このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください


『遠野旅行』

[猿ケ川。春はもう少し先のようですね]

その日を町をぶらつくことで過ごした私は、会社へ持ち帰るお土産の探索。前回と同様に、名物の「明がらす」を購入。胡桃をあしらった乳白色の平面のなか、あたかも明け方の空に羽ばたくカラスの如く黒ごまが一緒に練りこんであります。ちょっと古風な味わいですが、胡桃の柔らかい甘さが私は好きです。

いくつかお店があります。それぞれの味があるようなので、前回訪れたお店を思い出しつつ、店舗ドアをくぐります。「すみませ〜ん」と呼びかけど、応じる気配が一向にありません。ちょっと心配になります。お爺ちゃん奥で倒れたりしていないでしょうか。その店のものは駅舎隣の物産館でも取り扱っていたので、結局そちらでゲット。

[カッパをモチーフとした石像に別れ告げ]

そうそう、宿の話をするのを忘れていました。
「ああ、ジリノさん?」
やっぱり私はジリノさんのようです。
「はい、お世話になります」
挨拶する私の前には、紅い炎をたたえたストーブが鎮座しておりました。朝夕はまだ寒いんですね、やっぱり。

こうしていたってスムースに開始された宿2泊。食事も美味しく、量も十分に。楽しく過ごせたんですよ。本当に。(何かを期待している皆様には申し訳ありませんが)

ただ、その夜のこと。部屋の入り口、襖の向こうから誰かを呼びかける声が...

・・・との・・・

ええ、私は宿の娘さんだと信じていますよ。もちろんですとも。他に何があると言うんです。だってそっと立ち去るしのばせた足音も聞こえたのですから。きっと。

お風呂に案内されたときの話。
「あら?電気が消ええてよくわからないわね」
おばちゃんが指し示す廊下の先は暗く、どの入り口が風呂場へとつながるものか、少々わかりにくい状況。おかげで入り口前まで案内してもらえたのですが、なんとドアの前には「風呂」の札がぶら下がっている。
「こ、これは?」
ひょっとすると、自分で思っている以上に私はセクスィなのかも知れないなぁ、などとひとり夢想していると、
「はい」
おばちゃん札を裏返します。そこにはもちろん「風呂」の文字...教えられなかったら、ずっと彷徨ってたな。

はい。田舎(つまり面積にして日本の大半)は人々のペースがのんびりしています。ここ福山荘の朝食も同様です。朝食を半分ほど食べたタイミングで、お婆ちゃんが味噌汁を持ってきてくれます。ただ確実に半分でもないようで、私のほかに泊まられていた方の場合は、ほとんど食べ終わった頃に登場していました。でも何が素晴らしいって、朝食にはデザートがつくんです。今回のケースでは、

木曜日:イチゴ6個 with コンデスミルク。いぇい!
金曜日:砂糖 on the グレープフルーツ。やっほぅ!

果物好きの私にはもぅ最高です。

さて3日目、いわゆるグレープフルーツを半分切りにしたデザートに喜んだ朝食でのこと。
「朝食は 7:30 〜 8:30 ですけれども、よろしいですか?」

と言われていたにもかかわらず、食事の準備ができたのは8時ちょっと前だったりして。ともかくも、のんびりとした時間を過ごしてきました。お客さんも最初の日は私を含め3名ほど。え〜、翌日はどうも私1名(+どうやら知人青年が2名ほかに宿泊していたようだが、宿泊客という立場なのかどうか不明)と、やっぱ観光シーズンではないことを実感しつつ、私は宿を後にしたのでした。「お世話になりました〜」(^^)

と、出発の前にもう1つ。精算の時にも、こんなやりとりがありました。
「お世話になりました」
「はぁは、え〜、いくらでって話、しましたっけ?」
「いえ、全然」
「はぁは、あ〜、じゃぁこれぐらいで、いいですかね?」
(案内に出ている最低金額)
「ええ、結構です」
「はぁは、それじゃ、ちょっとお待ち下さい」
扉のガラスに『電話交換室』と記された、どうやら事務室らしき部屋へとお婆ちゃんが歩を進めたその時、
(ジリリリリリ〜ン、ジリリリリリ〜ン)
電話の呼び出しベル。その音に反応したか、お婆ちゃんもピタッと動作が止まる。止まる。止まる...その間も鳴り続ける。じりりりり〜んって、お〜ぃ、お婆ちゃーん。
(あ!動いた・・・けど、電話構わず机に向かってる・・・)
ピタッ。(と、止まった)
ごそごそ(また机に?)

それでも鳴り止まない電話へとお婆ちゃんが向かったのは、領収書を半分程記述してから。やがて電話も終わり、再び領収書へ向かうお婆ちゃんを横目に、玄関口の壁をぼんやりと眺める私の目に飛び込んできたものが!
『藤田朋子』『荒木経惟』
の色紙が2つ並んでいる...ほ、ほ、本当にその『遠野物語』(写真集タイトルも同じ)だったのかぁ〜っ!!...(しかも、荒木さんの名前には「天才写真家」って添えてある)
結局、同僚の「遠野と言えば...」が見事適中。複雑な感情にとらわれつつ、 2002 年春の遠野旅行は帰路へと向かう。ところで領収書を見れば、やっぱりそこには、
「 "ジリノ" さん...なのね」

東北大動脈である国道4号線を避け、私と MG-Fは岩手の北上から西へ西へ。国道107号で秋田の横手へと向かうと、途中で「ほっとゆだ」駅のそばを通ります。画像左の入り口が温泉で、右が駅改札になっています。温泉や美しい錦秋湖にローカル線。旅愁を刺激されますね。次はここに泊まるかな。そんなことを考えつつ、未だ畑や道路脇に雪多く残る道をひたすら走ったのでした。家まで残り 500km ... 今日中に帰るつけるかなぁ。ぶぅ〜ん。


[ほっとゆだ駅]

おしまい (^^;


MG-F トップへ戻る

このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください