んでしまうのは仕方のないことなのかも知れません。
私が言いたいのは、子ども番組の制作者がオトナであるという事実ではなく、むしろ子ども番組を創るときのオトナの思考の方です。
「子どもとはこういうものだから、こういう内容にしたら面白がるだろう」
番組制作担当者・企画者は子ども番組を創るとき、まずこういった予想から始めることになると思います。
しかしおそろしいのは、「子どもとはこういうものだから」というところがあやまった方向に働くと、そこからオトナの勝手な都合やオトナの子どもに対する固定観念がうまれてきます。
また、自分の子どものころを回想し、そこからアイデアを出す場合もあります。しかし自分の子どものころは過去の出来事であり、古いものです。何度も言いますが、昔の子どもと今の子どもは違うのです。子ども時代の回想からアイデアを出すことは必ずしも全てが悪いとは言いませんが、得策ではないことも確かです。
子ども番組にたずさわり、真の子ども番組を創りたいと願うならまず、子どもに対する「無知の知」から入らなければだめだと、私は思うのです。
子どもに対する自分の見方というか観念というか、そういったものをいったん一切リセットして、ゼロの状態に戻してから子どもに接する必要があるのではないでしょうか。これは子ども番組の制作者ばかりではなく、学校の先生や、子どもの親に対しても同じことが言えるのではないかと思っています。
と、私はそういう風に偉そうにのたまってはいますが、正直なところ具体的にどういうアクションを起こしたらいいのか、ということは明確にはわからないのです。子どもに直接聞いてわかるようなことではないでしょうし、一朝一夕ですぐさま具体的な方針が定まるものとも思えません。かといって、わからないから何にもやらないといういうのでは、これはもう思考停止になります。
では、どうするか。
今までのものを破壊するような行動を子どもにとりましょう。今までに自分の中にあった子どもに対する固定観念や古臭い子ども時代の回想を捨てて、それらに基づかない行動を子どもたちに対してとったらどうでしょう。はたから見れば一見、おかしな行動に見えるかもしれないでしょうが、なあに、それはほんの最初のうちで、そのうち慣れます。
正直、これは大変勇気のいることですし、そうしたからといって上手くいくという保証はどこにもありません。そうです、保証なんかどこにもないのです。しかし考えてみてください。例えばこの世の中に教育なるものが生れてこの方、理想の教育などというものが存在したでしょうか。そんなものは存在しません。先程も言ったとおり、時代が変われば社会情勢も変化し、それにともなって教育だって変化してしまう、いや変化していくべきなのです。やっと理想にたどり着いたと思っていても、世の中が変わればそれはたちまち陳腐化してしまうのです。
つまり、これは教育に限ったことではないですが、人間あるいは地球上の生物はやることなすこと、トライアル・アンド・エラーであり、失敗をくり返すことで理想に一歩近づく。それなくして文化の文明の進歩は考えられません。
なんか最後の方は随分ベタで、偉そうなことをぶちましたが、今回はこういう主旨だということで、どうかお許し下さい。
しかし、以上のことは私がハッチポッチを観て、考えたことであることは真実なのですから、これもひとつの「ハッチポッチ雑文」であることに間違いはありません。
グッチ裕三さんは、エンターティナーとしてはとても才能に満ちあふれていると思いますが、子どもに対しては全くの「無知」だったのではないかと、私は思います。
しかしそれは当然のことです。これまで、エンターティナーとはいっても、相手はオトナばかりだったでしょうから、そもそも子どもを知る機会自体ほとんどなかったのだと思います。
それが突然、NHK教育の子ども番組をもたされることになったわけですから、これは彼にとっては一大事だったはずです。彼自身も最初は、子ども相手にどのようにやったらいいものか悩んだこともあったそうです。
しかし、これまでどおりのスタンスを崩さずに、子ども番組をやってみた、そして子どもたちの笑顔が得られた、そしてそれが今の「ハッチポッチステーション」を生み出したというわけです。
それも、グッチさんの、子どもに対する「無知」から出発したことから生み出されたということは言うまでもないでしょう。
私はこのグッチ裕三氏の、とにかくやってみようという実践的精神、そしてそのグッチさんを支えた「ハッチポッチステーション」の積極的な実験的精神を讃え、拍手を送りたいと思います。
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