このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

機動兵戦史「薄氷戦線」

 それは最強の兵器であった。その機動力、破壊力は並でなく、鋼鉄で造られたそれは、神話にでる巨人の如くであった。人々はそれを鋼鉄の騎士「Armour Knight」と呼んだ。

 地球連邦宇宙軍陸戦隊、一般には宇宙海兵隊と呼ばれているが、彼らが惑星ザルツラントに展開しているのはある意味単純な理由であった。ある反政府組織がザルツラント政府軍の一部と共にクーデターを起こしザルツラント政府を転覆させ、そして・・・・・略奪、虐殺などをやりたい放題にしたからである。
 これに対し連邦政府は正規艦隊のひとつ第3艦隊を急派した。その中には陸戦隊第1軍団(3個師団・約4万8千名で編成)も含まれていた。第1軍団はザルツラントの廃棄された宇宙港を占領し、そこを復旧さしたうえで橋頭堡とした。さらに連邦軍は、第2陣として陸戦隊第2軍団(3個陸戦師団で編成)をザルツラントに上陸さした。敵前での強襲上陸を前提とする陸戦隊は精強な兵力を誇っていたが、15万以上の戦力の叛乱軍に対し、1個軍団の追加をうけても10万に満たない陸戦隊が、叛乱軍を追いつめるのは無理があり、そして叛乱軍も後方の補給拠点を連邦軍により撃破され、大規模な作戦行動は取れなくなっていた。そして戦争は奇妙な停滞の中にあった。

 ザルツラント中央大陸の平野部、開拓時代に12有る州都と首都を結ぶ主要道のひとつとして建設された道に連邦軍のArmour Knightの姿があった。もっとも連邦軍は機動兵と呼称していたが。その機動兵が5機。その内4機は形態から見て機動性重視の軽量機。1機はどうやら偵察機らしい。どの機体も連邦の標準的な機体のスタイルとは異なっていた。それもそのはず、この部隊の所属は本来、陸戦総監部(陸戦隊の最高司令部)でなく、後方支援本部実験艦隊群(新兵器開発及び試験・運用を担当する部署)に所属していた。戦力不足と、実戦経験による機体性能の確認を理由として、第801機動兵中隊は後方警備部隊のひとつとしてザルツラントに派遣された。今この小隊に与えられた任務は通常のパトロール任務だったのだが・・・。

「イカルガ02からアスカリーダー。レーダーに感有り。10時の方向距離8千。機動兵及びAFV数両に寄る編成と見られる。友軍の可能性は低いです。この辺で機動兵部隊と言えばウチぐらいですし」
「アスカリーダー、不破だ。未確認部隊はどっちへ向かっている?」
「こちらイカルガ02、未確認部隊ははこっちに近づいています。どうやら機動兵は2機。大型です」
「アスカリーダーより全機。直接戦闘は不利だ。可能な限り回避する」
「敵味方識別は行わないのですか?」
「するだけ無駄だろう。イカルガ02の言うとおり味方はあさっての地方でしか行動してないからな。それに大型機の部隊となればさらに限定される。味方の部隊の可能性はない」
 軍艦での移動が前提となる陸戦隊は、軍艦の大きさや容積の問題から、比較的Armour Knightとしては小型な全高8〜15メートル級が主力である。アニメで言うならガンダムシリーズの中でも小型な機体や、機動警察パトレイバーのレイバーなどのサイズに近いと言えば想像がつくだろうか。確かに陸戦隊にも大型機(ここでは全高20メートル以上の機体を差す)を保有する部隊もあるがこれはかなり珍しい。機甲教導連隊(演習に於いて敵部隊となり味方の指導訓練に当たるのを目的とした部隊。機甲教導連隊は、戦車や機動兵で編成されている)を除けばわずか1個大隊しかない。ちなみに機動兵部隊は約20個大隊存在する。トキ並みとまでは行かなくても少なくともパンダ並に珍しい。その唯一の大隊は不破の記憶が正しければ、ここから北へ200キロの位置で作戦行動中である。
「イカルガ02よりアスカリーダー。大隊司令部に連絡を取りますか。スクランブル圧縮通信を使えばまず傍受されないと思いますが」
「分かった。司令部に連絡を取れ」



中書き

 この小説は、海猫兎夢さんの「海猫屋本舗 別館コニパレ」で行われているStruggle・Knightというロボット対戦シミュレーションゲームが原型です。Struggle・Knightに於ける私のチームである地球連邦宇宙軍第3実験艦隊第801機動兵中隊の背景となる物語です。

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