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思いつきSS「似た者同士」





「どうしても行くのか?」

「和樹、コレはウチがウチである為の戦いなんや」

和樹の前で由宇が戦闘準備していた。

「こんなコトしてもきっと無駄なんやろうけどな」

そう言って由宇は自嘲気味にハリセンを掲げた。

「俺にはお前を止めることは出来ないのか?」

「スマンな、あいつを倒さん限りウチには明日は無いんや」

「分かった、なら俺はお前のためにここで待ってる」

「ありがと、ほな行って来るわ」

そう言って由宇は千堂家を後にした。

 

 

「浩之ちゃん、保科さん本当に行っちゃうよ!」

「………ああ」

「“ああ”ってそんな………」

「それしか言いようが無いだろっ!

俺だって止めたいよ、でもなぁ、

俺が“行くな”って言って行かない訳じゃないだろ」

「せや、ウチかて行きたくない、

でも、それはウチが生まれ持った運命なんや」

そう言った智子の表情はいつも以上に寂しそうだった。

「あかり、俺達に出来るのはここで委員長の帰りを待つだけなんだ」

「そんなっ!」

「藤田君の言う通りや、

これはウチの問題なんや、

誰にも手は出されへんのや」

そう言った智子の拳がグッと握られた。

「………委員長」

「なに?」

「………負けるなよ」

そう言った浩之の声はかすれそうに弱々しかった。

「任せとき!」

そう言って智子は左手の親指を立て自身一杯に答えた。

 

 

 

「来たな、ウチはてっきり恐れをなして逃げたかと思ったわ」

「ウチもアンタがここに居てへんかったらどうしようかと思ったわ」

何処かにある採石場で由宇と智子は対峙していた。

「ウチが何で呼び出したか分かってんねんやろうなぁ?」

「当然やんか」

「なら、行くでっ!」

「望むところや」

そう言って二人は互いに向かって駆け出した。

「リーフにメガネの関西人は二人もいらんねやっ!」*2

その言葉を二人とも発しながらエモノを振った。

バチバチ

二人のエモノがぶつかり合い激しい衝撃波が飛び散った。

「なっ!?」

一瞬で勝負がつくと思っていた由宇としては

自分のエモノを受け止められ動揺を隠せずにいた。

「アンタは表ハリセン家の免許皆伝かもしれへんけどなぁ

ウチかて裏ハリセン家の免許皆伝やねんで」

そう言った智子の言葉は少し得意げだった。

「なっ!」

智子の言葉に由宇は動揺せずにはいられなかった。

「…………」

「アンタには“キャラがかぶる”って理由だけかもしれへんけどなぁ、

ウチにはその他に裏の歴史の為って大儀もあるんやっ!」

そう言った智子の表情は怒りの感情と喜びの感情があった。

「アンタみたいに表舞台にたてるわけも無く、

日々、裏の世界でハリセンを振っていたウチらの気持ちは分からへんやろ」

「確かにウチには裏の者の気持ちは分からへん、

でもなぁ、この戦いはウチ自身の為の戦いなんや!」

そう言った由宇は負けじと立ち上がりハリセンを天に掲げた。

『表ハリセン家奥義無礼講』

『裏ハリセン家奥義傍若無人』

激しい奥義と奥義の衝突の二人の肉体はふっ飛ばされた。

「ウチかて免許皆伝や言うたやろ、

裏の奴らが何もせずに表の存在を見ていたわけや無いやで」

そう言った智子の右手には黒いのハリセンが握られていた。

「アンタは『七色のハリセン』を持っているようやけど、

ウチかて伝説の『漆黒のハリセン』を持ってるんやで」

「…………」

智子の言葉に由宇は全ての自信を失いその場に立ちつくした。

由宇としてはかなりの自信があった。

表ハリセン家の免許皆伝の力と

『七色のハリセン』の威力

そして、『奥義無礼講』の力

どれをとっても負ける要因は無かった。

しかし、智子はその一撃を難なく受け止めてしまった。

由宇の中にある全ての自信が打ち砕かれてしまった。

「所詮、アンタにはハングリー精神が無いんや、

恵まれた環境で生きてきたアンタとウチの決定的な違いや」

その言葉に由宇は返す言葉もなくその場にへたりこんでしまった。

へたりこみ『七色のハリセン』も次第に輝きを失いつつあった。

しかし、その時

「由宇!お前の力はハリセンだけじゃないだろ!

「和樹、何でアンタが………」

そう、敗北目前に和樹が由宇に向かって叫んだ。

「同人にかける想いはどうしたんだ!?」

「せや、ウチは表ハリセン家に人間であると同時に同人作家なんやっ!」

そう言って由宇は再び立ち上がり

『七色のハリセン』も次第に輝きを取り戻しつつあった。

いや、今までの輝きとは違い、

同人作家の魂を宿したかのように激しく燃え上がるようなオーラを発していた。

「そうだ、元々熱い同人作家の由宇ならその熱い魂を宿すことが出来るはずだ」

「らしいで」

そう言って由宇は智子に向かってニヤっと笑った。

智子は少し後悔していた。

さっさととどめを刺せば良かったのに、

裏ハリセン家としての勝利を前に少し語ってしまい、

相手に時間を与えてしまったコトに。

「委員長!」

「えっ、藤田君?」

「委員長にだって同じように力が宿っているはずだ!」

「えっ?」

浩之の言葉に智子は少し戸惑った。

「委員長は受験生なんだ!」

「それがどないしたんやっ!?」

「委員長はずっと受験勉強してたじゃないか?

みんなが楽しんでる間にじっと勉強してたじゃないか?

その時にずっと思っていたはずだ!

受験が終わるまで抑えられた鬱憤をはらすのは今しかない!」

「せや、ウチはずっと受験勉強してたんや、

ずっと鬱憤が溜まったままなんや」

そう言った智子の右手の『漆黒のハリセン』は次第に光を吸い始めた。

そう、周囲のエネルギーを吸収しているようだった。

「今度こそ、最後やな」

「せやな」

二人とも自分の力と相手の力の大きさが分かった。

しかし、二人ともその結果がどうなるかが分からなかった。

ただ、次の一撃で勝負が決まることだけは分かった。

「だーっ!」*2

衝突する二つの力は光となり消えた。

そして、二人は再びふっ飛ばされてしまった。

………

………

………

………

それから少しの間静寂が続いた。

「由宇!」

「委員長!」

それぞれに駆け寄る和樹と浩之

「何が起こったんや」

「対消滅や、ウチも伝説でしか知らへんけど、

伝説では、極限まで高められた力と力とがぶつかり合ったとの、

消滅するらしいんや」

「………引き分けやな」

「………せやな」

そう言って二人はそのまま気を失った。

 

浩之は戦いの元々の理由を知っていた。

『メガネの関西人』のキャラがかぶると言う

些細な理由ではあるが、

その前に、委員長と由宇とではスタイルの時点で

完全に別キャラだろうと思ってはいたが、

決して口には出来なかった。

おぶって帰るときに背中に胸があたる役得を心底味わっていた。

(…………ニヤリ)


管理人より
今回も楽しいSSを頂き、本当にありがとうございます。
なお、感想は掲示板に日本で二番目の無責任男さん充てに送って差し上げてください。
シャイな方ですので・・・って、もしかしてバレバレなのでは?
なんにせよ、次回作にも期待しております。
次もコミパかはたまた別の作品か。楽しみです〜。



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