このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
【虎の威を借る狐考】#4 4. 画竜点睛を欠く 「あれ、どしたんね?」 おばちゃんが声をかけました。隣に住むしっかり者のタミさんです。 山道を転がるように駆けおりてくるさきちゃん。その後ろからは何やら黄色いものが追っかけて きます。 「おばちゃん、助けて〜・・・虎が、虎が」 「と、と、と、虎〜? さきちゃんに、な、何さするだ!」 見ると黄色いものは後ろ脚で立ち上がり、のっしのっしとこちらへ向かってくるではありませんか! 果敢に箒の柄で牽制するタミおばちゃんでしたが、しかしそのへっぴり腰が彼女の内心を如実に表 しています。 「(よぅ〜し! 虎の怖さを思い知らせてやる!)」 コンコーーン! コンコーーン! 「・・・コンコーン?・・・なして虎がコーンさ泣くだ?・・・さては!」 どりゃりゃりゃりゃ! 形成逆転。おばちゃんの振り回す箒が、キツネ君の頭やお尻にあたります。 「このいたずらキツネが、こりゃこりゃ」 「(アイタっ、アイタっ、おばちゃん止め、アイタっ)」 も、もうダメだ、逃げろ〜!! な、なんで〜??? 「キツネ君、虎はコーンと鳴きません...で締めくくるんだ。どうかな?」 咄嗟に浮かんだストーリーとしては満更でも無い。そう思いつつ妹尾さんを見遣ったが、どこか 遠くを見つめている。と、ややあって、 「アイソーポス!」 笑顔で言った。 「アイ・・・なに?」 「あ〜、妹尾クン。ちょっと」 チッ、いつもの酉島博士だ。いいところで、全く。 立ち去る彼女を見送りながら、渡り廊下の上で私は一人悶々と考えていた。最後の一言の意味。 「アイソーポス、アイソーポス・・・は!」 アイソーポスとは、すなわち英語で Aesop = イソップの事じゃないか。すると、まさか。 図書館へ向け、私は猛然と駆け出した。 [ 続く ] |
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