このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

 
心象系架空鉄道物語
里見電鉄へようこそ

 
東条線沿線案内

 ……秋篠駅からJR山陽本線に乗り換えるが、姫路行きは5分後だという。秋篠駅を出た3両編成の電車は10分ほどで東条駅に着いた。しかし、着いたのはいいが乗り換え案内も何もない。真ん中のホーム越しに、白と水色のツートンカラーの小さな電車が見える、それが里見電鉄だと思うのだが、跨線橋は繋がっていないようだし地下道もないようだ。どうやって乗り換えればいいのやら。

 結局、すぐそばの改札口で尋ねたところ、里見電鉄に乗り換えるには一旦改札を出て、ぐるりと回って行かないといけないらしい。直接乗り換えられるのなら楽だが、こんな事でもなければ東条の町を歩くこともなかっただろう。ものは考えようか?

 やっと着いた里見電鉄の駅は、小さな駅舎兼待合室な建物がこぢんまりとある他は、殆ど何もないホームが一つ。こんな、あまりにも田舎電車な風景は、最近ではなかなか見ることもかなわないだろう。止まっている電車は、JRの車両とは全く大きさから違うのが1両だけ。出札口でキップを買うが、これも最近ではあまりお目にかかれない硬券という厚紙を使ったキップだ。青色で模様の描かれたキップをもらうと何となく、一昔前の世界にいるような気分だ。駅員の着る制服も青色のちょっと野暮ったいような気がする、しかしいかにも鉄道員と感じさせるもので、いかにも田舎の鉄道という感じで好ましく感じる。

 乗り込んだ車両は明かり取りの窓とかの関係で、日だまりのような暖かさを感じた。車両に掲げられていた銘板には戦前の製造と記されている。貫通路の窓が大きいし、ロングシートなので運転席の脇にある席に座ることにした。里見から乗った電車は座席がそれなりに埋まっていたが、こっちはがら空きになっている。正確に言えば車内にいる乗客は私たちだけ。それでもさすがに発車直前におばあさんとかが乗ったが、それでも乗客は5人だけだった。

 ドアがゆっくり閉まり電車が出発した。しばらくは先ほど通った線路を逆に走る。そして突然急カーブすると、小さな踏切を過ぎゆっくりと鉄橋を渡る。鉄橋を渡ると小さな工場が見え、最初の駅に着いた。駅名は浅田。昔はここから貨物列車が出たそうだ。しかし、今ではポイントひとつない駅になっている。ここでおばあさんが降りた。

 田園風景の中を、ゆっくり走り中山駅へ。ここで残る乗客も降りてしまい、乗客は私たちだけになってしまった。私たちが終点まで乗ることは知ってるはずだが、車掌は「次は静谷口です」と案内する。電車はいつしか山の中へ、モーター音が高まる。

 峠を越えたのかモーター音が殆どしなくなった頃、駅のホームが見えた。ホームの片隅には駅員さんがタブレットを持っているのが見える。電車が止まり、タブレットを交換しているのだろう「通票、三角。良し」との声がすぐ脇の運転室から聞こえる。

 ゆっくり山を下り、駅に止まる。誰も乗ってこない。また電車が走り出し、気が付けば道路が併走している。車掌が、まもなく「終点……」と案内を始めた。そう、もうすぐ駅に着くのだろう。

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