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独逸軍艦 機関部データ集

第2章 主缶



装甲巡洋艦 ヨルクSMS Yorck。デュール式水管缶16基を4缶室に等配。


2-1.基本仕様


2-1-1. 戦艦

NameQdBNbNfFPbGHeHsHQd/H
Kaiser Friedrich III13,000C832C1260.82,160-3,3903.8
T48261,230
Kaiser Wilhelm IIC8321260.82,1603,5603.6
S4827.31,400
Kaiser Wilhelm der GrosseC624131,5783,7383.5
S+Sd2+24+643.22,160
Kaiser Karl der GrosseC61814.2540,21,3683,5403.6
S+Sd2+24+643.22,171
Kaiser BarbarossaC62413.5471,5603,7833.4
T61238.42,223
Wittelsbach14,000C624C13.546.51,580-3,8903.6
S61244.42,310
WettinC62413.5
T612
ZaehringenC62414
S61245.62,310
SchwabenC62413.5
S612
MecklenburgC62413.550.21,3924,0803.4
T61243.52,688
Braunschweig,
Elsass, Preussen,
Lothringen,
Deutschland
16,000C4+216+6C13.51,390-4,5503.5
S81661.13,160
Hessen16,000S816C13.5-4,2103.8
S2(2)O
Hannover,
Pommern,
Schlesien,
Schleswig-Holstein
20,000S1224C1588.34,670-4,6704.3
Nassau22,000S1224C165,040

5,076
-5,040

5,076
4.3
Helgoland28,000S1530C166,450-6,4504.3
Kaiser,
Kaiserin,
Friedrich der Grosse,
Koenig Albert
28,000S14+228+2M166,950

7,170
-6,950

7,170
4.0

3.9
Prinzregent Luidpold26,00014285,9505,9504.4
Koenig31,000S1224C16-7,420

7,550
4.1
3(6)O
Bayern35,000S1122C16116.65,830-7,6634.5
3(6)O-1,833
Scharnhorst125,000W12(12)O50-5,1001,5606,66018.8
Bismarck138,000W12(12)O55-4,5601,4406,00023.0

Name: 艦名または級名、斜体はWW1後の建造、()は未成を示す
Qd: 計画出力 [PS]、レシプロ機関は指示馬力、タービン機関は軸馬力を示す
B: 主缶形式、Cは円缶、Tはソーニクロフト式、Sはシュルツ・ソーニクロフト式、Wはヴァーグナー式、小文字dは双子缶を示す
Nb: 主缶数
Nf: 主缶火床数、( )は重油専焼缶の燃焼室数を示す
F: 使用燃料、Cは石炭専焼、Mは炭油混焼、Oは重油専焼を示す
Pb: 主缶使用圧力 [atu, 1atu = 1.03kg/cm2]、太字は過熱式
G: 主缶総火床面積 [m2]、石炭専焼または炭油混焼のものを示す
He: 主缶総蒸発伝熱(受熱)面積 [m2]
Hs: 主缶総過熱面積 [m2]
H: 主缶総伝熱(受熱)面積 [m2]、 He+Hs
Qd/H: 計画出力/主缶総伝熱(受熱)面積比 [PS/m2]

<解説>
バイエルン級までが飽和蒸気使用、シャルンホルスト級以降が過熱蒸気使用です。

シュルツ・ソーニクロフト式はドイツでは海軍式と呼んでいます。これは、ソーニクロフト式ダーリング型(水胴3本・汽胴1本)の両翼水管群wing tube nestsの水管相互の間隔を増大し、燃焼ガスの通りを良くしたもので、あたかもヤーロー式(水胴2本・汽胴1本)の真中にもう1組の水管群と水胴を備え、火床を左右2分割したようになっています。さらに、後述するフォン・デア・タンのように水胴4本・汽胴2本としたものも有り、この場合は火床が左中右3分割です。
なお、同缶は水管同士を隣接させて水壁を作ることによって、燃焼ガスの流路を中央寄りに上昇→両翼に下降→再上昇→煙路とし、熱吸収を大とし得る利点を図解入りで謳っていますが、水胴付近は水壁の形成が不可能であることより、火床からの燃焼ガスの大半は両翼水管群を通過して煙路に向かって直接上昇するはずですので、上記の利点は多分に割り引いて考える必要が有ります。

缶の伝熱面積/火床面積比は、石炭専焼の場合、ヤーロー式(英・日)で54前後、ソーニクロフト式(同)で55〜57となっているのに対し、シュルツ・ソーニクロフト式では50〜53と、低質炭燃焼のため火床面積を大き目にしているのが判ります。

シャルンホルスト級ではヴァーグナー式高温高圧缶を採用し、全伝熱面積に占める過熱面積の比率を23%の高率としたため、蒸気性状は50atu, 450℃(飽和温度262℃、過熱度188℃)に向上しました。主缶1基当りの力量(蒸発量)は連続最大42t/h、短時間最大54.5t/hでした。なお、ヴァーグナー式は、水管群を燃焼室寄りと煙道寄りとに二分し、その中間に配置された過熱器での熱吸収を大きくし、前後の水管群の温度差を大きくすることによって缶水の自然循環を促進させたのが特徴です。

ビスマルク級もヴァーグナー式高温高圧缶を採用し、蒸気性状は55atu, 450℃(飽和温度268℃、過熱度182℃)でした。

伝熱面積1m2当りの出力は、おおむね円缶・水管缶併用(石炭専焼)では3〜4PS、シュルツ・ソーニクロフト式(同)では4〜5PSでしたが、ヴァーグナー式高温高圧缶(重油専焼)では一挙に20PS前後に跳ね上がっています。


2-1-2. 大型巡洋艦/巡洋戦艦/重巡洋艦

NameQdBNbNfFPbGHeHsHQd/H
Kaiserin Augusta12,000Cd848C12963,320-3,3203.6
Victoria Louise10,000D1224C1562.62,7772,7773.6
Vineta55.82,5082,5084.0
HerthaBv12241373.82,329-2,3294.2
Hansa1818
FreyaNi122413722,400-2,4004.1
Fuerst Bismarck7,330C832C1260.82,176-3,7963.4
6,170T4830.41,6203.8
Prinz Heinrich15,000D1442C1594.54,1974,1973.5
Prinz Adalbert16,200D1442C13.5103.74,3704,3703.7
Friedrich Carl17,00014.253.9
Roon19,000D1648C15.54,9004,9003.8
Scharnhorst,
Gneisenau
26,000S1836C166,300

6,315
-6,300

6,315
4.1
Bluecher34,000S1836C167,638-7,6384.4
Von der Tann42,000S1854C1610,405-10,4054.0
Moltke52,000S22+244+2C1611,000+530-11,5304.5
Seydlitz67,000S25+250+2C1612,000+500-12,5005.3
Derfflinger63,000S1442C16169.48,470-12,2705.1
Sd4(16)O-3,800
Hindenburg72,000S1442C18169.48,470-12,4505.7
Sd4(16)O-3,980
(Mackensen)90,000S2448C-
8(16)O-
(Elsatz Yorck)90,000S2448C-
8(16)O-
Bluecher132,000W12O70-
Admiral HipperLM80
Prinz EugenLM70

Name: 艦名または級名、斜体はWW1後の建造、()は未成を示す
Qd: 計画出力 [PS]、レシプロ機関は指示馬力、タービン機関は軸馬力を示す
B: 主缶形式、Cは円缶、Dはデュール式、Bvはベルヴィール式、Niはニクローズ式、Tはソーニクロフト式、Sはシュルツ・ソーニクロフト式、Wはヴァーグナー式、LMはラ・モント式、小文字dは両面焚を示す
Nb: 主缶数
Nf: 主缶火床数、( )は重油専焼缶の燃焼室数を示す
F: 使用燃料、Cは石炭専焼、Mは炭油混焼、Oは重油専焼を示す
Pb: 主缶使用圧力 [atu, 1atu = 1.03kg/cm2]、太字は過熱式
G: 主缶総火床面積 [m2]、石炭専焼または炭油混焼のものを示す
He: 主缶総蒸発伝熱(受熱)面積 [m2]
Hs: 主缶総過熱面積 [m2]
H: 主缶総伝熱(受熱)面積 [m2]、 He+Hs
Qd/H: 計画出力/主缶総伝熱(受熱)面積比 [PS/m2]

<解説>
未成に終ったヨルク代艦級までが飽和蒸気使用、ブリュッヒャー級が過熱蒸気使用です。

ヴィクトリア・ルイーゼ級からローン級までに採用されたデュール式は、ニクローズ式の管寄せheaderを拡大、一体化したものと言えます。同缶は水管群の上方に過熱管を備えていましたが、過熱伝熱面積が全伝熱面積の10%未満のため過熱度は小さく、主機に至る蒸気管内での凝結防止以上の効果は無かったものと考えられます。

アドミラル・ヒッパープリンツ・オイゲンには缶水をポンプで強制循環するラ・モント高温高圧缶を採用しました。前者の蒸気性状は80atu, 450℃と、ドイツ大型艦の中では最大圧力でした。

伝熱面積1m2当りの出力は、円缶と大径水管缶のデュール式(石炭専焼)では3.5PS前後、大径水管缶のベルヴィール式(同)とニクローズ式(同)では4PS前後、小径水管缶のシュルツ・ソーニクロフト式(同)では4〜6PSでした。


2-1-3. 小型巡洋艦/軽巡洋艦

NameQdBNbNfFPbGHeHsHQd/H
Greiff5,400Cd624C71,425-1,4253.7
Irene8,000Cd424,
32
C71,744,
1,900
-1,744,
1,900
4.5,
4.1
Gefion9,000Cd632C122,110-2,1104.7
Gazelle6,000Ni816C131,454-1,4544.1
Niobe8,000T816152,0202,0204.0
NympheSd+S4+116+2152,3002,3003.4
ThetisS918152,3002,3003.4
Ariadne
Amazone
Frauenlob
Bremen10,000S1020C152,750-2,7503.6
Luebeck11,5002,8102,8104.1
Koenigsberg12,000S1122C163,050-3,0503.9
Nuernberg61.673,0633,063
Stettin13,50068.273,0633,0634.4
Dresden15,000S1224C163,160-3,4384,4
Emden13,50074.243,4383,1604.2
Kolberg19,000S1530C1696.944,501-4,5013.7

4.4
Mainz20,200281696.664,5254,525
Coeln19,00030174,5705005,070
Augsburg16
Magdeburg25,000S1632C165,454

5,572
-5,454
〜5,572
4.4

4.5
Breslau
Strassburg
Stralsund
Karlsruhe26,000S+Sd12+224+(8)C+O165,800-5,8004.4
Graudentz26,000S+Sd10+220+(8)C+O165,560-5,5604.6
Pillau30,000Y+Yd6+46+(8)C+O18-
Wiesbaden31,000S+Sd10+220+(8)C+O16-
Frankfurt12+224+(8)5,8005,8005.3
Brummer33,000S2+44+(8)C+O185,600-5,6005.8
Koenigsberg31,000S+Sd10+220+(8)C+O165,560-5,5605.5
Coeln31,000S8+616+(12)C+O166,000-6,0005.0
Emden46,500S4+6C+O161,629+3,009-4,63810.0
Koenigsberg65,000Sd6O166,540-6,5409.9
Leipzig60,000Sd6O166,700-6,7008.9

Name: 艦名または級名、斜体はWW1後の建造、()は未成を示す
B: 主缶形式、Cは円缶、Niはニクローズ式、Tはソーニクロフト式、Sはシュルツ・ソーニクロフト式、Yはヤーロー式、小文字dは両面焚を示す
Nb: 主缶数
Nf: 主缶火床数、( )は重油専焼缶の燃焼室数を示す
F: 使用燃料、Cは石炭専焼、Mは炭油混焼、Oは重油専焼を示す
Pb: 主缶使用圧力 [atu, 1atu = 1.03kg/cm2]、太字は過熱式
G: 主缶総火床面積 [m2]、石炭専焼または炭油混焼のものを示す
He: 主缶総蒸発伝熱(受熱)面積 [m2]
Hs: 主缶総過熱面積 [m2]
H: 主缶総伝熱(受熱)面積 [m2]、 He+Hs
Qd/H: 計画出力/主缶総伝熱(受熱)面積比 [PS/m2]

<解説>
表中の各艦はいずれも飽和蒸気使用で、ピラウ級とブルンマー級を除けば、主缶の蒸気性状はいずれも16atu止まりでした。
後年、ライプツィヒ級(1928年起工)に続くM4級(1938年起工)からヴァーグナー式高温高圧缶(70atu, 465℃)を採用する計画であったものの、第2次大戦の勃発に伴って未成に終わっています。

伝熱面積1m2当りの出力は、円缶とニクローズ式(石炭専焼)では3.5〜5PS、シュルツ・ソーニクロフト式(同)では4〜6PSでしたが、シュルツ・ソーニクロフト式の重油専焼缶では9〜10PSに増大しています。


2-1-4. 駆逐艦

NameQdBNbNfFPbGHeHsHQd/H
S90-107,
S114-119
5,900T3C15.51,186-1,1864.9
G108-1136,600S3C161,045-1,0456.3
S120-123,
S126-131
6,400S3C15.51,100-1,1005.8
S124No-
S1256,600S3C15.51,100-1,1005.0
G132-1367,000S3C17.51,105-1,1056.3
G13710,800S4C171,735-1,7356.2
S138-14911,000S4C191,685-1,6856.5
V150-16010,900S4C191,677-1,6776.5
V16114,800S4C191,679-1,6798.8
V162-16415,100S3+1C+O18.51,815-1,8158.3
S165-16817,500S3+1C+O18.51,871-1,8719.3
G169-17215,000S3+1C+O171,834-1,8348.1
G17315,000S3+1C+O17.51,833-1,8338.1
G174-17515,000S3+1C+O181,833-1,8338.1
S176-17917,600S3+1C+O171,871-1,8719.4
V180-19118,000S3+1C+O18.51,815-1,8159.9
G192-19718,200S3+1C+O18.51,833-1,8339.9
V1-517,000S3+1C+O18.51,580-1,58010.7
G7-1216,000S3+1C+O181,602-1,60210.0
S13-2415,700S3+1C+O18.51,637-1,6379.5
V25-3023,500S3O18.5-2,286-2,28610.2
S31-36,
S49-52
24,000S3O18.5-2,277-2,27710.5
G37-4024,000S+Sd2+1O18.5-2,286-2,28610.5
G41-42,
G85-95
24,000S+Sd1+2O18-2,403-2,40310.0
V43-4824,000S+Sd2+1O18.5-2,286-2,28610.5
V67-84,
V125-130
23,500S+Sd1+2O18-2,286-2,28610.2
S53-6624,000S3O18.5-2,326-2,32610.3
S131-139S+Sd1+2O18.5-2,417-2,4179.9
G9624,000S+Sd1+2O18-2,286-2,28610.5
H145-147
B97-98,
V99-100
40,000Sd4O17-4,000-4,00010.0
B109-112Sd4O18.5-4,000-4,00010.0
G101-10428,000Sd2O18-2,785-2,78510.0
S113,
V116
45,000Sd4O18.5-4,808-4,8089.3
Moewe,
Grief
23,000S+Sd1+2O18.5-
Wolf23,000Sd3O18.5-2,211-2,21110.4
T1-4, T5-828,000W4O70-
T9-10, T1-12
T13-3629,000W4O70-
Z1-8, Z17-4363,000W6O70-
Z9-16Bs110

Name: 艦名または級名、斜体はWW1後の建造、()は未成を示す
Qd: 計画出力 [PS]、レシプロ機関は指示馬力、タービン機関は軸馬力を示す
B: 主缶形式、Tはソーニクロフト式、Sはシュルツ・ソーニクロフト式、Noはノルマン式、Wはヴァーグナー式、Bsはベンソン式、小文字dは両面焚を示す
Nb: 主缶数
Nf: 主缶火床数、( )は重油専焼缶の燃焼室数を示す
F: 使用燃料、Cは石炭専焼、Mは炭油混焼、Oは重油専焼を示す
Pb: 主缶使用圧力 [atu, 1atu = 1.03kg/cm2]、太字は過熱式
G: 主缶総火床面積 [m2]、石炭専焼または炭油混焼のものを示す
He: 主缶総蒸発伝熱(受熱)面積 [m2]
Hs: 主缶総過熱面積 [m2]
H: 主缶総伝熱(受熱)面積 [m2]、 He+Hs
Qd/H: 計画出力/主缶総伝熱(受熱)面積比 [PS/m2]

<解説>
表中、ヴォルフ級(1927年起工)までは蒸気性状が18.5atu止まりでしたが、1937年より起工のT1-4級からはヴァーグナー式(70atu, 460℃)や、水胴が無く全水管構成のベンソン式(110atu, 510℃)といった高温高圧缶の採用により、機関部重量当り最大出力を増大しています。

伝熱面積1m2当りの出力は、石炭専焼缶ではおおむね5〜7PSでしたが、重油専焼缶では8〜11PSに増大しています。


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