【ツキノワグマ考】 #4 すると博士は暫く考えた後、どうだろうなぁと呟きながら、 「考えられるものをいくつか挙げてみるか。 ・月の輪熊は最初からいなかった ・どこかで三日月熊が月の輪熊と混同されるようになった ・実在せずも、想像,伝説伝聞上に月の輪熊はいた ・かつては普通に存在していた月の輪熊が、何らかの理由により不在となり、その名を 惜しみ、三日月熊を月の輪熊と呼び始めた ・今も本物の月の輪熊のいる場所は分かっているが、公にはされていない ・三日月だって月の輪っかの一部が見えてるんだからいいじゃないか! 等などいくらでも出てくる。んが、どれも証明不可能なものばかりだ。 例えば『月にいるワ熊』がツキノワグマだって良いし、はたまた『日熊=ヒグマ』と『月 熊=ツキノワグマ』かも知れん。 こんな話を知っているか? 月からやってきたかぐや姫は、実はあの餅をついてる兎の化身 だったという説。だからツキノワグマにだって、探せばどっかに月の化身伝説が埋もれて る可能性すらある。三日月マークは月の使者の証とかな。 いるのか、いないのか。そう簡単には答えが出せそうにはないな」 博士の話を聞いていて、1つ思い出した事があります。 姪っ子は心細気に「他に何もいないの」と聞いていましたが、かぐや姫。かぐや姫が月には いたじゃないですか! かぐや姫がいるって事は彼女のを連れ戻しに来たかぐや姫の家族も いるわけだし。決して兎は寂しくなんかないはずだ! 熊のいる可能性もゼロではない。 自分でも情けないのですが、こんな他愛も無いことで少し嬉しくなってきました。 「話は違うんですけどね、博士。どうして月の兎はお餅を夜に搗いてるんでしょうね」 「・・・」 博士の白い目線が気になる...やばい、勢い余って頭にのり過ぎたのかも知れません。 「何を言っているんだ。月が輝くのは太陽光に照らされてるからだ。従って兎が餅搗く姿が 見られる時間ってのは昼間、日中だよ。月にとっちゃな」 あ! そ、そうか。昼なんだ。地球は夜でも月は。そっか、そっか、そっか。 大気の無い月では、地球より少し明るく降り注ぐ陽の光のもと、ぺったんぺったん、杵を振 り下ろす兎が2匹。想像していたら、なんだか楽しくなります。 今宵晴天。研究室へと向かう廊下から、西の空に満月がぽっかりと浮かんでいます。 [
補足
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