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各務原球場

 一般に各務原球場とは2つある。一つは1927年完成のそれで、もう一つは1933年完成のそれである。どちらも各務原鉄道(現在の名古屋鉄道の前身の一つ)が造った施設である。ここでは2つをわけずに、まとめて書くことにする。しかし、新しい方は『名古屋鉄道社史』では「各務原運動場」と書かれているので、明確な区別をつけるために、1927年完成の方を「各務原球場」、1933年完成の方を「各務原運動場」と記すことにする。

各務原球場

 各務原球場は1927年11月3日の明治節に開設された。各務原鉄道は1927年9月、東鵜沼駅(現在の新鵜沼駅)まで延ばして、計画路線の全線を開通させたが、沿線の培養について研究していた。当時は野球がスポーツの花形として全国的に広まっていたが、岐阜県にはまだ公式の野球場がなく、その開設が要望されていた。各務原鉄道はそれに着目し、苧ケ瀬駅の東方100mの松林を開いて各務原球場を開設したのである。
 この野球場は簡単なバックネットとそのほか若干の設備を施しただけであったが、県下の中等学校野球をはじめ、同志社大学やその他有名な学校や野球チームが来場し、各務原鉄道も見物客の誘致に努めた。
 やがて地元の名門・岐阜中学校(現在の岐阜高校)に続いて、岐阜市立商業学校(現在の県立岐阜商業高校)の台頭によって野球熱は高まり、野球場のより充実した設備が要求されるようになった。そこに沿線の那加村(現在の各務原市那加町)から、一聯隊前駅付近の村有地3.3ha(6haとも)が各務原鉄道に無償貸与されることになり、ここに新たな施設を造ることになった。これが各務原運動場である。
 各務原球場は各務原運動場の完成により、以降使用されなくなった。各務原球場の跡地は現行の地名では各務原市鵜沼各務原町と同鵜沼羽場町にあたり、現在は住宅地と畑の半々になっている。なお、1926年に苧ケ瀬駅の南に各務原競馬場が開設されていたが、ここも跡地は住宅地と畑の半々である。この競馬場は1938年秋まで続けられた。
 1932年修正の地形図「岐阜」には競馬場が載っているが、その東の扇形をした荒地がおそらく各務原球場である。

各務原運動場

 各務原運動場は1933年6月に完成した。運動場というとおり、野球場というよりも総合運動場で、グラウンドはトラックその他の陸上競技ができる設備をもっていた。
 もともとが運動場であるので、野球場としては左翼121m、中堅112.8m、左翼82.3mとかなりイビツであった。しかし、『名古屋鉄道社史』には「両翼100m、センター120m」とあるので、野球に使う時には専用の柵が設けられたのであろうか。このためか外野スタンドはなかったが、6,000人から7,000人の観客席を収容できるようにしていた。この開場にともなって、一聯隊前駅は各務原運動場駅と改称された。
 各務原鉄道は1935年3月に名岐鉄道(同年8月に名古屋鉄道と改称)と合併するが、合併後も毎年岐阜県下の中等学校野球大会、神宮競技大会東海予選、東海陸上競技選手権大会などの各種競技が定例開催され、岐阜県下の代表的なスポーツ施設であった。
 戦時中は、県下の産業戦士達の陸上競技場に使用され、擲弾筒や土嚢運び、銃剣術で技を競い、県民の体位向上に貢献した。終戦後1946年から1948年までは、各務原方面に駐屯する進駐軍の優先するところとなり、一般日本人の使用は制限されて運営は困難をきわめた。
 1949年(あるいは1950年)に岐阜市長良に、近代的な設備をもった岐阜県営野球場(長良球場)が開設されたため、各務原運動場は1956年1月31日に現有施設とともに地元の那加町へ返還された。
 名鉄各務原線の各務原運動場駅は運動場前駅を経て、1965年に現在の各務原飛行場駅となった。
 各務原運動場ではプロ野球公式戦も4試合行われたようだが、『プロ野球40年史』では1949年の試合が岐阜県営球場とごっちゃに書かれており、区別がつかない。
 那加大門町と那加楠町にまたがる区域が跡地で、完全に住宅地となっている。スタンドなどの面影はないが、この跡地にあたるところを都市地図や道路地図でよく見てみると、少しおかしな道路があることがわかる。地図をお持ちの方、東西に延びる直線かと思いきや、少し北に入り組んでいる道路があることがお気づきでしょうか。昔の地形図と見比べると、これがおそらく運動場、あるいはトラックの外郭をなしていたものと思われます。

ただし、1949年は岐阜県営野球場との違いがわからず
チームチーム
1948625中日ドラゴンズ701617阪急ブレーブス
1948716中日ドラゴンズ11287211金星スターズ
194972中日ドラゴンズ503409南海ホークス
194986中日ドラゴンズ10146112阪神タイガース
1949917大映スターズ825308阪急ブレーブス
1949917中日ドラゴンズ503406大陽ロビンス
1949119中日ドラゴンズ13064111大陽ロビンス

参考文献
名古屋鉄道株式会社社史編纂委員会編(1961):『名古屋鉄道社史』名古屋鉄道,803p.
名古屋鉄道株式会社広報宣伝部編(1994):『名古屋鉄道百年史』名古屋鉄道,1106p.

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