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ドッガー・バンク海戦に見る機関部の実相

2-3. 駆逐艦

2-3-1. 英国駆逐艦


I級・Admiralty Design: 778T, 750rpm, 13,500shp, 27kts
 デフェンダーDefender? T, 786rpm, 14,780shp, 28.31kts
 ドルードDruid? T, 773rpm, 15,014shp, 28.27kts
 フェレットFerret750T, 809rpm, 17,051shp, 30.10kts (8時間公試)
 フォレスターForester760T, 803rpm, 16,727shp, 29.58kts
 ゴスホークGoshawk780T, 742rpm, 14,821shp, 28.37kts
 ホーネットHornet742T, 591rpm, 14,769shp, 28.77kts (B.C.T.)
 ハイドラHydra760T, 648rpm, 14,710shp, 28.10kts (B.C.T.)
 ジャッカルJackal754T, 767rpm, 14,210shp, 26.94kts
 ラップウィングLapwing? T, 771rpm, 15,056shp, 27.24kts
 フェニックスPhoenix732T, 766rpm, 15,057shp, 27.85kts
 サンドフライSandfly? T, 741rpm, 15,683shp, 27.24kts
 タイグリスTigress734T, 817rpm, 14,161shp, 28.07kts
I級・Thornycroft: 763〜773T, ? rpm, 15,500shp, 29.0kts
 アケロンAcheron768T, 587rpm, 13,811shp, 29.40kts
 エアリエルAriel780T, 603rpm, 15,131shp, 29.49kts
I級・Yarrow: 775〜785T, ? rpm, 16,000shp, 28.0kts
 アタックAttack745T, 691rpm, 18,040shp, 30.62kts (B.C.T.)
 ・・・・・
 ブラウン・カーチス式タービン、2基、2軸(B.C.T.)
 パーソンズ式3軸並列タービン、1基、3軸(上記以外)
 ホワイト・フォースター式水管缶3基(フェレット、フォレスター)
 ヤーロー式水管缶3基(上記以外)
 主缶使用圧力: 220〜250psi (15.7〜17.6kg/cm2)
1910〜11年度計画になるもので、3軸並列タービンとは、中央軸が高圧タービン、翼軸が低圧タービンで、左舷軸は巡航高圧タービン、右舷軸は巡航中圧タービンをそれぞれ艦首寄りに結合しています。
ちなみに、低圧タービン、または低圧シリンダとは、蒸気の膨張が終わる部位を指しますから、引き続き高圧タービンで蒸気が膨張する場合は、巡航「中圧」タービンと称します。ついでながら、4段膨張レシプロ機関も、シリンダの呼称は高圧、第1中圧、第2中圧、低圧です。
この時代の英国の軽快艦艇の主管は、ほとんどがヤーロー式でしたが、ホワイト・フォースター式も一部に用いられました。後者は、水管を全数同一半径で湾曲させている以外、ほとんどヤーロー式と同一です。
缶室は2室で、主缶配置は艦首寄りから1基、2基。
煙突は2本で、煙路導設は艦首寄りから主缶2基、1基です。


HMS Acheron.


L級: 1,115T, 650rpm, 24,500shp, 29kts
 レアーティズLeartes986T, 642rpm, 24,975shp, 31.16kts
 ラフォリーLaforey1,112T, 635rpm, 25,128shp, 29.95kts (B.C.T.)
 ランドレイルLandrail940T, 638rpm, 27,342shp, 32.56kts (B.C.T.)
 ラークLark998T, 651rpm, 26,643shp, 29.53kts
 ローレルLaurel945T, 626rpm, 25,021shp, 31.42kts
 ロウフォードLawford973T, 649rpm, 25,083shp, 30.84kts (B.C.T.)
 リージョンLegion1,072T, 617rpm, 25,060shp, 30.08kts
 リバティLiberty1,005T, 605rpm, 25,374shp, 30.38kts
 ルックアウトLookout965T, 658rpm, 25,192shp, ? kts
 ルイスLouis1,036T, 632rpm, 25,207shp, 29.78kts (B.C.T.)
 リディアードLydiard1,073T, 626rpm, 24,962shp, 29.57kts (B.C.T.)
 ライサンダーLysander1,005T, 628rpm, 25,065shp, 29.90kts
L級: 1,115T, 380rpm, 22,500shp, 29kts (A.G.T.)
 ルシファーLucifer1,141T, 346rpm, ? kts
 ・・・・・
 ブラウン・カーチス式タービン、2基、2軸(B.C.T.)
 パーソンズ式2軸並列オール・ギヤード・タービン、2基、2軸(A.G.T.)
 パーソンズ式3軸並列タービン、1基、3軸(上記以外)
 ホワイト・フォースター式水管缶3基(ローレル、リバティ)
 ヤーロー式水管缶3基(ラーク、ランドレイル)
 ヤーロー式水管缶4基(上記以外)
 主缶使用圧力: 250psi (17.6kg/cm2)
1912〜13年度計画のL級のうち、ルシファーと、ド海戦に不参加のレオニダスLeonidasの2隻は、オール・ギヤード・タービンを試験的に採用しています。推進軸1軸について高・低圧タービンが歯車減速装置を介して並列に配置されており、高圧タービン(巡航段落付き)3,250rpm、同小歯車歯数38枚、低圧タービン1,800rpm、同小歯車歯数69枚、推進軸大歯車歯数325枚で、写真の向かって左側が歯車減速装置、右側が低圧タービンと直下の復水器、その奥が高圧タービンです。推進器回転数が直結式のほぼ半分であることより、推進効率が約10%上がり、その分機関出力が小さくて済むという目論見であったようで、燃料消費量は全力時で約9%、低負荷時で約26%の節減とされており、本艦の場合は出力(速力)増大よりも燃費改善が主眼でした。
缶室は2室で、主缶配置は艦首寄りから1基、2基(3缶)、または2基、2基(4缶)。
煙突は2本(3缶)、または3本(4缶)で、煙路導設は艦首寄りから主缶2基、1基(3缶)、または主缶1基、2基、1基(4缶)です。


HMS Lysander. (Auther's Collection)


Port wing set of all-geared turbines for HMS Leonidas.


M級・Admiralty Design: 900T, 750rpm, 25,000shp, 34kts
 ミルンMilne985T, 743rpm, 25,600shp, 32.58kts (B.C.T.)
 モーリスMorris902T, 748rpm, 25,406shp, 32.24kts (B.C.T.)
M級・Hawthorn Leslie: 1,055T, 750rpm, 27,000shp, 35.0kts (4-funnelled)
 メンターMentor1,102T, 736rpm, ? kts
M級・Thornycroft: 980T, 680rpm, 26,500shp, 35.0kts
 マスティフMastiff1,085T, 648rpm, 32,700shp, 34.7kts
 ミーティアMeteor公試結果 不詳
M級・Yarrow: 883T, 635rpm, 23,000shp, 35.0kts (2-funnelled)
 マイノスMinos973T, 599rpm, 23,120shp, 33.4kts (B.C.T.)
 ミランダMiranda990T, 613rpm, ? shp, 33.03kts (B.C.T.)
 ・・・・・
 ブラウン・カーチス式タービン、2基、2軸(B.C.T.)
 パーソンズ式3軸並列タービン、1基、3軸(上記以外)
 ヤーロー式水管缶4基(メンター、マスティフ、ミーティア)
 ヤーロー式水管缶3基(上記以外)
 主缶使用圧力: 250psi (17.6kg/cm2)
1912年、ドイツ駆逐艦の高速化に対抗し、チャーチルの鶴の一声で35ノットの駆逐艦が求められ、1913〜14年度計画で本級が登場しました。
本級の高速化は主として主缶の力量増大によっており、缶室は2室、主缶配置は艦首寄りから1基、2基(3缶)、または2基、2基(4缶)です。
煙突は2本または3本(3缶)、もしくは4本(4缶)で、煙路導設は2本煙突が主缶2基、1基、その他は1基ずつです。
本級の公試成績は、コントラクト・スピード(契約速力)に達した艦が無いようで、開戦に伴って受入基準が甘くなったのかどうか判りませんが、よく受領されたものです。あるいは値引が有ったかもしれません。なお、軽荷状態ではマスティフが938T, 689rpm, 32,360shp, 37.16kts、マイノスが817T, 635rpm, 22,756shp, 36.09ktsの記録が有ります。
ミルン、メンター、ミーティア、ミランダの4隻は、英国海軍戦史には本級中の快速艦と謳われていますが、公試データでは確証が取れません。


HMS Mentor.


2-3-2. ドイツ駆逐艦

ドイツでは公式には水雷艇と称していましたが、ここでは統一的に駆逐艦と呼ぶことにします。
この時期のドイツ駆逐艦の級名は原則的に建造所別となっており、G: ゲルマニア(キール)、S: シーヒャウ(ダンツィヒ)、V: フルカン(シュテッティン)などのそれぞれ頭文字を冠しています。当然、主機も各建造所が保有するライセンスによっています。
ドイツ駆逐艦の公試成績は、4回(2往復)または6回(3往復)試航における、同一級内の最大値を引用しているようです。

S178
(S176〜179級)
 566T, ? rpm, 17,600shp, 32.0kts
 781T, 727rpm, 17,840shp, 32.9kts
 シーヒャウ式タービン、2基、2軸
 推進器外径: 2.75m
 シュルツ・ソーニクロフト式水管缶3基(石炭専焼)、同1基(重油専焼)、主缶使用圧力: 17kg/cm2
シーヒャウ式は不詳ですが、2基、2軸であることより、衝動タービンの一種と考えられます。
缶室は3室で、主缶配置は艦尾寄りからそれぞれ1基、2基、1基。
煙突は2本で、煙路導設は主缶2基ずつと考えられます。

V181, V182, V185
(V180〜185級)
 650T, ? rpm, 18,000shp, 32.0kts
 697T, 783rpm, 17,640shp, 33.3kts
 AEGフルカン式タービン、2基、2軸
 推進器外径: 2.25m
 シュルツ・ソーニクロフト式水管缶3基(石炭専焼)、同1基(重油専焼)、主缶使用圧力: 18.5kg/cm2
缶室、主缶配置、煙突、煙路導設は前級と同様です。

V1, V2, V4, V5
(V1〜6級)
 569T, ? rpm, 17,000shp, 32.0kts
 697T, 729rpm, 17,109shp, 32.9kts
 AEGフルカン式タービン、2基、2軸
 推進器外径: 2.08m
 シュルツ・ソーニクロフト式水管缶3基(石炭専焼)、同1基(重油専焼)、主缶使用圧力: 18.5kg/cm2
缶室、主缶配置、煙突、煙路導設はやはり前級と同様です。

G7〜9, G11, G12
(G7〜12級)
 573T, ? rpm, 16,000shp, 32.0kts
 719T, 678rpm, 16,400shp, 33.0kts
 ゲルマニア式タービン、2基、2軸
 推進器外径: 2.00m
 シュルツ・ソーニクロフト式水管缶3基(石炭専焼)、同1基(重油専焼)、主缶使用圧力: 18kg/cm2
機械室、缶室、主缶配置、煙突、煙路導設はやはり前級と同様です。
つまり、製造所が異なるだけで、基本的に同一なのです。


SMS G7.


上記に関し、「艦船動員史」から、関連の記述を拾ってみましょう。
「1911〜1913建艦年度に於て建造せられたるV1〜V6, G7〜G12, S13〜S24の諸艇は524Tの排水量を有したるに過ぎず。此等の諸艇は排水量を減少したる関係上艦の全長を若干減じ、操縦やや容易となりたれども、艦内頗る窮屈にして耐波力小となれり。加之空積を極力利用したる関係上、燃料の格納位置頗る不便となり、延いては荒天の際石炭を缶前に運搬すること不可能になる状態に陥りたり。蓋し(イ)人員不足勝にして、(ロ)艇の後部より缶前まで石炭を繰るの要ありたればなり。」(P73)

V29, V30
(V25〜30級)
 812T, ? rpm, 23,500shp, 33.5kts
 975T, 612rpm, 24,800shp, 36.3kts
 AEGフルカン式タービン、2基、2軸
 推進器外径: 2.46m
 シュルツ・ソーニクロフト式水管缶3基(重油専焼)、主缶使用圧力: 18kg/cm2
缶室は3室で、主缶配置は1基ずつ、煙突は2本で、艦首寄りの第2煙突は第1煙突より太いことより、煙路導設は艦尾寄りから主缶1基、2基でしょう。
本級に関し、「艦船動員史」は、
「先に言及せるV1〜S24は依然として炭油併用式なりしが、1913年以降の建造にかかる諸艇(但しA級艇の一部を除く)は凡て重油専焼缶を有せり。其の最初の一列たるV25〜V30の諸艇は初めて800噸の排水量を有し8.8糎砲3門、50糎発射管6門を搭載せり。実戦の経験は、此等の諸艇こそ初めて充分なる性能を備ふるものなることを証示せり。」(P74)
つまり、当のドイツが、S24以前の駆逐艦は実用性不十分であったと公言しているわけです。

S33〜35
(S31〜36級)
 802T, ? rpm, 24,000shp, 33.5kts
 971T, 680rpm, 23,516shp, 34.2kts
 シーヒャウ式タービン、2基、2軸
 推進器外径: 2.50m
 シュルツ・ソーニクロフト式水管缶3基(重油専焼)、主缶使用圧力: 18kg/cm2
缶室、主缶配置、煙突、煙路導設は前級と同様です。

この時期までのドイツ駆逐艦は、英国駆逐艦より小型のこともあって、おおむね2軸推進です。


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