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びんご運動公園野球場

解説 (いの一番さん)

1 びんご運動公園の概要
  びんご運動公園は尾道市郊外の山を切り開いて作られた県内でも屈指のスポーツ施設です。
  1993年に陸上競技場と体育館が完成し、その後テニスコートやオートキャンプ場などが整備されてきました。1994年のアジア大会ではサッカー、1996年の国体ではテニスとソフトボールの会場にもなっています。
  建設主体は広島県で開園以来管理も行ってきましたが、2002年度から管理業務は尾道市に委託されています。

2 球場の概要
完成年月:2002年7月
グラウンド:両翼96m、センター120m、内野土、外野天然芝
スタンド:ネット裏ボックス席、内野ベンチ席(一部芝生席)、外野芝生席(合計1万6千人収容)
スコアボード:磁気反転式
照明塔:6基(1軍戦可能)
総工費:21億6千万円

3 球場の特徴
  この球場の最大の特徴はグラウンドレベルを甲子園球場とほぼ同じにしたことです。
  両翼、センターの距離はもちろん、甲子園独特の左中間や右中間のふくらみ、ファウルグラウンドの形や外野フェンス、金網の高さ、そして土や芝生の種類も同じにするという徹底ぶりです。
  なぜここまで同じものを作ることにこだわったかというと、その背景には高校野球全国大会における広島県勢の不振があります。かつては上位進出は当然で「野球王国」とも呼ばれましたが、近年は早々と姿を消すことが多くなってきました。それなら地元に同じような球場を作りそこで経験を積めば、それが甲子園の本番で生きるのではないかという考えです。県高野連からのこの要望は建設主体の県当局に受け入れられ、担当者が実際に甲子園に行ったり航空写真を参考にしながら球場を設計していきました(図面は「警備上の理由」により貸してもらえなかったそうです。)。
  なお、球場の愛称は公募の結果472通中最多の22通を集めた「しまなみ球場」に決まりました。尾道市では愛称を全面に出して使用するつもりのようで、球場玄関のプレートやパンフレットも「しまなみ球場」となっています。

4 球場の問題点
(1)甲子園は絶対ではない
  甲子園球場は高校野球の聖地であり全国の球児にとってあこがれの場所です。しかし球場自体のサイズはどうかというと実は公認野球規則に定める基準(両翼97.53m、センター121.92m)を満たしてないのです。左中間と右中間は他の球場より広いのでそれでバランスが取れているともいえますが、センターまでの距離も120mより短いのではないかとの説もあります。ですから甲子園は一般的に思われているほどいい球場だとはいえません。
  近年建設される球場は町村レベルでも基準以上のものが多いなか、プロ野球も開催する予定で作った球場が平然と規則を無視したものになってしまったことは残念です。その点はもう少し県や高野連に問題意識を持ってほしかったと思います。
  また甲子園にはこれまで度々改修計画の話が持ち上がっています。もし今後本家がグラウンドの形を変えるような改修をしたら、分家も同じようにするのでしょうか。「甲子園と同じ」というセールスポイントはもしかすると今後しまなみ球場にとって悩みの種になる可能性もあるのです。
(2)もっと試合の開催を
  2002年全国高校野球選手大会の広島予選の日程が発表された時、正直なところがっかりしました。なぜなら96試合中びんご運動公園での試合が1回戦の5試合しかなかったからです。これは非常にもったいないことです。既存の福山や三原に配慮しているのかもしれませんが、よりよい環境で選手にプレーさせることが必要なのではないでしょうか。
  また甲子園と同じグラウンドを作ったのであれば、準決勝と決勝はここで行うべきでしょう。県代表校が実戦を通して同じ条件のグラウンドを経験することは、本番でいくらかのプラスになるはずです。
  聞くところによると県高野連内でも、県東部の学校からは決勝戦を東西交互に開催するよう希望が出ているそうですが、西部の学校の反対が強く実現していないそうです。しかし、せっかくの球場を宝の持ち腐れにしないためにも高野連の英断を望みたいところです。

5 期待される効果
  最後にこの球場完成によるプラスの面について考えてみます。
 私は高野連が目論んでいるほど、県代表が甲子園で活躍するとは予想していません。グラウンドは確かに同じですが、スタンドの大きさや観衆の数に大きな差があるため、両者は全くの別ものです。いくらかプラスにはなるでしょうが、それで勝てるほど甘くないでしょう。
  むしろこの球場の完成は、県内野球場のレベルアップを促進しそれが野球界の発展につながっていくことになると予想します。
  例を挙げれば、県東部地区でこれまでトップの位置にあった福山市民球場では、これまで毎年行われていたカープの公式戦が2002年度は組まれていません。逆にびんごで公式戦が組まれています。2003年以降どうなるかは今の時点では不明ですが、築20年以上経過し両翼が90mしかない福山より新しく広い尾道の方が大きな試合に使われる回数が多くなるであろうことは容易に想像できます。
  しかし広島県第2の都市福山がこの状況を黙って見ているとは思えません。おそらく施設の改修をして巻き返しを図ってくるでしょう。
  また県内の自治体で野球場の建設を計画しているところがいくつかありますが、びんごを参考に広い球場を作ろうという動きも出てくると考えられます。
  このような各地への波及効果がいい球場を生み、それが県野球界のレベルアップにつながると思います。一朝一夕というわけにはいきませんが、長い目で見れば必ずプラスに結びつくことでしょう。関係者にはこの球場を有効に活用してもらうとともに、今後の県野球界のあり方を考える機会としてもらいたいものです。
(2002年8月17日)

びんご運動公園野球場の画像

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