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 闇鍋。(2000/02/09)

 自慢じゃないが、ぼくは「闇鍋パーティ」というのには参加したことがない。
 だいたいそんなことやるようなのが周囲にいないし、自分からやろう、というのも何か気がひける。
 というよりも、もし仮に誰かから、
「闇鍋パーティやろう」
と誘われたとしても、対応に困ってしまうのだ。きっと。
 出るべきなのかどうか。
 いや、これは仮定だから、実際に闇鍋を食すわけではないのだから、参加するという意志を固めたとして話を進めよう。
 さて、ここではた、と判断に困る。
 御存じの通り、闇鍋パーティというのは、参加者の材料持寄り、というのが原則である。
 どのような材料を持っていくべきか。というより、どういう意図で材料を持っていくべきか。
 決して鍋に入れないような、そう、鍋に入れたらそれこそ下手物食いの範疇にはいるような材料を持っていくべきなのか。はたまたまともな材料を持っていくべきか。
 受け狙いでいくか。地味な路線でいくか。それが問題だ。
 まあ、世間的、というより、テレビアニメなどでたまに「闇鍋ネタ」は取り上げられるが、これをみると十中八九、出来上がった鍋はいわゆる「下手物鍋」である。ぼくとしては、「ハイスクール奇面組」の闇鍋ネタが、子供心に印象的だった。
 それではアニメや漫画で受け狙いの下手物鍋をやっているからといって、現実でもそれをやっていいのか。それは少し考える必要がある。
 甘いお菓子やらドッグフードやら相応しくなくても摂取可能な食材を鍋に投入するならまだいい。ところが調子に乗ってくると今度は賞味期限切れのや腐ったのや黴の生えたようなものまで入れる輩が出てくる。挙句の果てに下駄やら蝙蝠傘やらキン肉マン消しゴムやらオーディオラジカセやら摂取不可能なものまで煮込む始末である。
 こうなるとたちまち集団食中毒の大惨事となり現場を発見した家人はあわてて救急車を呼んで病院に担ぎ込まれるわ保健所が入り込んで精密検査を行うわ毒ガス製造かダイナマイト製造かと警察が嗅ぎ付け家宅捜索で証拠物件として鍋を押収するわそれはもう阿鼻叫喚の巷で収拾がつかなくなり容体が回復して恐る恐る医師に事情を話すとそれはもう大激怒で保健所も警察もこんな馬鹿相手にできるほど暇ではないんだと両親はお叱りを受け恐縮して家路に着くが帰宅するなり父は鬼のように顔面を紅潮させてぼくの首根っことっ捕まえて一体お前はあ何をやっているんだ世間様に迷惑をかけて恥ずかしくないのかこんなことをやっている暇があったら少しは勉強しろ勉強と雷が落ち母は母でこんな子に育てた覚えはないのにとおいおい泣く始末もうお前なんかどこへでも行ってしまえと勘当を言い渡され家を追い出されたちまち路頭に迷う…
 とまあ、これは最悪の自体を予想したシミュレーションであり、実物はパッケージ、いや上文と多少異なります。
 とはいえ、地味に、まともな食材を持って行くのも果たしてどうだろう。ぼくの場合どうしても考えざるを得ないのだ。普通の食材を持って行ったところで「闇鍋」にする必要があるのか、と。それなら何も闇にしなくても明りを点けて普通の「鍋パーティ」にすれば何もビクビクして口に運ぶ必要はないし、みんな仲良く鍋を囲んで心も身体もほっくほくになれるではないか。
 考え過ぎなのかも知れない。ぼくにだって「闇鍋」はどんなとんでもないものが鍋の中に入っているかという「スリル」を味わうものであるよりはむしろ、貧乏学生の寄合いで大した期待はしていなかったが意外にもこんなに美味しいものが食べられたという「意外性」「楽しみ」を味わうものなのだ、という予測は何となくついている。しかし…やっぱり「闇鍋パーティ」に対する一抹の不安は残る。
 しかし、もうそんなことで悩む必要は無くなった。受けを狙いつつ、表面上は飽くまでも地味にまともに「闇鍋パーティ」を乗り切る方法がわかったからである。
 さあ、みんな。山盛りいっぱいの出汁の素を抱えて闇鍋パーティに参加しよう。
 昆布と鰹と煮干と豚骨と天下御免の旨味調味料と。
 ぐつぐつ煮立った鍋の蓋を取るとそこには大量の昆布と削ってない鰹節と煮干と豚骨が。とりあえずその他の参加者の受けは期待できる。その効果はHPSで実証済みだ。少なくともあのオチは今までの「闇鍋ネタ」のいずれにもなかったし、オチとしてはかなり高度なものだ。しかし場合によっては退かれるあるいは顰蹙を買う可能性もあるがその場合は「これだって喰えるじゃねえか」とみんなの前で出汁の出きった昆布や煮干をむさぼり喰おう。
 受け狙いの結果はどうあれ、これでぼくたちの鍋の出汁は最上級、しかも4品目の芳醇な香り高きブレンドエキス。隠し味の旨味調味料が利いてる。自信を持つのだ。

 ねえ、ぼくと闇鍋パーティやりませんか?


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