このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください


  【土瓶考】
【土瓶考】#2 普段の君たちの生活を思い出してみてほしい。 ・湯飲みで茶をすすり ・茶碗で御飯(お米)を食い ・茶碗蒸しには湯飲みを使い ・しまいにゃ、お湯を注いで茶漬けと呼んでみたりする 『茶碗とお茶と湯飲みとお湯における4者間パラダイムシフト』と、普段我々は呼んでいる。 余りに支離滅裂じゃなかろうか。一体なぜ日本の食卓はこんな事態に陥ったのだろう。 人生一寸先は闇。 まさか茶碗を作り始めた人、おそらくは茶道関係の方も、まさか茶碗がこんなことに使われ ようとは想像すらしなかっただろう。お台所おそるべしだな...。 とまぁ、そんな事を声高に一文字君に説明していると、突然後ろでおばちゃんの声がした。 「あらアタシなんて、お料理番組見るたんびに思うわよ。  おおさじ何杯、こさじ...あ〜もう面倒くさいったらありゃしない。いっそ計量カップに  いれたまま、茹でたり蒸したりしちゃううわよって。だって、そしたら楽だし正確だし、  これ以上便利な事ってないと思わない?」 慌てて振り返る我々に、半開きの扉から顔を突き出している女性の姿が目にはいる。庶務課 のおばちゃんである。呆然とする我々に満足したのか、 「ほほほ〜。さようなら〜」 彼女は笑顔のまま、ぱたぱたと玄関へ向け廊下を駆けていった。きっと早く帰って今夜の夕 飯を作らねばならないのだろう。待っている家族の為に。 「そのうち計量煮とかできるんだろうか」 何だかやりきれない気持ちに襲われ、我々は粛々と計測器の前へと戻っていった。 ふと見ると、実験に戻ったはずの一文字君が、手の中の実験用計量スプーンをじっと見ている。 人は時として相手の心がよめるもの。やめとけ。                                  [おしまい]

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