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こみパSS「タコプレ信仰」






バンッ!
寝ていた俺の部屋のドアを誰かが勢いよく開けた。
俺の記憶ではドアのロックはしてあったハズであった。
しかし、ドアはロックの意味も無く全開に開いた。
「………んん?」
〆切に追われていた俺は必死な思いで原稿を描き上げ
何とか完成に至り泥のように眠っていた矢先のことである。
体はヘロヘロになっていたが、神経はかなり高ぶったままだった。
「和樹っ!起きとるか〜っ!?」
その声で一発で犯人が分かった。
「由宇かぁ?」
ショボショボしていた目をこすりながら起きあがった。
「何や、徹夜明けか?」
「………まぁそんなトコだ」
そして、俺は大きなあくびを一つ。
「泊まっても良いけど、ドアの鍵だけは閉めておいてくれよ」
そう言って俺は起きあがったばかりだが、再び寝床に着こうとした。
「待てぇ!寝るなっ!」
そう叫んだ由宇は飛び乗るかのように俺に馬乗りになった。
そして、力一杯俺の胸元を揺すった。
首はカクンカクンと上下した。
素面の時だと間違いなく酔っていただろう。
しかし、神経が殆ど麻痺していた俺は何とか酔わずに済んだ。
「なんだよ〜」
俺は力無く反論した。
「朝も早から起こして悪いけど、コレを見てぇや」
そう言って由宇はリュックから何かを取りだした。
「………ん〜、何コレ?」
「見て分からんか?」
自信いっぱいに言う由宇だが、
俺に目の前に置かれたのはタコプレだった。
タコプレとはたこ焼きの焼くための鉄板である。
以前に由宇がマイタコプレを持っていたのを見たことはあったが、
あまり変わらない様に思えた。
「………タコプレじゃないの?」
「せや、タコプレや」
そう言って由宇は嬉しそうに無い胸を張った。
「じゃあ、そう言うわけで………」
そう言って俺は寝ようとした。
しかし、それを許してくれる由宇ではなかった。
スパーン!
いつも通りに由宇のハリセンは俺の頭部にヒットした。
しかも、寝かけの前頭部から叩きつけるようにヒットしたので
ハリセンの衝撃は逃げていない。
早い話が、痛かった。
「………痛いじゃないか?」
「やかましいっ!
せっかく人がタコプレを見せに来てやったのに何やその対応はっ!?」
そう言って由宇は力一杯俺の目の前にタコプレを掲げた。
「タコプレは前にも見たし、俺は眠いんだよ」
「ふっ、分かってへんなぁ、
このタコプレはそんじょそこらのタコプレとは訳が違うんや」
そう言われても俺が前に見たのと、どう違うのかがいまいち分からなかった。
「そりゃすげぇや!
………じゃあそう言うわけで寝るわ」
スパーン!
再び由宇のハリセンは前頭部にヒットした。
「これがいつものタコプレやったらタコプレでしばいてるでっ!」
………やる
この女は間違いなくタコプレで殴る!
思わず俺は畏怖した。
「そのタコプレが凄いのは分かったから、勿体ぶらずに言えよ」
「分かってへん!
アンタはこのタコプレの真の価値が分かってへん!」
それは分かる分けないだろうがっ!
っと冷静にツッコミを入れようとしたが、
これ以上何を言っても由宇には通じないだろう。
そう思い、俺はそのまま黙って聞くことにした。
「この間のとは大きさは変わらないけど、色が茶色いね」
その言葉に由宇の目はキラリと光った。
「せや! やっぱりアンタには分かるか?」
いいや、全然分からなかった。
ここまで買いかぶられると恐ろしいモノがある。
「あのさぁ、見た目の違いは分かるんだけどさぁ………」
由宇のタコプレを恐れつつも弱りながらある意識の中で
出来る限りフル活動させてみたが、一向に分からなかった。
「ふっ、まだ分からんか?
まぁしゃあない教えたるわ」
別に教えて欲しい訳じゃないんだが………
由宇が教えたそうにしているのであえて何も言わず聞くことに徹した。
「さっき、このタコプレが茶色言うたなぁ」
「うん、言った」
「その茶色って言うのが大事なんや」
「………はぁ」
「その茶色って言うのはこのタコプレが銅製ってコトを意味するんや」
(………だから何だと言うのだ?)
限りなく呆れながら聞く俺に
由宇は力一杯力説していた。
そう、タコプレを嬉しそうに掲げながら。
「当然、銅製っちゅーコトはや、熱伝導がもっとも早いってコトや」
まぁそれは小学校の時に理科で習った。
「それが、どういうコトか分かるか?」
「早くたこ焼きが出来るってコトかな?」
「50点やな」
そう言って由宇は小さくため息をついた。
「半分正解やけど、半分は間違いや」
「えっ?」
「早くできるのはメリットやけど、逆に言えば焦げやすいってコトや」
「火力を落とせば良いんじゃないか?」
「それも間違いやないけど、正解でもない」
どうでも良いが、早く結論を教えてくれ
当然、そのツッコミもすることは出来ずにいた。
「火力を落とせば火の通りが均等じゃ無くなることがあるんや、
それなら、普通の鉄のタコプレでやれば済むコトや、
銅であるコトは正直、デメリットの塊や
でもなぁ、銅製のタコプレを扱えるって言うのは
たこ焼き職人の一つのステータスなんや!」
そう言って由宇は胸を張った。
「特にこのタコプレは職人が作った一級品なんや!
うちはその職人さんに認められて作ってもろたんや!」
「早い話が認定書みたいなモノか?」
「まぁそんなモンや
実際、大きい有名なたこ焼きやの殆どは銅製を使ってるんや(実話)」
「へぇ、そうなんだ」
「凄いやろ?」
そう言って由宇は銅製のタコプレを嬉しそうに抱きしめた。
「うん、凄い凄い………じゃあ寝るから、後よろしく」
そう言って再び寝ようとした瞬間、
由宇の胸に抱きしめられていたタコプレは俺の頭部にヒットした。
ゴンッ!
「寝るな〜っ!」
さすがは職人が作った一級品である。
俺の頭程度では簡単に変形することはなかった。
それを確認することなく俺は夢の中に突入した。


『管理人の戯言』
…ん?あっ!はっ!!
こ、ここでお終いですかぁ〜?
またまた。ここで終わりだなんて、そんなもったいぶったことを。
と言う訳で、続きが気になった方は日本で二番目の無責任男さんにメールしちゃいましょう!
って、本人に却下されちゃいました。しくしく…(9月2日夜)。
やっぱり続きが気になる方は、矢でも鉄砲でも仕込んで掲示板にファンコールして下さい。
続きの展開ぷり〜ず!

それにしても由宇って、傍若無人ですね…(笑)。
それ以上に「マイタコプレ」ということは、一家に一枚ではなく、一人に一枚?
むむむ…。恐るべし関西文化。



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