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第八回
猫とキノコ

 キノコ狩りと言えば秋の風物詩です。
 しかし、キノコは一年中見られるもので、代表的なものが秋のマツタケ、冬のエノキタケ、春のアミガサタケ、夏のマイタケなどです。
 キノコは草花同様、四季によって様々な種類が発生するのです。キノコとはそもそも土中の菌糸体から出来た子実体であって、胞子を飛ばす役割りを持ち、土中では植物と栄養交換をしたり、落ち葉などを分解して良質の土に戻す働きがあります。従って森の健康維持には欠かせない存在となっているのです。

 猫が自然の中でキノコを摂取することはありませんが、近年、猫にとって健康に欠かせない存在であることが分ってきました。
 それはアガリスクタケの一種に含まれるβ1.3・1.6グルカンという物質が体内の免疫細胞を活性化させ、癌細胞増殖の抑制効果があるというのです。
 しかし、猫はキノコが生えていても何の興味も示さず、例え食器に入れたとしても臭いをかぐだけで去ってしまいます。猫はキノコを食べられるものとは認識してなく、毒キノコを食してしまうという事故も起こりません。

 猫にはそもそも食べて様態を悪くするタブーな食材があります。
 例えばタマネギ中毒は、犬より感受性が低いものの赤血球を破壊して貧血を起こします。
 いかもの食い的に淡水性生物や爬虫類を接収すると条虫類などの寄生虫に感染します。また、魚肉を与え続けて発症する黄色脂肪症。古くなったイカなどの軟体動物は、犬の五倍も必要される抗神経炎物質のビタミンB1が分解され、食欲不振から嘔吐、脱水が激しくなり、フラフラの状態で歩くようになります。 しかし、猫が滅多にタマネギや古いイカを食べることもないでしょう。

 ところで猫の腫瘍の発生率は全体の0.15%といわれています。
 その内の80%は悪性であり、犬の0.38%からすると随分低いものの、猫には腫瘍が致命的になることが多いのです。乳腺腫瘍や体表に発生する扁平上皮癌などは外科治療も困難で、体の小さい猫には抗癌剤などによる副作用も心配です。そこでこの成分が注目されるのです。

 普段は見向きもしないキノコですが、自らの体を治そうとするのか、顆粒の薬を食事に混ぜてもよく食べます。
 キノコが本当に役立つのかと思ってしまいますが、キノコは菌類の一種でもあり、その菌類は抗生剤など昔から生体に貢献してきています。清潔で乾燥を好む猫にとって菌類は無縁でしょうが、多発する悪性腫瘍に効果を発揮するのであれば、キノコは有り難い存在です。

 このキノコのシーズン。屋外だけでなく、愛猫の体表を擦って観察してみるのも良い機会です。
 きっと猫の健康管理も含めてコミュニケーションにもなり、自らの体をチェックしてもらおうと、猫も拒むことをしないでしょう。
「ドギー&キャッツ」 2003年11月号掲載

第9回に続く

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