このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください



Title: 真夏のハリソン!!


1.久留里城
皆様はご存知でしょうか?久留里城。 千葉県は君津市にある城跡です。 現在は2〜3階建て(うろ覚え)の復元天守閣を頂点に、尾根には野鳥観察の小道も用意された 城跡公園です。駐車場からの天守閣へと向かう道すがらには歴史資料館もあり、私の好きな 城跡の1つです。 天守閣や野鳥観察ポイントからの眺望はすばらしく、久留里の町並み(大半は田畑です)が一望 できます。 また築城における立地条件も、攻るに難い地形を最大限生かしたものとなっており、戦国の世を 謳歌した武将や領主の姿を偲ばせます。 ただ惜しむらくは遠くの山並みに見える、山腹を穿つようにしてあるゴルフ場ですね。 これだけは頂けません。 ところで。私がこの城を好きな理由はもう1つあります。それは...
2.理由って?
私がよく久留里場を訪れるのには理由があります。 それは野鳥観察のルート(小道)が併設されている事です。 なに? それは先もいったじゃないかって? いえいえ違います。 もちろん眺めを楽しむにも最適なのですが、このルートにはもう1つの顔があるのです。 この観察ルートは非常に長く、天主へと至る山の中腹にある駐車場付近を出発点として、 天守閣のある山頂を越え山の向こうへ。さらに延々と道は山中をはしり、水流の形跡だけ を留めた川を横切ります。 田んぼの畦道へと姿を変えながらも、最後は唐突に県道にぶつかり終焉します。 まったくどこが正式な終点なのか、いまだもって分かりません。この山中が楽しいんです。 ここまでお読みになられた方は、ひょっとしてジャングルのような様を思い浮かべてますか? 少々大仰な言葉を私が並べたため、想像が先走った方もいらっしゃるでしょう。 千葉の山々はさほど高くありません。当然ながら久留里城のある山も同様です。 しかしなめてかかってはいけません
3.スゴサの説明
ここの小道はスゴイんです。 なにがスゴイんだって? へへ。 どうやら管理がなされていないようなんです。 - 幾度も寸断される道! - 何本もの倒木が行く手を阻む! -案内もなく二股に分かれた道! - 膝くらいまで埋まる! - 欠けた崖沿いの道! しかも数メートル下は濁った!! etc,etc...。 もうお分かりいただけましたね? 久留里城跡・野鳥観察遊歩道をなめてかかてはいけません。
4.その日の私
私は趣味であるムシ写真撮影を終え、その日も遊歩道へと向かったのでした。 ここを訪れるたびに思うのですが、自然回帰の状況は年々ひどくなっています。 河床まで下りてきた道が、そこで終わっています。見上げると、どうやら7〜8メートル上の 山肌に道のようなものが覗えます。 登ります。 道らしきものへ辿りつくまでは樹をつかみ草をつかみする必要があります。 けっこういい運動です。 次は何本も倒れた木々に道が分断されています。 ここはジャングルジムの要領で切り抜けられます。途中服の襟が倒れた木の枝に引っ掛かり、 はたから見るとまるでマンガの主人公のように驚いたりもします。 なかなか大変です。 足許に広がる沼。いや池かも知れません。どことなく澱んだ感じです。 まったく動かない水面を下に、崖沿いを通る道は欠け落ち 40cm ほど極端に狭くなってます。 この辺りは元々の道幅ですら 30cm ほどしかありません。これが 10cm ほどの幅になっている のです。 横ばいで切り抜ける。 これが正解ですね。 などと数々の障害を乗り越えると、やげてトプトプちょぷちょぷと流れる小川のほとりに出ます。 とても穏かな、そう極楽ですね。一番近いイメージは。 ここは春日よりのときに訪れましょう。 耳に心にここちよい流れを辿り、とってもちいさな林を抜けると田んぼの畦道です。 人里におりてきた〜、と実感しますね。 やがて道はのけ反るようにして、やや高い所を走っているアスファルト道路にぶつかります。 ここで終点です。
5.子供たち
ところで私は久留里のお城までの道を知りません。いえ、もちろんいまとおってきた道を除いて は...の話です。 「さて帰るか」 踵をかえす私の視界に...。 「???」 小学生です。 数名の子供たちがこちらに向かって近づいてきます。 お世辞にも子供受けするとは言えない貌付きの私には、元来よっぽどのことが無い限り寄り付く 子供などいません。 見ると案のじょう困っている様子。 なにか聞きたそうに暫らくはモジモジしていましたが、ややあって一人の子供が、 「おじさん」 む? おじさん...誰がオジサンじゃコラ〜ッ!!。 怒鳴りたい誘惑を必死に押さえつつ聞いてみれば、 「僕たち久留里城へ行きたいんですが、行き方、ご存知ですか?」 まぁ丁寧な話し方をしてるし...ふん。許してやろう。 「ああ、知っとるで」 瞬間まるで花咲くように開き合う笑顔。 「ホント!? ねぇねぇ連れっててよ。おじさん!」 前言撤回。 いきなり馴れ馴れしいじゃんかよ。 「はっ」 私の知っている道って...背後に広がる大自然。ぽかぽかとして良い陽射しです〜。「知っとるけど...」 状況を説明する私に、 「はい。構いません。ついて行きま〜す!」 こらっ。おまえら唱和すんじゃない。 聞けば、富津辺りから朝早い電車でやって来たとそうだ。子供たちだけで。 小学生3年生くらいだろうか。休みを利用しての「子供たちだけの社会見学」としゃれ込んだ らしい。感心感心。 ・・・・・・しかし彼らはまだ知らない。 これから訪れる本当の怖さを。冒険を!
6.冒険
一行は田んぼの畦道を通り、小さな林を抜け小川のほとりにきます。 とってもいい感じです。これから訪れるであろうところを知らなければ。 そして...。 「うわースゴイねぇ。おじさん」 「本当だー。うわっ。クモだ」 「わーい。クモクモぅ〜」 元気ですね。とっても元気です。 やがて倒木が訪れ、道がなくなり...。 子供たちの間から笑みが消えてまいります。 「なんか...おじさん。本当にスゴイねー。うわーっ」 やがて道は流れの涸れた川へ。 「おじさ〜ん。ホントにこの道あってんのぅ?」 この頃になると、すっかりおじさん不信に陥っている様子。 「おぅ合うとんじゃ」 「ええ〜ホントにぃ〜?」 不安に脅えながらも懸命についてくる子供たちを従えて、私はもぅ「気分はインディー!」、 ハリソン・フォードです。 道なき道を上り、ヘビへの警戒を子供たちにつたえつつ草むらを渡り、邪魔な倒木の枝を 折り進みます。 やがてハリソンは気が付きます。子供たちが若干距離を置いていることに。 どうやら不信感急成長してきているようです。 「おじさん。本当に道知ってんのぅ?」 皆な同じ眼をしている。不安にかられた瞳。 「大丈夫じゃいやぁ」 なんか自分でもうそ寒い言葉に聞こえ始めます。何故か周囲の景色も先ほど来たときとは 違うような感じで...。 「助けて〜。僕たち誘拐されましたー!!」 「助けてぇ〜」 「助けて下さーい!!」 沼の上で欠けている道をひとりずつ進ませている時に、突然叫び出す子供たち。 「!???...んなななな!?」 びっくりするのはこっちじゃい! まぁ、声の感じから本気の叫びではなさそうですが...すっかりハリソンは誘拐犯人扱いです。 「大丈夫じゃ」 私は他に出せる言葉も無く、ただ子供たちを先導して山を歩きつづるのでした。 そして...。
7.喜び
「おっ?」「あっ」「おおおー」「お城だーっ!!!」木の葉の間から見える天守閣の白壁に息をふきかえすチルドレン・パワー!4名の歓声と共にダッシュ!! 今日2度目の満開の笑顔でした。 お城の付近まで戻ってくると道もしっかりしており、周囲の景色も見覚えのあるものです。 もうここまでくれば一安心です。それが分かるのは「道を知っている」私だけのこと。 子供たちの心は不安でいっぱいだった事でしょう。 でも、走り出す彼らの後ろ姿には微塵も感じられません。 「おじさん。僕たちこれから亀尾ダムの方へ向かうんだけど、一緒に行ってよぅ!!」 車へと向かう私に子供たちがまとわりついてきます。 誘拐犯人にまで間違われたハリソンでしたが、今は一転してヒーローですね。 しかし私の車は2人乗り。彼らを乗せては行けません。 「残念じゃけど、おじさんはもう帰らなきゃ。ごめんね」 こうして私は子供たちとは別れたのでした。 もちろん笑顔で「バイバイ」。 元気してるかな〜。
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