このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
FAQ(よくある質問)コーナー(5)
スティヴンソン・タイプ以外の特殊型蒸機に関して、よくあるご質問にお答えします。
Q.1
シェイやハイスラーのようなギヤード・ロコの高速大型化の可能性は無かったのでしょうか? (たかつかさ氏)
A.1
ご高承のように、かかるギヤード・ロコは一般的に、固定台枠式rigid frameでなく台車bogie方式とすることによって急曲線通過を容易とし、クランクシャフトの回転は自在軸universal shaftによって台車の歯車装置に伝達し、併せて全軸動輪とすることによって小さな機関車重量でも相当の粘着引張力を確保しようとするもので、森林鉄道など急曲線・急勾配の仮設的軌道に適したものです。
ギヤード・ロコの高速大型化の可能性は有ったと思いますが、後述のように、構造的には固定台枠式となりそうです。
Q.2
通常型蒸機のシリンダーとクランク軸が遥か遠くに泣き別れし、1次のアンバランスも残ってしまう構成と見比べると、ギヤード・ロコの方がより機能分化の進んだ合理的構造に思えてきます。
小直径高回転動輪と大容量ボイラーの組み合わせは、こちらの方が容易だったのではないかと思われますが? (たかつかさ氏)
A.2
ご指摘のような、大型・高速を狙ったギヤード・ロコは、1930年代にドイツで計画されたものの図面を見たことが有りますが、現在手許に資料が有りませんので詳細は判りかねます。
記憶で申し訳有りませんが、軸配置2C1または2C2、通常型蒸機のシリンダの位置に小型高速の蒸気機関を置き、平歯車減速装置で第1動輪に回転を伝達し、以下第3動輪までは通常の連結棒coupling rodで伝達していたと思います。
その後、ドイツでは動輪径を大きくして速度を稼ぐ05や61の方向に進みましたので、現実とはなりませんでした。
Q.3
それともレシプロ蒸気機関の場合、マルチシリンダ化しても最高回転数は上がらないものなのでしょうか? (たかつかさ氏)
A.3
先述の05は3シリンダ式で、シリンダ内径×行程450mm×660mm、動輪径2300mm、最大速度200.4km/hのときの動輪回転数462rpm (7.5rps)、ピストンスピード10.2m/sでした。
これに対して、FAQコーナー(4)大柳 啓吾氏のご質問に有りました、V型2気筒蒸気機関を各動軸に配した19-1001はシリンダ内径×行程300mm×300mm、動輪径1250mm、最大速度180km/hのときの動輪回転数764rpm (12.7rps)、ピストンスピード7.6m/sでしたので、往復運動部分の質量が圧倒的に軽いことと、ピストンスピードが小さなことと相俟って、機関車の動揺は極めて小さかったとされています。これから見ると、レシプロ蒸気機関でも小型化することによって最高回転数1,000rpm位までは上がりそうに思われます。
ただし、同機は、大柳氏のご質問に対する小生の回答にも有りましたように、各軸駆動ゆえ、実際の運用面ではいろいろ不具合が有ったようです。
固定台枠式の蒸機では、連結動輪のメリットも捨て難いので、上述のドイツ計画機のように、小型高速の蒸気機関から減速歯車装置を介して連結動輪に回転を伝達するのが実用的と考えられます。
なお、もう1歩進めて、小型高速の蒸気機関の代りに蒸気タービンとしたほうが、熱効率の改善、回転力の均一化、運動部分の完全な釣合せ、摺動磨耗部分の削減などを一挙に実現できそうな気がしますが、如何なものでしょうか?
♯余談
草創期の英国グレート・ウェスタン鉄道に、蒸気機関の回転を歯車装置(ギア比27:10)で増速して4ft6in (1372mm) の動輪2軸に伝達し、動輪径3703mm相当とする「サンダラー」「ハリケーン」の2両(1838年製)が有りましたが、ボイラ部と機関部とが別車両のため、可撓式蒸気管の洩れとか動輪上重量の不足とかで成功しなかったようです。
R.3
これは全く同感です。
残念ながらまだ読む機会が無いのですが、髙木さまの著作にターボモーティブを扱ったものがありました。
一足飛びにタービンに移行するのでなく、走行装置と機関部を別体化した構成の機関車は存在しなかったものか、そう思えたところから今回の質問をいたしました。(たかつかさ氏)
Q.4
ここで新たに質問です。
通常型蒸機のように動軸がクランク軸を兼ねている場合(駆動系が機関でもある場合)には台枠を固定式にするのが当然とは判ります。
ターボモーティブや説明頂いた計画機のような場合、台車にシャフトで伝達しても特に問題が生じるとは思えないのですが?(たかつかさ氏)
A.4
動力伝達の面では、1台車1,000PS以上の液体式ディーゼル機関車の存在から見て、ご指摘のように、特に問題が生じることは無いと思いますが、蒸気機関車独特のボイラ構造のゆえから、大型・高速の本線用急客機(テンダ機)を前提とした場合、大型ボイラを支える前後2台車のうち、少なくとも後部台車は火室の下となりますので、灰箱の設置や灰燼の処理などから、動力台車power bogieとするのは得策でないような気もします。
また、「ヘンシェル・ヴェークマン」のような短距離用の高速タンク機(前後2台車式)を想定しても、炭水槽下の後部台車に動力伝達するには、やはり火室下に推進軸を通すこととなります。(シェイ式のように左右非対称では横安定性の面から、高速用には具合悪いかと・・・・・)
まあ、通常型蒸機と違って、動力系の設計に自由度が高くなりますので、上記の問題がクリアできれば、不可能ではないと思います(^^)
石炭焚きでなく、重油専燃とするのも、ひとつの手かも知れません。
このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |