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貨車写真の撮り方

どうせ写真を撮るなら、自己満足に終らせずに、後世に残る、場合によっては金になる写真を残したいものです。 以下は、自分が心がけていることの他に、仲間の貨車ファン(貨車写真家と言ってもよい)が実践している ことをご紹介します。
自分では、経済事情もあって、なかなか理想通り行かないのですが、皆様のご参考に なればと思い、自分のことは棚に上げて、書いたものです。
1:安全第一
やはり、まずこれが第一です。というのは、鉄道事業者はもちろんのこと、 全ての事業者は安全の維持・向上のための様々な訓練や、「0(ゼロ)災」「ヒヤリ・ハット」 「KYT(危険予知)」「安全パトロール・ミーティング」「リスクアセスメント」に日々取組み、顧客および 従業員の安全を守っているのです。
そこで我々撮影者が、安全ルールに対し無謀無知であるために、事業者に危険を予感させるだけでも、 事業者の活動に重大な脅威を及し、結果、貨車の撮影を禁じられるばかりでなく、貨車愛好 そのものが"非道"のレッテルを貼られることに、留意すべきです。
具体的には、「禁止された構内・線路内には入らない」「構内道路・線路横断時は1線毎に指差確認」 「貨車に上ったり、下に潜ったりしない」「周囲状況を常に確認して歩行・撮影する」 「線路内に3脚を立てない」「荷役作業中の区域には立入らない」など。
2:やはり銀塩写真
デジカメが普及、高性能してきましたが、6項に絡むと、2003年秋現在ではやはり銀塩写真を主に、 デジカメはHP・メール速報用など補助用に用いたいですね。今日、会社のデザイナーと話していて 印刷製版上、依然としてデジカメはカラーポジに劣ることを聞きました。
(2006年現在では、デジカメも800万画素の1眼レフが10万円を遙かに下回り、 私の業務上でも利用範囲が格段に増えてきています。銀塩を止めることは 考えていませんが、併用してみようかとは考えています。)
3:美しい貨車写真の条件・・・順光/3線空き
【光線】
撮影場所の立地条件をファンとの情報交換や地形図などで 調べ、順光の状態で撮影できる場所、時間帯を選定すべきです。なお、真夏の トップライトはタンク車の場合特にタンク上半と下半のコントラスト差が激しく、 綺麗な写真にならないので、できれば避けたいですね。
【引き】
4項に絡むが、貨車は妻面よりも側面に特徴があることが多いこと、 連結車の場合、隣の車輌が被らないようにするため、最低でも3線 空いている状態で撮りたいですね。無理なら少しでも後ろへ下がって 引いて撮りましょう。(後ろを見ずに後ずさりしないこと) 【その他】
上記の他に、最も美しい貨車形式写真の条件は、以下のようになります。
1)バックが抜けている。後方に他の車両や架線・架線柱などがなく、スッキリしている。
2)架線・架線柱・撮影者などの影が、台車・車体(タンク)に一切かかっていない。
3)隣接する車輌が、取ろうとする車輌に一切被っていない。
  タンク車の場合、隣接する機関車、貨車の陰もタンク鏡板にかかっていない。
4)台車・ブレーキ回りに雑草や標識類がかかっていない。
5)車輌の状態がよい。錆びや塗装の剥離がなく、標記がしっかりしている。 しかし、このような条件が揃うことは、現在では非常に難しいですが・・。

4:形式写真の構図は機関車・電車よりも側面寄りに
これは自分の過去写真を振返ってそうだったのですが、形式写真の場合、前面に比重を置く 機関車や電車などを多く撮って来ると、貨車を撮る際にもついつい妻面を正面の様に考えて 妻面を強調した構図を取ってしまい勝ちです。
しかし貨車の場合は側面の方が 妻面に比べ特徴的であることと、編成の中間で連結した隣の車輌が撮ろうとする 車輌に被っては好ましくないことから、電車などに比べて側面に比重を置いた 構図を取りましょう。
もちろん、加熱管付きタンク車、車掌車などのように 妻面が特徴ある車輌などは、妻面重視あるいは妻面単独の写真も同時に記録しておくのは 当然です。
5:ホーム撮影の心構え
旅客駅のホームから撮るケースも多く、これは地上から撮影した場合に比べて 構図的に不安定になることが多く、不利は否めません。しかし、少しでも 良い写真にするために、以下を心がけましょう。
1)撮影する駅は、1線よりも2線、3線と出来るだけ引きが取れる駅を選び、しかも 順光の時間帯(無理なら曇天の日)を選ぶ。
2)カメラ位置を、しゃがむ、開脚するなどで出来るだけ低くする。決して立ったまま撮影しない。
状況がゆるせば、ホームに腹這いになることもある。
3)引きが十分でないときは、柱など障害物を避けながら、可能な限り後方へ下がる
もちろん、「他の乗客に一切迷惑をかけない」「白線(黄ブロック) より線路側へ出ない」などの基本を遵守することは言うまでもありません。
6:永久保存・書籍出版を目標に
さて、我々は貨車(に限らず鉄道)写真を集めて、何にするのだろうか?
そりゃあ、趣味だから、個人それぞれで見て楽しめば、それが本来の目的なのだから、 何にスルも何も関係ない、と言えばそれまでですが、ちょっと待って。
せっかく苦労して撮る写真、できれば世の中の多くの人に資料として評価され、 自分が死んでも写真が後世に残ったら、なお楽しいことではないでしょうか?
かく言う筆者も最近自分の原稿が本の記事になったり、本の制作に実際携ってみると その目標というのは非常に人生の励みになる、とわかった次第です。とにかくこのHPの 読者の皆様にお勧めしたいのは、自分の写真が本(自著でも他著でも構わない)やCD になって頒布され、人類社会が続く限り残すことを目標にしたいものです。
一例を挙げれば、我が師匠「吉岡心平氏」の私有貨車図鑑やRMの私有貨車セミナーの 氏の写真が如何に美しいものが多いことか。氏やお仲間の方々は永久保存・書籍出版を 考え撮影条件を可能な限り選ばれているのです。「写っていればよい」という考えと 対極にあると言ってよいでしょう。 筆者が手遅れの感がありますが、これからの皆様は、後世に残る美しい貨車の写真を遺しましょう。
なお、出版(製版)を考えた場合、カラーは当然リバーサル(ポジ)フィルム使用しかあり得ません。ネガカラーでお撮りの方は、すぐポジに切替えましょう。
7:できれば大判写真を
私の貨車仲間は6×7、6×9で美しい貨車の形式写真を多く残しています。 同じ写真を35mmで撮影した場合、勝負は明らかです。筆者は経済状況から 新規設備投資は不可能ですが、経済の許す方は、とにかく大判カメラをお薦めします。
8:モノクロは自家現像を
今、昔撮ったモノクロ写真を引き伸したりスキャンして見ると、フィルム感度による 粒状性の差よりも、現像処理の優劣の影響の方が支配的のようです。
ISO100でも、 ザラザラに現像が上がったネガが結構多く、むしろ最近のISO400で丁寧に上がったネガの 方が粒状性が良いケースもしばしば見られます。どんなに苦労して撮っても現像が悪ければ 台無しで、6項の印刷物にも使ってもらえません(他人の写真が「採」になり、自分の写真が「没」) ので、結論的には、「自分で現像する」のが最良の選択です。私の貨車仲間の多くが、自家現像で 美しい仕上りの写真を得ており、これと大判フィルムで”勝負あり”です。

さて、やむなく現像を業者に出す場合ですが、大型カメラチェーン店だからといって 安心してはいけません。「カメラのキ***」へ一度現像を出したところ、曇ったような現像で、 プリントすると粒子ザラザラで貨車の写真が台無しでした。 それ以後その店は使わず、安定したところに依頼して事なきを得ております。 【後になって、実は定着不足(恐ろしい)であることに気づき、定着液に浸したところ、 正常に戻りましたが、いずれにせよ、写真屋にあってはならない状態です。】
夏期などで現像液温が高い場合、現像液が新品の場合など現像が短時間に促進される 状況が、粒状性の悪化を招くようなので、夏期は現像に出さないようにしています。 少なくとも現像したらすぐプリントして、出来映えを確認することを お勧めします。
9:とにかく、しかし、撮っておく・・・全ロット/全車/全角度/時系列
筆者の古い旅行メモには、よく「**駅でタキ****」を見た、などと書いてあります。しかし、これは クソの役にも立たないのです。とにかく撮ったのと撮らなかったのとでは、そこに雲泥の 差がある、ということは皆さんも頷かれるでしょう。
とにかく、初めて見る「番号の」貨車は、 光線、引き、障害物など、どんな悪条件でも、必ずまず悪い中でのベストを尽して撮って おくことが、もっとも大事です。6:項で勧めた「後世に残る」写真、は、それ以外の写真は 撮るな、と言ってるのではありません。
【形式】
「この形式を撮った」という潰し方は貨車の場合においては大変浅はかです。筆者も 実はタキ1900やホキ3500、タキ3000などがゴロゴロしていた時代は、右代表で各形式1両 づつしか撮っていなかったのですが、これが 後になって、大きな後悔を生んでいるのです。
【タイプ毎】
例えば、レム5000前期形、後期形などタイプ毎を潰す撮り方。 国鉄(JR)貨車では、これが最低限であるが、この考えに捕われていると 珍車や改造車などを見逃すので危険です。
【ロット毎】
ロット毎で変化しているので、最低でも「ロット毎」。しかしロット等というものは研究の結果、 後になって解るもののため、撮影時に判断するのは不可能でしょうね。
【全番号】
結論を言うと、見た・撮れた貨車は全部撮っておく、がベストです。実は、コキ104等もロット毎で細かく 変更点があるのです。全番号が辛いと思ったら、10番刻みとか細かく撮ることでしょう。
私有貨車の場合は、1ロット1両なんてのがザラにあるので、全番号撮っておかないと ロットをも撮り逃す結果になることをお忘れなく。
筆者も、ワム90000だけは、見たら全車撮っていたので、駆込みでしたが幾つかのタイプの 写真を遺すことができました。貨車は本当に【一期一会】です。
【全角度】
さて、1両を全方向から撮るチャンスに恵まれたら、形式写真だけで喜ばずに、今後の研究のため、 前後左右、真横から、そして細部も撮りましょう。貨車も他の車両同様、左右対称ではありません。
なお、目の前に明らかに同じロットと思われる貨車群がいて、全番号同じ構図の形式写真を撮ることに苦痛を 感じる向きは、番号毎に撮る角度を変える手もあります。
【時系列】
貨車は時系列で変化していくことがありますので、番号だけ見て「昔撮ったからイイヤ」 は禁物です。例えば所有者は元より、常備駅、自重、臨時専用種別、運用区間が 変化していることがよくあります。
また、同じ番号ではあるが、前回よりも撮影条件が良ければ、「後世に残る」 写真に近付いていくことになるので、そのチャンスを逃さず、撮っておかねばなりません。
10:写真の整理・・・リスト/台紙/電子化
写真の整理には誰もが頭を悩ませるものです。写真屋でくれるプリントホルダに入れる だけの方もけっこう多いのではないでしょうか。でも、写真が増えてくると 検索性の点で、必ずしも良い方法ではなくなります。
 せっかく撮り集めた写真ですから、後での様々な利用のために容易に検索でき、 取り出し可能なように整頓をしましょう。私は、決して自慢できるほどではないが、 以下の様に整頓しています。
【写真のリストを作る】
 EXCELで、撮影した貨車の形式、番号、撮影日時、撮影場所といった写真データの 他に所有者、常備駅、自重、実容積、製造年、改造年、台車といった貨車の固有データ、 さらにロット番号、概略履歴の欄も作っています。これで何時、どんな貨車を撮ったか わかります。貨車の固有データは、撮影時の現車調査メモや書籍で発表されたものを記載します。ネガ番号も決めて記載すると良いのですが、ネガは撮影年月で時系列に保管していて 検索容易なので特に決めてはいません。
【台紙化する】
 書式を決めて台帳を作ったことがあります。これは幾人かの貨車研究の先輩に倣った ものです。台紙は目に優しいように欄など緑色とし、カラープリンタではインク代が もったいないので、印刷屋に1000枚印刷させました。そして上記のEXCEL記載内容を パソコンのプリンタで差込印刷で台帳に印刷し、それにカビネ判にプリントした写真を 貼り付けて貨車の画像情報と撮影・貨車固有データを一度に見られるようにしています。 1両(1形式写真)1枚で、形式順・番号順にファイルに綴じています。時々眺めるのも 楽しいものです。
 ただし紙焼き写真がないと完成しないため、自家プリントが進まない昨今では中断しています。 実は貨車研究の先輩も、中途で放棄した方がみえるのですが、なんとか続けたいとは 思っています。
【電子化する】
 上記の台帳は紙ベースですが、今日では電子化しておくことが、自分で検索するにしても、 雑誌社に送る場合にも、便利です。
 知人の貨車研究家の皆さんは、10万円以上のネガスキャナーで電子化しておりますが、 私は経済事情が許さないのとファミリーユースも必要なので、高性能化してきた フラットヘッドスキャナ(EPSON)を導入し、約1年前からスキャニングを始めました。
 スキャン解像度は3200dpiとし、これをPHOTO SHOPで形式写真の場合360ppi、 幅4200pixelのサイズに直して、まずはグレースケール8bitのBMPで保存、一旦形式毎に まとめてCDに焼き、焼き終わった画像は通常使用用としてJPG圧縮して パソコン内に常駐させています。3200dpiではA4サイズの印刷に耐えますが、 1200dpiのスキャンでは精細さに明らかに欠けます。
 さて、写真データと、写真撮影データ、貨車固有のデータとのリンクは 模索中です。画像も一括で扱える、無料のフリーソフトを探さないと。

 貨車写真を撮られておられる同好の方でも、話してみると整理や電子化が 未だの方も多いのですが、早めに行うことをお勧めします。



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