このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください


  【古事記考】
【古事記考】#4 <総括> 『山代に い及け鳥山 い及けい及け 吾が愛妻に い及け遇はむかも』 鳥山さん(お付きの方)に仁徳天皇が下したものである。皇后を追い掛けるよう命じる歌だ。 嫉妬深いことで有名な皇后が離れていったのには訳がある。 女好きな天皇が妻の居ぬ間にと、山代河を遡ったところにいる女性のもとへお忍びで寛いでいた ときの事。それと気付いた皇后が河を上り、追ってきたのだ。 「やばい、どうしよう...やばい!」 あにはからんや、途中で皇后は途中で引き返してしまう。何故に? 皇后の不可解な行動が、更に天皇の不安をかき立てた! 「い及け、い及け」 い及けとは行き及べ、すなわち追いつけとの事である。 「追いつけ、鳥山! 追いつけ追いつけ 我が妻に 追いつけ会うのじゃ〜!」 可哀相なのは鳥山さん。「知らなんがな」である。 しかし気になる。 古事記編纂の命令を下したのは誰だったろう? それは天皇である。天皇が家臣である太安萬呂(おおのやすまろ)に命じ、編ませたものである。 「はは〜、出来ましてにございます」 と、古事記を献上したわけだ。こんな内容なのにだぞ!! 正直蛮勇としか、私には呼べない。 「貴方の家の歴史を纏めてみました」と言われて手に取ってみれば、「追いつけ、追いつけ」なんて のばかりが並んでいるだぞ。 ひょっとしたら日本史上最高の肝っ玉親父かも知れない。 だが、それを受ける天皇にも恐ろしものがある。 前出の倭建命(やまとたけるのみこと)の父親である景行天皇の事。彼も歴代天皇に負けず多くの 女性を妻に娶っているのだが、その中に迦具漏比賣命(かぐるひめのみこと)とう名が見られる。 実は彼女は倭建命の曾孫に当たる。つまり、景行天皇は己の曾々孫すら娶っているのだ。 理性とか道徳ってものはないのか、と言いたくなる。 ところで、今回参考にした岩波文庫「古事記」は、東大の倉野憲司さんの手によるものだ。 40年以上も古事記研究に勤しんでいらしたらしい。そんな倉野さんの言葉も併せて載せられている。 ご紹介しよう。 「道徳の彼岸にある美しい人間性が端的に素朴に描き出されている」 ...参りました。 道徳の彼岸にある美しい人間性。これ以上の表現は見当たりません。 さて。実は全て古事記を読み終えた今、私は1つの疑問を抱いている。 「天照大御神」と「天の石屋戸」にまつわる謎。それは...。                               [
続く
]

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