このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください


FAQ(よくある質問)コーナー

よくあるご質問にお答えします。
なお、英国蒸機に関してはFAQコーナー(2)を、
米国蒸機に関してはFAQコーナー(3)を、
欧州大陸蒸機に関してはFAQコーナー(4)を、
スティヴンソン・タイプ以外の特殊型蒸機に関してはFAQコーナー(5)をご覧ください。


Q.1

日本の蒸気機関車の解説に、単純連接型の Challenger,Big Boy や 複式でない上に機関固定式 の T1 を「マレー」としたものが見受けられますが、何故このような(調べればすぐ判る)間違いが横行するのでしょうか? (大塚 集一氏)
A.1
①日本には連接式が少ない。身近なものは交博のマレーしか無い。
よって似たような形のものは全部「マレー」と思ってしまう。
②日本の鉄ちゃんはメカに弱い。または関心が薄い。
少なくとも航空機や艦船のマニアよりはメカに弱い。
③日本人は外国語に弱い。よって洋書を読まない(読めない)。
従って外国の正確な知識が得られない。
④日本の教育はお受験第一のため暗記主体の詰め込み主義。
自分の頭で考える訓練ができていない。
⑤日本のもの書きは子引き、孫引きが得意。
原典に当るという習慣が無い、または原書を買わない(古書が高くて買えない)。
のいずれかと考えられます。


Q.2
旧鉄道省は、ストレートボイラのみを採用し、Belpair 火室や Wooten 火室には関心が無かったようですが、高品位炭の乏しい環境にしては余りに呑気な気がします。それとも、何か採用をためらわせる理由があったのでしょうか? (大塚 集一氏)
A.2
ご質問の「ストレートボイラ」とはクランプトン(円頂)式火室付きのものと思われますが、これはドイツ(特に旧プロイセン邦有鉄道)で好まれたものです。以下は、上記A.2の③を参照願います。


Q.3
シリンダのポペットバルブについて教えてください。ポペットバルブはスライドバルブより工作精度が高い必要が有ると思うのですが? (古川 洋氏)
A.3
高い工作精度はもちろんですが、ポペットバルブを駆動するのはカム軸ですし、カットオフを変化させる機構も必要ですので、構造がかなり複雑となります。


Q.4
「車輌研究会記録」や「潮」などの月刊技術雑誌に興味があります。閲覧可能な図書館をご教示いただけますでしょうか? (本多 邦康氏)
A.4
お尋ねの「車輌研究会記録」は東京国立のJR総研の図書室で目にしたことが有りますが、紹介者(部内)が必要のようです。「潮」は神保町の古書店で1度だけ見かけたことが有ります。その他「帝国鉄道協会会報」や「業務研究資料」などにもときどき蒸機の設計や性能試験についての記事が載っています。「業務研究資料」はJR総研の他、永田町の国立国会図書館、神田の交通博物館で閲覧しましたが、どこも全巻は揃ってないようです。


Q.5
鉄道ファン'82年10月号に荒井文治先生が9850の過熱蒸気温度計について書かれていますが、海外の文献に詳しい高木様ならお分かりになるのではないですか? (本多 邦康氏)
A.5
Robert Garbe著"Die Dampflokomotiven der Gegenward" (1920) のP358に出ています。
Thermoelektrisches Pyrometerという名で、Siemens und Halske製、銅とコンスタンタンによる熱電対式のものです。
 銅管(外径7mm)と、
 コンスタンタン(外径2mm)とを同軸に配し、
 検温部の長さ200mm、
 表示板の目盛0〜400℃
図解では丸型メーターの上2/3を波線で切って省略してあるが、正三角形の取付部の下2箇所が見えます。
プロイセン邦有鉄道で使用されたもののようです。


Q.6
首振り機関(oscillate engine)というものがありますが、機関車には使われたのですか?
どうも、スペースの制約という点では、機関車よりフネのほうがシビアな気もします。機関車が楽だったという意味ではなく、往復動蒸気機関の形態的特徴が、フネ、特に軍艦の特性と噛み合わないのが原因のようですが。 (新見 志郎氏)
A.6
オシレーティング・エンジン付きの蒸気機関車について、このほど鈴木 光太郎氏より資料の提供を受けましたので、以下に概要をお知らせします。
これはFiler & Stowell Co. (Delos l. FilerとJohn M. Stowellの2人によって1867年に創立された木工機械メーカー)が製造したもので、森林鉄道用に0-4-0, 0-6-0, 2-6-0の3形式が存在しました。1894年製の0-6-0を例に取ると、軌間4'8-1/2" (1435mm)、動輪径40" (1016mm)、シリンダ寸法は記載されていませんが、挿図より推定すると内径11" (279mm)×行程18" (457mm)のようです。駆動方式は、弁装置が無くカットオフ一定で、中空の耳軸が弁の機能を果たすようになっており、これに対してシリンダが上下各18度ずつ首を振ることによって自ら給気と排気を行なうようになっています。彼らの発想を追体験してみると、下記のようになるでしょう。
 1. 低速かつカットオフの長い森林鉄道の運転用に特化し、弁装置は廃止
 2. 前進はD形滑り弁を内側給気で使い、後進は外側給気で使うため、蒸気管の途中に給排切換弁を付加
 3. 一般のシリンダ(固定のシリンダに対してD形滑り弁が相対移動する)の固定側と移動側を逆にする、つまり固定のD形滑り弁に対してシリンダが相対移動するようにする
 4. 上記を往復(直線)運動でなく首振り運動に展開する、つまりD形滑り弁を耳軸とし、弁座が耳軸外周面の一部を形成するようにする
このように独自の発想により、著しく構造簡単な蒸気機関車を実現することができましたが、反面、欠点として耳軸外周面の摩耗が急速で、かつ隙間調整も難しいことが容易に推察され、普及はしなかったものと考えられます。
(Model Railroader May 1976 P46〜49より)
一般論として、新見氏ご指摘のように、レシプロ蒸気機関の長くなる方向と前後に長い蒸気機関車の形態とがマッチしているのは疑いの無いところです。コンロッド長にしても舶用の直立機関ではクランクスルーの4〜5倍が設計規準のようですが、蒸気機関車では通常6倍以上です。フネでは暗車式でなく外車式(直動)のものに蒸気機関車と機関配置が類似のものが有りますね。


Q.7
蒸気機関車には、艦船のように重油燃料の時代とか、ターボ・エレクトリックはあったのですか? (新見 志郎氏)
A.7
蒸気機関車の重油燃料は時代と言うより地域性のほうが強いですね。19世紀末に英国で始まったときは缶の能力増強が主眼でしたが、中東など産油国へ蒸気機関車を輸出する際にはノウハウが役立ったと思います。米国では南西部の油田地帯を通過する一部の鉄道に好んで用いられました。トンネルの多いわが国でも戦後になって北陸線や東北線などで炭油併焼が行われています。重油専焼もC59形の1両が改造され、東海道線で使用されて好成績を示しましたが、専従の乗務員が必要など運用面で不便のため普及しませんでした。
ターボ・エレクトリックも英国と米国で試作されましたが、出力の割に重量とコストが大きく、実用の域には至りませんでした。タービン駆動式はノン・コンデンシングの歯車減速式のみが英国・米国・スウェーデンでごく少数、限定された仕業に実用化されたのみです。


Q.8
"蒸気機関車メカニズム図鑑"(グランプリ出版)によれば、「国鉄のピストン弁の上にはかなり大きな構造のバイバス弁があり、惰行運転中のシリンダ往復による抵抗をなくす」とあります。ところが、外国の機関車では弁室上にこのような物が見えません。この場合、バイパス弁は弁室内側にあるのでしょうか? (鈴木 光太郎氏)
A.8
外国蒸機には、下記のようなものが有ります。
・バイパス弁が気筒または弁室内側に有って外観に現れないもの
(気筒の横、主台枠内側に在るものは、古いドイツ機に多い。日本国鉄では8800形、9600形など)
・バイパス弁の替わりに他の機構によってバイパス機能を果たさせるもの
(ピストン弁体が弁心棒の上をスライドでき、絶気時はバネの力で中央寄りに移動してポートを全開し、給気時は蒸気圧によってバネに打ち勝って本来の位置に戻るもの、ドイツやロシアにて採用)
・バイパス機能自体が無いもの
(英米機に多い、惰行時はシリンダに少量の生蒸気−ドリフティング・スチーム−を供給する。日本国鉄8200/C52形、満鉄パシナ形など)

Q.8a
国鉄C53のように、中央シリンダ、弁室に余裕が少ない機種ではバイパス弁はどこにあるのでしょうか?
A.8a
中央シリンダの前後に各1個のバイパス弁が在り、間を長いバイパス管でつないでいます。梅小路で確認可能です。

Q.8b
ドイツ輸入の8850あたりは弁室上部のカバーが国鉄近代型と似てますが、国鉄のバイパス弁設置方法は、この辺から学んだのでしょうか?
A.8b
8850形、6750形、9580形などは当該部分の図面を見たことが無いのではっきりしませんが、弁室上部にバイパス管(弁ではなくコック使用)を設けたのが確実な最初のものは8620形です。18900/C51形も同様で、ここに至って定着したと見ることができます。

Q.8c
日本製の満鉄機もアメリカ型そっくりで国鉄型のようなバイバス弁が見えませんが?
A.8c
満鉄は設計陣がアメリカン・プラクティスを遵守していたので当然かもしれませんが、米国製の8900形は後年弁室上にバイパス管を付加しています。日本国鉄は石炭節約が大命題であったので、惰行距離を少しでも伸ばしたかったのでしょう。

Q.8d
なぜ、国鉄だけが、シリンダカバーがランボードに接するまで垂直に立ち上がっているのか、気になっています。
A.8d
日本国鉄でもC54形まではランボード上にバイパス弁(単頭式)のカバー(四角い箱)を付けていましたが、次のC55形で双頭式バイパス弁になったため、ランボード前半を約200mmかさ上げして一直線とし、バイパス弁の大部分をランボード下に収め、この分シリンダカバーを上方に延長したものと考えられます。同じような様式は統合前のドイツの一部邦有鉄道(プロイセン、ザクセンなど)に見ることができます。
双頭式バイパス弁を弁室上に設置したものは他にドイツ制式機がありますが、こちらは弁が日本のような竪型でなく横型で、かつカバーされてないので外観イメージはかなり異なります。

Q.9
こんばんわ、所長様。
時に北海道時代のC62について撮影されてますでしょうか。
ちょっと模型作るのに資料が足りませんで。
んでお写真、拝見させていただけたらと。
44号機のキャブ、機関士側なんですが。 (茄子氏)
A.9
え〜、あんまりディテール写真は撮ってませんので、こんなの ↓ しか有りませんケド・・・


C6244(築) 下り急行103レ本務機 長万部にて 1970.8.2

Q.10
アメリカ型機関車(に限らないようですが)では、煙室から端梁に支持棒(?)のようなものが付いているのを見ますが、これは何なのでしょう。国鉄制式機やドイツ機等に付いているのを見たことがありません。煙室を支えているようにも、逆に端梁を吊っているようにも見えます。名称・役割等ご存知でしたら、お教え下さい。又国鉄制式機に無い理由についても。よろしくお願いします。(西川 省蔵氏)
A.10
コレは米国ではプレースbraceと言いまして、前台枠(細い棒状)が連結衝撃で座屈して上下に曲らないよう、曲げ剛性の大きな煙室とつなぐための「添え木」みたいなモノです。
国鉄制式機にも一部付いてますよ(D50, C53, D51など)。
今度実物を確認してみてください。
と言っているトコロに、茄子氏が大宮工場で整備中のD51 498の写真を送って下さったので、ここに紹介させていただきます。 ↓
先台車の構造上、担バネ前端の上向き荷重を支えるにも必要みたいですね。 


D51 498 大宮にて 2007.3.26

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